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135話

 うーん、それにしてもこの部屋はとてもキレイに掃除や整理整頓されている。

 きっとミニスラちゃんが頑張ったのだろう。

 服とか下着とかが無造作に置かれていたら事故を装って全力ですーはーすーはーするのに、見る限りハンガーに掛けられているスーツしかない。

 流石にタンスを開けて下着をあさると赤神ちゃんの家を出禁にされてしまう。

 次に繋げつつも、ある程度の変態をしたい。。


 「で、私のクラスはどうかなりそうか?見てる感じ随分苦戦してるみたいだが」


 「……」


 うーむ、下着より当然劣るが、それでもスーツだって悪くない。

 赤神ちゃんは2着のスーツを使いまわすのは把握済み。

 つまりざっくり計算すると、月80時間くらいは着ている。

 絶対良い匂いがするに違いない。


 「随分真剣な顔つきだな。そこまで考えてくれてるとは思わなかった。……その、なんだ……あ、ありがとな……?」


 「……」


 だが、わざわざここでスーツをすーはーすーはーしなくても学校でやれば良いんだ。

 どうせならもっとこの部屋でしか出来ない事をしたい。

 ああ、だけどもう少しで焼き鳥パーティはお開き!焦りが出るっ!


 「クソッ!チャンスなのは分かってるんだ!だけど、だげど!何も良い手が思い浮かばないんだ!赤神ちゃんだって何も(セクハラできる)チャンスは作ってくれない!これじゃ、動けないんだ!」


 「なっ……!?あ……そのっ……えっ?……そ、そうだよな。まかせっきりにして悪かったよ。私も出来る事があったら協力するからさ。ほら、元気だせよ。いつもの夏野らしくないぞ?」


 「えっ?あ~いやいや、(セクハラの)協力は流石に萎えますよ。クッパが甲羅脱いで踏まれに来たら、ぬるすぎてクソゲーですって」


 「……あ?……よく分からんが、私の手は必要ないってことか?」


 「ええ、俺は自力で(セクハラ)やりますよ!」


 「そうか、そうだな!よく言った!それでこそ男だ!かなり見直したぞ!」


 赤神ちゃんにバシバシ背中を叩かれる。

 そうだよな!セクハラしてこその男だよな!草食系男子なんてクソ喰らえ!

 やってやる!やってやるぞ!



 ◇◇◇◇◇


   

 「" (*´ω`*) おなかいっぱい、ねる "」


 ミニスラチャンは赤神ちゃんの許可もとらず、勝手に押入れから布団をふよふよと浮かして畳に敷いた。


 「寝る前はちゃんと歯磨きですよ?」


 「" (*´ω`*) はーい"」


 ミニスラちゃんはぴょんぴょん跳ねながら歯磨きをしに行った。

 

 「だから何で歯がないのに歯磨きしに行くんだよ……」

 

 「気持ちの問題です!」


 ……まぁ、いい。それよりもミニスラちゃんには感謝の言葉しかない。

 チャンスが突然やって来たのだ。

 俺の目にはもうあの布団しか映らない。


 あの布団の使用感は間違いなく普段使ってる布団!

  

 「はぁ……はぁ……へへ、へへへへ!!」

 

 「おい、大丈夫か?頭がサルモネラ菌にやられたか?」


 つまり赤神ちゃんの布団!絶対に完璧に完全に良い匂いがする!あそこが俺の今日のゴール地点だ!

 ゴール地点に向かう為の作戦が一瞬で思いつく!

 

 「……何だか、俺も眠たくなってきたなぁ~。ちょっと寝ようかな~……お布団お借りしますねっっ!!」


 「ちょ……おいっ!」


 俺は言い終わると同時にクラウチングスタートを切る!


 「ちょっと待て!!」


 赤神ちゃんも立ち上がって俺を止めようと向かってくる!


 赤神ちゃんに布団に入るなと言われた後に、強引に布団に入ろうとしたら悪意があったとして出禁になる!

 しかし赤神ちゃんの返事を聞く前に布団に入ってしまったら、それはうっかりなのだ!

 眠たかったから、うっかり布団までクラチングスタートでダッシュしてしまいましたと言い訳できるのだ!

 後で布団に入った罰は受けるが、出禁は回避できるっ!


 「へっへっへっへっ楽園!!……おうっ!?」


 ダッシュしようとした瞬間、足が痺れて倒れる!くそっ、正座をしてたせいか!


 「……ぐっ!!」


 そのまま倒れこんでしまう。

 すぐ立ち上がって布団に向かわなければ。

 ……いや、それじゃ間に合わない!

 

 ならば四足歩行!今の俺は4WD!安定性なら誰にも負けません!


 ガシッ!


