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151話


 部屋でこれから起こる少し先の未来の事を考えながらぼけーっとする。

 人に懐いているペットとは、自分の成果をご主人様に見せて褒めてもらいたい生き物なのだ。

 となると、きっとスラは俺にドヤ顔であの成果物を見せてくるだろう。

 見せてくるだけなら別に良いんだが、果たしてそれだけで終わるかどうか……。


 車の修理を始めて3時間。

 一晩で車を作り上げた実績から考えて、そろそろ修理完了だろうか。


 そう考えてると、スラがとことこやって来た。


 「なお君!苦労の末、ついにボクの車が修理できたのだ!」


 「……直って良かったな。お疲れさん」


 「黒様の監修の元にとても素晴らしい車にリニューアルしました!」


 「そうか、良かったな」


 「では早速、試乗会を始めたいと思いますのでプレミアムゲストとしてご招待します!」


 「……」


 ほらやっぱりこうなったよ!

 嫌だよ!乗りたくないよ!やめてくれよ!

 ついさっきまでジャッキの存在すら知らずに修理してたスライム共の車になんか乗りたくないよ!


 「特別なプレミアムです!」


 「……」


 ……だけど拒絶したらしょんぼりするんだろうなぁ。

 スラ的には一生懸命頑張った事に対してそれを拒絶するのは飼い主的によろしくない。

 どうにかしてやんわりと断れないものだろうか。


 「そういやまだ晩御飯――……」


 「大丈夫です!お母様がお弁当を作ってもらいました!」


 「明日学校ーー……」


 「夜遅くにならないようにドライブコースは既に考えてます!」


 「修理で疲れーー……」


 「大丈夫です!スラちゃんは元気なのだ!」


 「ススとか油で汚れまくってるスラとドライブに行きたくない」


 「すぐにシャワー行ってきます!ちょっとだけ待っててください!」


 スラは慌てながらゴソゴソとタンスから着替えを取り出して急いで部屋から出ていった。

 それはまるで遊園地の行く直前の興奮してる子供のようだった。


 まだ行くなんて言ってないのに。



 ◇◇◇◇◇



 シャワーからあがったスラに庭まで連れてこられる。 車が直ってるのを確認したと同時にスラは営業マンみたいなセールストークを始める。


 「どうですか!前のもカッコ良かったですが今回もとてもカッコ良いいと思います!ミニスラちゃんにも大変好評です!」


 「……自画自賛みたいなもんじゃねーか」


 この車の見た目を一言で表すならば『微妙』

 確かにレクサスみたいな高級感溢れるメタリックでシルバーなデザインは伝わらないこともない。

 たがベースの軽自動車に塗装やら外装を取り付けているせいで、ちんまりしている。

 そしてninja250を意識したのであろうライムグリーンの塗装が所々のパーツに塗られているのがまた大きな主張をしている。


 この噛み合わないアンバランスさがまるで、マイルドヤンキーが軽自動車をオラオラ系に改造してみたような見た目だ。

 夜のドンキホーテの駐車場に停めておくと、さぞかしウケが良いだろう。


 外から車内の内装を見てみる。

 前はボロくて、椅子硬くて、狭かった、の三重苦だったがあれよりはマシになってるのだろうか?

 まぁ狭いのはどうしようもないとして、レクサスを意識してるんだったら革張りのフカフカな椅子くらい――……


 「……何これ?フカフカな椅子どころか椅子すらないんだけど?てか、これどうやって乗るんだ?しかもハンドルなんてまるでバイクのハンドルじゃん」


 「そうです!今回はバイク要素が40%含まれてるのでこうやって乗ります!」


 スラはドアを開けて、車内の真ん中に備え付けられているシートにまたがって前方のバイクのハンドルを握る。

 例えると車の中にバイクがあるような感じだった。


 「タンデムです!ボクの後ろに乗って下さい!風になりましょう!」


 スラはポンポンとシートを優しく叩いて俺に乗るよう催促する。


 「うう……」


 思わずスライムのぶっ飛んだ発想に涙が出てしまいそうになる。

 この乗り方に何のメリットがあるんだよ。

 風になりましょうって言われても、この構造じゃエアコンの風しかこねーじゃねーか。


 「もういい。贅沢は言わない」


 「贅沢と言えばですね、実はこのハンドルにはグリップヒーターが備え付けられているんです!これで冬でもあったかです!」


 「……」


 スラの車に快適性なんて求める事自体間違っている。

 求めるのは生きて帰ってこれる保証だけだ。


 ……なんか前に乗った時も同じような事言ってる気がする。

 スラも俺もまるで成長してないんだな。


 「ほ……本当に今回は大丈夫なんだろうな?安全性に問題は全くないんだろうな?」


 「もちろんです!……ほにゅ、一つ忘れてました」


 「へ?」


 スラはシートから下りて車から出る。


 「これを装着しないと飛べませんでした」


 スラはそう言って車の左右にまたダンボール製の羽と、筒をガムテープでペタペタと貼り付けた。


 「ね、ねぇ!?なんでそこは前と同じままなの!?そこ、一番改善しないといけない所じゃないの!?」


 「ここは問題なく飛べた実績がある箇所なので特にいじる必要はありませんよ?」


 ぽとっ


 ガムテープの貼りが甘かったせいで何もしてないのに左翼が落ちた。



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