146話
あの3人組とは友達だと思っていたが、どうやら違うらしい。
ショックのあまりそのまま席に戻ってぼけーっとしてるといつの間にか寝てしまって昼休みになっていた。
「夏野、昼休みだぞ。ご飯の時間だぞ」
肩をポンポン叩かれて起こされるとそこには山坂と遠藤がいた。
「……そうか、俺は無意識に5組に帰ってきてしまってたんだな」
山坂がやれやれと言った感じに答える。
「ここは1組にだよ。心配して様子を見に来たんだ。その調子だと、大分苦戦してるようだね」
「いやいや、このくらい余裕だ。……ところで確認したい事があるんだが……俺たちって友達だよな!?間違いないよな!?ズッ友だよな!?」
「……環境に耐えられずにそこまで人間不信になってしまったんだね。やっぱり5組に戻って来るべきだよ」
「大丈夫だ、何とかなる。それより二人の口から俺とは友達だって聞きたいんだ。ほら、早く答えてくれ」
財布から諭吉を3枚取り出して今月の友達料を手渡す。
すると山坂は優しくそれを返してきた。
「大丈夫。これから何があっても僕が夏野をそばで支えてあげるから」
ひょこ
スラが現れた。
「山坂君!それはボクが言うセリフなのだ!もしかして山坂君はなお君のメインペットの座を狙っているのですか!」
「……そうだな。それもいいかもしれないな」
「うにゅ!?」
スラがビビる。俺もビビる。
「冗談だよ。それより昼ごはんにしようか」
「最近どんどんボクの立場が危うくなってきてます……ピンチです」
スラはかなり大きな重箱を机に置いて中身を開ける。
すると息子の運動会で張り切って弁当を作る母親が泣いてしまうほどの超豪華な弁当だった。
弁当なのに凄く美味しそうな刺身や天ぷらなど、まるで高級旅亭の料理を思わせるほどの豪華な弁当なのにこれが数人前のボリュームがある。
「スラさん、スラさん。いくら何でもこれは気合入れすぎ。親父の来月の小遣いを小学生レベルまで落とさないといけないほどだ」
「食材はほとんど山坂君からもらいました!」
「……まじ?」
俺と遠藤は目を丸くして山坂を見る。
再び財布から諭吉3枚を取り出して手渡そうとすると、また返されてしまった。
「いいよ、このくらい全く大したことじゃない。それよりもスラちゃんの料理スキルの方に驚いた。これ、全部スラちゃんが作ったのかい?」
「ミニスラちゃんも一緒に作りました!おあがりよ!おそまつ!」
アニメに影響されて適当に言ってるようで意味を理解してなさそうだった。
さて、弁当には色々な種類の刺身やおかずがあるが平民の俺は、とある物に目が奪われる。
あれ、もしかして大トロじゃね?一皿100円の回転寿司には絶対ない大トロじゃね?
食ってみると口の中で溶けていくのが実感できる。
これは間違いなく大トロだ。
どうやら遠藤も俺と同じ事を思ってるらしく、無言で食べていた。
「どうですかなお君!美味しいですか!美味しさのあまり服が脱げてもいいですよ?」
「何だそのドヤ顔は。超美味しいけどこれは食材を提供した山坂の手柄だろ?スラはキレイに並べただけじゃん。これからは山坂が俺のメインペットだな。よろしく」
「そ、それは確かにその通りですが、でもスラちゃんもマグロの解体から頑張ったのだ!」
「それはスゲーよ!自慢していいぞ!」
山坂は上品そうにスラが作った煮物っぽい物を食べる。
平民だから煮物っぽい物としか表現できないが、かなり手が込んでいる食べ物だとは分かる。
「これは凄い……1流の料理人に匹敵するレベルだ。これも機械女神の力なのかい?」
「努力の結果です!甘えてスキルを磨くことをやめてしまったら捨てられるシビアな世界で生き抜いた結果なのです!前も陽菜ちゃんに言いましたが、捨てられるのは料理じゃなくてスラちゃんです!」
遠藤が弁当を食べながら俺に質問をする。
「夏野ってスラちゃんにどんな教育してきたんだ?」
「『飯減らすぞ?遊んでやらないぞ?捨てるぞ?』この3つの柱を軸に教育してきた」
「スラちゃん、僕の所に来るかい?夏野の所にいるよりは良い生活ができることは保証するよ」
「おいおい、人のペット取るなよ。スライムなんてスラの故郷に行ったら腐るほどいるから連れて行ってやる。好きなだけスライムGOしてこいよ」
「えっ、いいの!?スラちゃんみたいな美少女が家に同棲してくれるの!?」
「ただ、命の保証はしない事と、スライムが人化した時に美少女だとは限らない事は覚悟しておけよ?捕まえたと思ったスライムが人化したら禿げたおっさんだったって可能性もある」
「そんなことはありません!機械女神はみんな可愛いです!」
「だ~か~ら~身内が言う可愛いなんて一番当てにならないから。俺、黒の事はしわしわのおばあちゃんだと思って飼ってるから。とにかく、スライムを飼うって事は人生全てをスライムの為に使う覚悟を持つってことだから覚悟が決まったらまた俺に教えてくれ」
「あ、ああ……よく考えておくよ」




