152話
「頼むぞ、黒。事故が起きた時にヘルメットがあるのとないのとでは大分違うらしいからな」
がぽっ
黒を俺の頭に押しこんでかぶる。
これで黒メットの完成だ。
黒メットに効果があるのかどうかなんて知らないが、溺れる者は藁をもつかむだ。
こいつらって、基本的に強い衝撃が加わったら弾け散るしな。
黒メットが弾け散る時、また俺の頭も弾け散るのだ。
「夏野スラ、レクサスNinja!出撃します!」
車の名前、単純にレクサスとninjaを繋げただけかよ。
銀行の合併かよ。
ヒュイイイイイイーン!!
「おや?今回はカタパルトで射出されないんだな」
戦闘機のような音を出して、ゆっくりと浮きながら垂直離陸する。
騒音を心配したが、これならまだ大丈夫だろう。
ギギギギギ……ミシミシ……
「待て待て待てスラさん!?所々からすごくやばそうな音出てるんだけど!?一回、中止して再チェックした方が良くない!?航空機って少しでも異常があったら莫大なコストを支払ってでも離陸を中止するもんだよ!?」
「V1」
「適当な事をコールしてるんじゃねーぞ、このグミ生物が!!垂直離陸にV1なんてある訳ねーだろ!?」
V1とは航空用語で離陸決定速度を差し、離陸を中止できる限界の速度。
それを超えてから離陸を中止してしまうと滑走路で止まれなくなるから絶対離陸しないといけない。
つまり今の状況的に、 関 係 な い 。
「安心してください!今回はちゃんとチェックシートで安全の確認をとってるのだ!ミニスラちゃんにチェック入れてもらってます!」
自信満々のスラから手書きで書かれた紙をもらって確認する。
紙にはこう書いてあった。
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1、しゅーりが、おわった時に、部品がすべて取り付けられてますか?
はい ○いいえ ←(・∀・)ネジがたくさんあまったけど、もしかしたら飛べるかもしれない。
2、耐神バリアはちゃんと使えますか?
はい ○いいえ ←(・∀・)コストさくげんのため、エアバッグにおきかえ。
3、うんてん前にてんけんしましたか?
○はい いいえ ←(・∀・)ばっちり!ネジがあまったのも分かった!あしたなおす!
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メーデー!!メーデー!!このままだと、これは調査報告書、目撃証言逃走に基づいて再現された、真実のストーリーですってテロップが出てしまううううううう!!
何だよ、もしかしたら飛べるかもしれないって!?
俺としては、もしかしたら飛べないかもしれないって書かれてるレベルですら搭乗拒否なんだけど!?
何で飛ぶことに僅かな希望を託してる書き方してるの!?
項目2のエアバッグで置き換えって何だよ!?
耐神バリアが唯一の俺の心の支えだったのにそこ無くすなよ!?
項目3なんて、欠陥品をいくら点検だけしても欠陥品だからな!?
てか、原因が分かったのなら頼むから明日直すんじゃなくて今直してよ!?
俺を動物実験の猿みたいな扱いにしないでくれよ!?
「おおん?スラはこのチェックシートの結果は確認したのか?これで大丈夫だと思ったのか?」
グリグリとスラのほっぺにチェックシートを押し付ける。
「……ふぎゅぎゅ。大丈夫でふ、飛行機はとても安全な乗り物なのだゃ」
「ふ〜ん。スラみたいないい加減な整備をしてるせいで安全な飛行機を落としたりしてるんだろうなぁ~勉強になったなぁ~」
「ボクたち機械女神の力を侮りすぎです!いいでしょう、このドライブでなお君の信頼を勝ち取りましょう!」
pull up! pull up! pull up!
なんか、よく聞いたことがある警報なってるんですけど!?
高度低すぎぃ!って言ってるんですけど!?
「落としたぁ!!車の高度落としたぁ!!まあああああああああ!!」
俺は今の高さを調べるためにハンドル前のメーターを見る。
「どうか、しましたか?」
「はい!車の高度を落としてしまったのですが!!てか、そんな事は言ってる場合じゃねぇーよ!!何で高度計がついてないんだ!?」
「飛ぶのはおまけみたいな機能なのでメータはありません」
「じゃあ、どうやって高度を測ってるんだ!?」
「基本は目視です!雲が近くにあったら高いなぁ、とかです!」
「だったらもうそろそろ地獄も目視できそうだな!!AHAHAHAHA!!!!」
「ん?……うーん、えへへっ」
何言ってるのかよく分からないからとりあえず笑っとけみたいな対応された!!
外の景色を見てみる。
たが車が落ちている様子もなく、順調に上昇していた。
「あれ?別に問題ないじゃん。問題がなさそうなのに警告してくるって超怖いんですけど?」
「ところでボク、英語はちょっと苦手なのですが、これは何て警告してるのですか?」
……そこからかい。