 「……な、なんだと!?」


 「はっ、おしかったな!お前の事は聞きたくもないのにスラと陽菜から散々聞かされてるんだ。ミニスラが布団を敷いた敷いた時点である程度予測してた」


 赤神ちゃんは俺の足に関節技をかけて絞めてくる。足に痛みが走る。


 「ギブアップしたらどうだ?このままだと足が折れるぞ?」


 「ふっ、ふっふっふっふっ」


 「……何笑ってるんだ?気持ち悪いんだが」


 「散々俺の事を聞かされている?甘い……ここで俺が諦めると思ってるんだったら甘すぎるっ!言葉で伝わるほど俺は普通の人間ではない!つまり、赤神ちゃんは何も俺のことは分かってない!」


 「諦めないとマジで折れるぞ?」


 「いいだろうっ!足の一本や二本くれてやるぅっ!」


 「なっ!?」


 スラは慌てふためきながら、

 

 「そろそろこのくらいで!みんな仲良く!」


 俺&赤神ちゃん『スラは引っ込んでろ!!これは俺(私)の戦いだ!!』


 「うにゅ!?」


 関節技をかけられながら、這いずって布団に向かう。

 今の俺は4WD!後輪がぶっ壊されようが前輪駆動で前にっ!前にっ!前にっ!前にっ!


 「ブオオオオオオオン!!(シフトチェンジ)ブオオオオオオオン!!(シフトチェンジ) ブオオオオオオオオオオンンンンンンンンンッッッッ!!」


 自らを奮い立たせる為、力強いエンジン音を轟かせる!!

 赤神ちゃんも阻止しようと引っ張るがじりじりと布団まで距離を詰める。


 「後30cmで手が布団に届くぅ!後20cmで手が布団に届くぅ!後10cmで手が布団に届くぅ!届くぅ!届くぅ!届くぅ!」


 「この……馬鹿力めっ……!!だったら体育の授業の時、空ばっか見てないで真面目に受けろよ!!てか、本気で折るぞ!?」


 「ぐふっ!!」

 

 赤神ちゃんの足で俺の後頭部が押さえつけられて顔が畳に押さえつけられる!

 だが、何をしてももう遅い!後は手で布団を手繰り寄せれば――……!!


 ぴょん!ぴょん!ぴょん!


 俺のすぐ横を歯磨きを終えたミニスラちゃんが通り過ぎる。

 何か嫌な予感がする。

 ……だ、大丈夫だよな?そのまま布団に入って寝るんだよな?

 邪魔をするなと言いたいが顔が畳に強く押し付けられて声が出ない。


 「" (*´ω`*) やっぱりもうちょっとたべる!"」


 「っ!?」


 ミニスラちゃんはもぞもぞと敷いた布団を畳んでまた押入れに入れる。

 そしてまた焼き鳥をもぐもぐ食べ始めた。

 ミニスラちゃんは俺と赤神ちゃんのこの状況を見てさらさらと紙に書く。

 

 「"(*´ω`*) とってもなかよし!"」



 ◇◇◇◇◇

 


 「はぁ……何も成果を得られませんでした」


 焼き鳥パーティーを終えて、とぼとぼと家に帰る。

 ああ、足が痛ぇ。

 

 「そんな事ないです!やきとり美味しかったですよね?」


 「……俺はスライムと違って食欲だけ満たされても満足しないんだよ。性欲だよ、性欲」


 「やむを得ません!だったらスラちゃんで!」


 スラは手を胸に当ててドヤ顔している。

 所詮スライムごときに人間の性欲と言うものが理解できるはずがない。


 「連れて帰ってこなかったけど、ミニスラちゃんは赤神ちゃんの家にしばらくいるつもりか?」


 「しばらく帰してくれないと思います!便利だと知られてしまったので!」


 「……そうか。そういいや、残りのミニスラちゃん4匹は来なかったな。あの感じだったら、ついてきても何も問題はなかったけどな……途中で呼べば良かった」 

 

 終わったことは仕方がない。

 残った焼き鳥はスラがクーラーボックスに入れてるから、それで我慢してもらおう。


 ぷるぷるぷる


 突然、スラがレイプ目になりながらぷるぷる震えている。

 一体どうしたんだ?


 「な、なお君……そのクーラーボックス、ボクに貸してください」


 「ははーん、お土産の焼き鳥を入れ忘れたのか?そんな絶望しなくても、赤神ちゃんの家はまだ近いんだから取りに帰れば良いだけだろう?」


 「……」


 クーラーボックスを渡すと、ここでクーラーボックスを開いて中身をごそごそしている。

 焼き鳥はちゃんと入っていた。本当に一体どうしたんだ?


 クーラーボックスの中身を覗き込む。

 

 「おい……嘘だろ?まさか最初からずっといたのか?」


 「うにゅ……」


 よく見ると保冷材に紛れて全く動いていないミニスラちゃんが4匹いた。

 一匹つまみ上げると、冷えピタスライムになっていた。

 

 「とても寒かったら寝てしまったらしいです……ボクもやきとり目がくらんですっかり忘れてました……」 


 本当に何も成果を得られなかったのは俺よりも4匹のミニスラちゃんだった。

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