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148話

 楽しい昼食会を終えた後は特にイベントらしいイベントも発生せずに、下校がてらスラの散歩をして帰宅。

 玄関を開けるとミニスラちゃんの出迎えだ。


 「ただいまー……またミニスラちゃんが4匹に減っとる。赤神ちゃんの研修ってまだ続いていたんだな」


 ただ、いつもと違うのは数だけじゃない。


 シーン


 いつものお帰りの舞がなく、玄関の端っこでちょこんといるのだ。

 しかもスライムなのに絆創膏貼ってる。

 意味ねーだろその絆創膏。

 傷口が気になるんだったら一回弾け散らせてやろうか?そしたら傷口含めて再生するだろ?


 「ど、どうしたのですか!?何があったのですか!?」


 スラは慌てながらミニスラちゃんたちを手ですくい上げてなでなでする。


 「ふむふむ……そうですか!ですが大した怪我がなくて良かったです!」


 俺はミニスラちゃん1匹をスラからつまんで絆創膏をベリベリめくってみる。

 思ってた通り、傷なんて全くなかった。


 「で、どうしたんだ?」


 「茶子ちゃんの配達完了後の帰りの時に、地郷高速道路で操作ミスで事故を起こしてしまったのです。幸いミニスラちゃんに大した怪我はなかったのですが、車が大破してしまったらしいです」


 今の地球の人間の技術力でも車の自動運転ができ始めているのに、それより遥かに高い技術を持ってるミニスラちゃんが操作ミス?


 「なぁ……スラたちって本当に機械女神なのか?機械に特化した女神が車の操作ミスなんて初歩的なミスしていいのか?てか、車が大破ってやっぱり俺も下手したら死んでたんじゃないのか?」


 「操作ミスと耐神バリアの展開忘れの根本的な原因としては無茶なスケジュールによる長時間運転の過労です!お言葉ですが、なお君は配達料として100円を支払いましたが、120円は支払うべきでした。そうしたらもっと安全に配達できたと思います」


 「……いや、配達料が100円だって言ったのはミニスラちゃんだし?俺は提示された額を支払っただけだし?」


 あれ?なんか急に俺が悪い扱いになってね?

 この事故の原因って俺なの?


 「120円だったら高くてお仕事くれないと思ったのでダンピングしたのでしょう。その暗黙的な圧力が社会全体を歪ませるのです!そしてその社会の歪みには機械女神の力を持ってしても敵わないと黒様もずっと昔に言ってました!」


 「……」


 よう分からんが、どうやら俺が悪いらしい。

 財布から20円を取り出してミニスラちゃんに渡す。


 かきかき


 「" (*´ω`*) "」


 顔文字から見るにどうやら俺は許されたらしい。


 かきかき


 別のミニスラちゃんも紙に何か書く。


 「" ・ω・ はしってたら、ブレーキがきかなかった

 "」


 「ん?走ってたらブレーキが効かなかった?」


 スラを見て説明を要求する。


 「ふむふむ……そ……そうなのですか。で、でもそれなら耐神バリアで……!」


 テレパシー通信で事故原因を聞いていたスラがやがて沈黙した。

 そしてしばらくの後、スラは自分のポッケから財布をとりだして20円を俺に手渡してきた。

 スラは冷や汗をかいている。


 「金はいいから説明はよ」


 「さっきのはなかったことにしてください、ごめんなさい」


 「謝罪はいいから説明はよ」


 「もし良かったら今日の晩御飯はなお君が好きなふわふわオムライスでどうでしょう!?」


 「晩御飯はいいから説明はよ」


 隠しきれないと思ったのか、スラは事故原因を話し出す。


 「……そ、その。走ってる途中にブレーキが突然効かなくなったのでカーブが曲がりきれなかったらしいです」


 「ほーん。で、耐神バリアってやつが機能しなかった原因は?」


 「……原因不明ですが、オンにしてたのに機能しなかったとのことです」


 ドンッ!!


 「うにゅ!?」


 逃げられないよう、距離を詰めて壁ドンする。

 随分、調子に乗って偉そうな事を言ってたよなぁ?


 「雇用主の無理なコストカットによる整備不良のせいでミニスラちゃんが事故るなんて可哀想だなぁ〜?いや〜ミニスラちゃんの雇用主には呆れ果てますな〜?」


 「……そ、それは……」


 「しかもその事故の原因をクライアントである俺に責任転換させようとしてたんだぜぇ?ひどい話だよなぁ〜?」


 スラのほっぺを手でむにゅむにゅする。

 相変わらず柔らかくてすべすべだが、今は関係ない。


 「で、今回はどう落とし前つける?」


 「3日間のモンペチ生活で許してください……」


 「いいや、今回はそれだけでは済まされないよな?」


 「では……どうすればいいですか……?そ、そうです!慰謝料として50円――……」


 「事故の原因と反省と再発防止策をまとめた報告書を4000文字程度で書け」


 「4000文字!?そ、それはあまりにも重いと思います!」


 故郷に行って学んだスラの新しい罰。それは反省文を書かせることだ。

 モンペチをやってもしょんぼりしながら食べるレベルだが、反省文を書かされるのは泣くレベルで嫌な事らしい。

 てか、二度と整備不良が起きないように反省文書かせないと、絶対にスラの車に乗りたくない。


 「地郷高速で事故したってことはムラサキが管轄か?ムラサキに事故の事を言ったら……また裁判だろうなぁ。不服ならそっちのルールで裁いてもらうか?もちろん俺は弁護しない」


 「……ならせめて、せめて、反省文の提出期限は3年くらいください」


 たった4000文字程度でどんなに時間かかるねん。



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