149話
「うう……すいまぜんでした……ずいまぜんでしだ……」
ぴょん!ぴょん!ぴょん!
反省文を号泣しながら書いているスラ(まだ一文字も書いていない)に対して、ミニスラちゃんたちは何やら慌ただしく行ったり来たりしている。
そっちの方が面白そうだったから、ミニスラちゃんの後ろをついて行く。
すると、庭に自走できないレベルで大破したスラの車があった。
ただえさえ昭和時代の軽自動車みたいな車なのに、ここまでボロボロになっていると一種の芸術みたいな感じがする。
そして、車の近くにトンカチを持ってる黒もいる。
もしかして今から車を修理するのだろうか?
「修理するのはいいが、騒音とかで近所迷惑にならんようなー」
うねうねうね
相変わらず返事が分からん。
まぁ、いいや。特にやることもないからしばらく観察しておこう。
折りたたみイスに座る。
手伝ってはやりたいが、車の修理、ましてや謎の超技術で作られた車の修理の手伝いなんてできない。邪魔にならないに端っこにいよう。
これは1組で学んだスキルだ(泣)
ミニスラちゃんと黒は車の周りをゆっくり一周する。
俺には聞こえないが、きっと修理についてあれこれ話し合っているのだろう。
そうだ、今回は観察者としてスライムたちの行動を見たいから口出しはしないでおこう。
ありのままの姿見せるのよ〜。
ぴょん!ぴょん!ぴょん!
一匹のミニスラちゃんが家の中に戻る。
少しすると戻ってきた。
ひらひらひら
新聞の折込チラシを持ってきたようだ。
チラシはトヨタのレクサス。
高級車の宣伝チラシのようだ。
ぺたっ
ミニスラちゃんはそのチラシを車に貼って、チラシの余白にマジックペンで何か書いていた。
かきかき
「" せっけいず "」
「んん!?」
設計図!?まさかそのただのチラシを設計図として使う気なの!?正気!?
てか、100歩譲ってそれを設計図として使うとして、こんな廃車寸前の車にレクサスは高望みしすぎだろ!?
設計図として使うならせめてこの廃車と形が似ている軽自動車のチラシにしとけよ!?
てかそんな魔改造してるからブレーキが効かなくなったんじゃね!?
ぴょん!ぴょん!ぴょん!
心の中で突っ込んでるうちに別のミニスラちゃんが他のチラシを持ってきていた。
ぺたっ
持ってきたチラシをレクサスのチラシの隣に貼る。
そのチラシは……Kawasakiのninja250(バイク)のチラシだった。
んんwwww??何でそれ貼ったの??何でそれ貼っちゃったの!!??車ですらねーじゃんwwwww!?どうがんばっても車とバイクは構造が違うじゃんwwwwww?
かきかき
「"(^o^)なお君、どっちがいい?''」
\(^o^)/
「…………レクサスで」
レクサスのチラシを持ってきたミニスラちゃんが喜びの舞をして、ninja250のチラシを持ってきたミニスラちゃんは少ししょんぼりしていた。
ははっ……良かった……。
何はともあれ、ギリギリのラインは踏み止れた気がする!何とか四輪であることは防げた!
ここでninja250を選んでたら一体どうなってしまってたのかと想像すると寒気がする。
車からバイクに魔改造された乗り物なんて乗りたくない。
とにかくこれで一安心―ー……
かきかきかき
また、ミニスラちゃんがチラシの余白に何か書いていた。
レクサスのチラシには『わりあい60%』
ninja250のチラシには『わりあい40%』
違う!違う!違う!そうじゃない!そうじゃない!
そんなハイブリッド、エコでも何でもない!!
そんなハイブリッド、俺は望んでないっ!!
ねぇ、頼むから普通に修理しようよ!!
ぴょん!ぴょん!ぴょん!
しかも、また別のミニスラちゃんが他のチラシを持ってくる!!
ちらっ
……それ、乗馬教室のチラシ!!ついに馬まで来たよ!!お馬さんっ!!このままじゃ混ぜられる!!
それで何作るの!?馬車バイク!?ヒヒーン言いながら走るの!!??
「ま、待て!レクサスとninja250を絶妙な割合で混ぜ合わせたそれは、とても前衛的で洗練された物が出来るような気がする!みんなもそう思うだろ!?むしろこれ以上、混ぜるのは残念ながら蛇足だ!だからすまないが馬は諦めてくれる!た の む !」
「" (´・ω・`) "」
なでなで
馬のチラシを持ってきたミニスラちゃんを思いっきりなでなでしてやる。
説得が成功して何とか馬は諦めてくれたが、車バイクは覆らなかった。




