141話
「" (≧∇≦)お久しぶりです! "」
「ん?」
紫色スライムがひょこひょこと足元にやってくる。
「久しぶり……っと言うことをは、あの地郷高速道路の料金所にいた紫スライムか?」
「" (⌒▽⌒)はい、ムラサキです! "」
「ほう、久しぶりだな。あれからまだ2週間も経ってないのにすごく久しぶりな気がする」
紫色スライム改め、ムラサキに手を伸ばすとムラサキが手に寄ってきて、すりすりし始めた。
スラは欲求のおもむくままのがっついた力強いすりすりだが、ムラサキは優しさがある、柔らかなすりすりだ。
「……ボクも」
スラはすごい近くで羨ましそうにガン見していた。
無視する。
ぴょん!ぴょん!ぴょん!
突如、ベットの上で一心不乱に跳ねていた茶色スライムが寄ってくる。
「お、何だ?茶色スライムもすりすりしたいのか?まぁ、仕方ないのう。ほれ、もっと近う寄れ」
茶色スライムに手招きする。
するとジリジリと近づいてきて、茶色スライムはすりすりしているムラサキにピタッと体を寄せて、ずるずるとまるで俺から引き剥がすようにムラサキを引っ張る。
ムラサキはそれに抵抗するようにうねうねともがいたが、そのまま引き剥がされてしまった。
俺は茶色スライ厶の行動の意味を理解する。
「ははーん、茶色スライムはそんなにすりすりを一人占め、いや一匹占めしたいんだな?いやしんぼうだなぁ」
すかっ
茶色スライムを抱きかかえようと思ったら、なんかすごく避けられた。
「ははーん、恥ずかしがりやさんめ、でも、時には素直になった方が良い事があるんだぞ?」
すかっ!
「……あれ?なんか凄く距離を取られた気がするんだけど?」
すりすりすり
茶色スライムの拘束から逃れたムラサキは寄ってきて足元ですりすりを再開。
ずるずる
しかし、また茶色スライム寄ってきて、ムラサキを引き剥がす。ムラサキはしょんぼりしてしまった。
そして茶色スライムは組み立てられたダンボールの上に乗っかって跳ねた。
「何がしたいのか分からん。スラ、通訳してくれ」
「では通訳します。『夏野直人ー!やっぱり聞いていた通りのエロ魔人だな!そんなエロ魔人が私たち機械女神のトップに立つのは私は断固拒否だー!これ以上、夏野直人なんかに私の家族を指一本ふれさせないぞー!』とノリノリで言ってます!」
「スラも随分ノリノリで通訳するなぁ、おい?」
「何と言っても茶子ちゃんとボクは、目的は違えど、利害関係が一致しています!なお君の人気に嫉妬している茶子ちゃんとメインペットの座が揺るがされるのを阻止したいボクとで同盟関係を結んでいるのだ!」
「所詮、同盟なんて片方が裏切ってすぐに終わるもんだけどな」
「そんなことはありません!茶子ちゃんとは長い間、楽しい時も苦しい時も一緒でした!この絆はそう、やすやすと壊れたりはしません!」
「ふーん」
スライドからの説明はなかったが、茶子と言うのはこの茶色スライムのことなんだろう。
スライムごときに俺のことをどう思われてようが知ったことじゃないが、あれだ、機械女神のトップになるつもりはないと強く否定しておこう。
確かに機械女神トップの黒をペットにしている俺が一番上にいるのかもしれないが、機械女神のトップなんて絶対にやりたくない。
「おい、茶子。訂正しときたい事があるんだが――……」
「割り込み失礼します!『馴れ馴れしく名前で呼ぶなー!そうやって、いろんな機械女神を堕天させたんだな、私は引っかからないぞー!』」
「……茶色スライムはーー……」
「割り込み失礼します!『私をそんなモブスライムみたいな扱いにするなー!茶子様と崇めてひれ伏せー!』」
うわっ、めんどくさ!!このスライムすごくめんどくさすぎるよ!!
なんかこいつハイテンションになってダンボールの上で跳ねてるもん!!史上最強のうざスライムだよ!!
ぼふっ
「……」
ダンボールの上で跳ねてたせいでダンボールの上面が抜けて茶子がダンボールの中に収納された。
「……」
「うにゅ?何だか静かになりましたね。どうしましたか?」
スラがダンボールの中をのぞき込んで茶色の様子を伺う。
「ふむふむ、『なんだかこの箱の中が落ち着くから、今日はこの辺にしといてやるー!寝るー!』て言ってます」
俺はそれを聞くと、すぐに手際よくガムテープをしっかりダンボールに貼って茶子が出てこないよう梱包する。
ついでにマジックペンでダンボールに『取り扱い注意』と書いてこれでよし。
「ミニスラちゃん、すまないがこれを故郷に配達してきてくれ。着払いで」
「" (*´・ω・)うけとりきょひされたら、もどってくるよ? "」
「……分かった、俺が払う。いくらだ?」
「" (*´・ω・`)=3とおいから100えん!! "」
相変わらずの安さだった。
ミニスラちゃんに100円を渡すとダンボールを浮かして運搬を開始した。
「"(_ _)スラちゃん、くるまかりるね"」
「そ……その……確かに茶子ちゃんも悪かったとは思いますが、根はとても良い子なので許してあげても―ー……」
「ん?どうした?茶子と一緒にスラも配達してやろうか?」
「どうぞボクの車を使ってください!道中お気をつけて!」
スラと茶子の同盟関係はあっけなく終了した。




