159話
スラが部屋を立ち去って数分後、そう言えば黒に聞きたいことがあった事を思い出す。
空中ドライブで警察スライムが俺の事を『45代目魔王』と言っていた件だ。
スライムたちがそう言う設定で俺の事を呼ぶのは好きにすれば良いが、あの時の警察スライムは俺の事を相当恐がっていたから気になっていた。
「黒〜。黒さんや〜。あれ?いない?」
さっきまで俺の勉強机で勉強している陽菜の膝の上に乗っていた黒が見つからない。
「ははーん、分かったぞ。さては陽菜のスカートの中にいるんだな?そこは地上の楽園だからな。分かるぞー。ぐへへへへっ!仕方ないなぁ〜?黒〜?」
「へ?……ちょい待ち!」
俺は黒を探すためにやむを得ず、陽菜のスカートをぺらっとめくってスカートの中を覗き込もうとする。
ぐぐぐっ
「……へぇー。今回は随分と直接的に来たわね……?」
スカートを指でつまむ事までは成功したが、陽菜に阻止されてめくることができない。
意地でもっと良いアングルから無理やり覗き込もうとすると、陽菜が両太ももで俺の顔を挟んで固定し、上手く地上の楽園を拝む事ができなかった。
しかしまだ諦めきれない。
陽菜に懇願してみる。
「最近、陽菜成分が足りなさすぎて辛い」
「私は本物の性犯罪者になりつつあるナオを見るのが辛い」
「なぁ、純白のアレ見せてくれよぉ〜。履いてるんだろぉ〜?もぅやめられねぇんだよぉ〜?」
「一回、刑務所に入ってきたら?そこがナオの地上の楽園よ?」
フニフニ
ああ、強く挟まれてるのにも関わらず、この太ももの柔らかな感触が伝わるのは一体何なんだ?
固さと柔らかさが同士に伝わる、この2つ事象は明らかに矛盾しているのに俺はそれを体験している。
これが解析できたらノーベル賞を取れるかもしれない。
いや、違う。
陽菜の太ももそのものがノーベル賞だ!
「……ありがとう……ありがとう……!!」
スカートから手を離すと開放された。
本当はいつまでも楽しみたかったが、キリが良いところで自制しておく。
陽菜が少し顔を赤くさせて目線を少し逸らされながら、
「はい、これ」
「何ぞこれ?」
スラ専用反省文用紙を5枚手渡される。
「今回のセクハラの罰。一週間以内に提出するように」
「今回はスカートの中を覗き込む事に失敗したから未遂のはずだ。未遂の割には罰が重すぎないか?」
「そ……そのっ…………太ももで……」
今日のセクハラは確変だった。
恥ずかしそうにしておどおどしてる陽菜を見ているだけで一日の疲れが吹き飛ぶ。
「う〜ん?何言ってるか聞こえないかも〜?」
「ふ……太ももで…………」
少し涙目になりながら必死に俺に罪状を伝えようとしている。
仕方ない、今日はこのへんで許してやろう。
「ああ、そうだな。オブラートに包んで言うと、JKリフレの裏オプションみたいな事を陽菜がしてしまったよな?悪かった悪かった。それを加味したらこの罰も納得だ」
「全然オブラートに包んでない!後、さり気なく私がやった事にするな!」
「そうだ。俺がそうせざるを得ないよう仕組んだ。ふっ、まだまだ未熟だな」
うーん、400字の原稿用紙が5枚で2000文字か。
この罰に対する感想を名言っぽく言うと、
ーー陽菜の太ももの気持ち良さを証明するには、あまりにも文字数が足りなさすぎる by Natuno Naotoーー
「さてさて、黒をどこにいるのかなっと」
探してみるとベットで発見。
すごい近くにいたのに気付かなかった。
黒はスラのノートパソコンでニコニコ動画を見ていた。
俺が近づくと黒がホワイトボードに文字を書く。
「" …………性の喜びを知りやがって……許さんぞ "」
「……」
何て黒にリアクションしたら良いか分からない。
とりあえずなかったことにして黒に質問する。
「警察スライムが俺の事を45代目魔王って呼んでたんだけど何か知ってる?」
「" …………ん拒否するぅ "」
「……えーと」
「" 拒否するぅ "」
「……そこを何とか協力してくださいよ〜」
「" …………ん関係なぁい "」
……機械女神のトップがネットの闇に毒されていた。
とんでもない過ちを犯してしまった気がする。
スラの時はかなりしつこく情報リテラシーの教育をしてからネットを使わせたが、黒にも教育が必要かもしれない。
フィルタリング設定でもしておこうかな?
てか機械女神にネットの正しい使い方を教えること自体すごくおかしな事だと思う。
お前たちが教える方だろ。
もぞもぞもぞ
黒は余程都合が悪いのか、もしくはまだ職質ごっこの続きをしてるのかは知らないが、気づいたら廊下に向かってもぞもぞと床を這いながら逃げていた。
「よっと」
ひょい
ただ、スラたちと違って逃げるスピードがあまりにも遅い。
部屋を出るのに30秒くらいかかってしまう程の遅さだから余裕で拾い上げることができた。




