142話
ごくごくごく
赤色スライムは既に缶ビールを3つ開けて、4本目を飲もうとしていた。
赤くて酒を飲むスライムは前に会った記憶がある。
「そういや、この赤色スライムも俺が知ってるスライムか?ほら、地郷高速で後ろから追突してきた赤色スライムいたじゃん?」
「そうですね!この子は赤が―ー………」
「赤が?え?何だって?」
「このスライムの名前は赤ちゃんです!」
「……名前に似合わず酒をごくごく飲んでるんだが。まぁいいや。よろしくな、赤ちゃん」
赤ちゃんに近づいて頭をなでなでしようとした瞬間、
ぴょん!
「ぶふっ!?」
赤ちゃんが俺の顔面に体当たりしてきた。
柔らかいゴムホールが顔に当たったみたいなもんだから、ダメージはない。
しかし、スライムが直接攻撃を仕掛けて来たことに精神的ダメージをちょっとだけ受けた。
赤ちゃんは紙に殴り書きする。
「" 赤ちゃん言うな。ころすぞ? "」
「いやいやいや、スラが赤ちゃんだって言ったからなんだけど!?スラさん、どう言うことなの!?」
「きっ、きっと頭をなでなでしようとしたのが気に入らなかったのだと思います!」
「" そっちは良い。赤ちゃん言うな"」
「名前を呼ばれて怒ってるんだけど?」
「そ、それは――……」
もぞもぞ
かきかきかき
「ん?」
珍しく黒が自発的に何か紙に書いている。
まさかいよいよ機械女神のトップとして、仲裁に入って場を取り持つのか?
一体何を書いてるのかすごく楽しみだ!さぁ、黒の統率力を見せてくれ!
「" ……………んっ、赤ちゃんだからグズるww "」
「" あああああああああああ!!?? "」
黒、ここでまさかの赤スライムを煽る!
いつも微動だにしない黒が、ちょっとうねうねしてるもん!明らかに煽ってるよ!
赤スライムは大変ぶちギレの様子。
黒に体当たりしたり餅みたいに引っ張ったりしている。
黒は無抵抗に赤スライムの攻撃を受けていた。
「スラ、これは止めた方がいいのか?」
「大丈夫です。黒様と赤ちゃんは機械女神になる前よりもずっと前から仲良しだって1000年くらい前にムラサキが言ってました。ですよね?」
びくっ!
窓を拭いていたムラサキが突然、ぷるぷる震えだした。
「" ∑( ̄□ ̄;)それは内緒だって言ったのに "」
赤ちゃんがじりじりとムラサキに近寄る。
スラが慌てて訂正する。
「そ、その今言ったのはキャンセルでお願いします!忘れてください!」
「……もう手遅れじゃないか?」
機械女神になる前ってのがすごく気になるが、その辺りの事はもう教えてくれないし、そもそもスラは知らないだろう。
ただ、機械女神って相当昔からいて、それよりもさらに前から仲良しと言うことは赤ちゃんと黒は相当仲良しなんだろう。
あの黒が煽りに出るほどだからな。
「" (┼д┼;)お邪魔しました! "」
がらがらがら
ぴょん!
ムラサキは赤ちゃんのプレッシャーに耐えられず窓を開けて外に逃げていった。
ごくごくごく
てっきり赤ちゃんはそのまま追うのかと思ったらビール飲みを再開した。
図らずともまたスライムが1匹減り、残り3匹になった。




