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131話

  俺はお土産を入れた大きなクーラーボックスを担いで、軽快にスキップしているスラについて行くと赤神ちゃんの住んでいるアパートに到達。家から歩いて10分くらいの所にあり、いつも歩いている通学路の近くだ。ここなら毎日気軽に立ち寄れるな。やったぜ。


  「それにしてもこのアパート、すげぇーボロいな。俺たちの学校の先生ってかなり金もらってるって昨日教室で寝たフリしている時に盗み聴きしたんだが」


  見るからに古い木造アパートだ。こんなに古いと部屋にトイレや風呂はついていないかもしれない。これは住むには色々不便そうだな。もしかして赤神ちゃんってガサツな性格だから馬鹿みたいに金使って膨大な借金が――……。

  赤神ちゃんの経済状況について勝手な想像しているとスラが答えた。


  「家なんか雨風がしのげれば十分だって赤神ちゃんが言ってました。ところでなお君、盗み聞きは良くない。寝たフリして盗み聞きしてたらなお君から相手に気持ちを発信することができません!」


  「俺は発信し続けていたさ。けどな、相手の受信機が故障してるのが分かったからちょっと様子見してたんだ。……それよりほら、今は赤神ちゃんだ!」


  「そうですね!焼き鳥です!」


  赤神ちゃんの部屋がある2階に向かう。

  ……危なかった、とても危なかった。上手く切り抜けたがもうちょいでペットに泣かされるところだった。俺のガラスのハートを舐めるなよ?スマホの画面くらい簡単にパリーンするんだぜ?しかも修理にめちゃくちゃ時間と手間がかかるんだぜ?


  トン、トン、トン


  錆だらけの階段を昇り終え、一度周囲をぐるっと見回す。


  「うにゅ?どうしましたか?」


  「ミニスラちゃんがこっそりついてきてないか確認してるんだよ。あいつら来る気まんまんだったからな」


  これ以上余計なトラブルを防ぐために、ミニスラちゃんに留守番を命じたらめちゃくちゃ抗議デモされた。家を出る時なんか『やきとり!!!!』と書かれた大きなプラカードを掲げながら玄関までついてきたくらいだった。

  最終的にはミニスラちゃんを説得して諦めさせたが一つひっかかることが残った。それはスラの我関せずと言った態度だ。分身のミニスラちゃんがしょんぼりしたら本体のスラもリンクしてしょんぼりするとは前に聞いた。だが、ミニスラちゃんを留守番させる事に関してスラは最後まで全く口出ししてこなかったし、しょんぼりとしてる様子もない。ミニスラちゃんの事が気にならないほど焼き鳥の事で頭がいっぱいのお花畑状態か、あるいは……。


  ……よし、とりあえず周囲にミニスラちゃんはいない。後、ミニスラちゃんがついてきている可能性があるとすれば……。


  「スラ、ミニスラちゃんが忍び込んでないかボディチェックだ。ほれ、腕を上げろ」


  「も、もしかしてついにボクもセクハラ対象になりましたか!そうですよね!スラちゃん可愛いですもんね!」


  「は?」


  何を勘違いしているのか知らないがドヤ顔してるスラをボディチェック。手提げかばん、ポッケ、服に隠れて体が見えない所にへばり付いていないか念入りに調べる。


  ふにふに


  「……んっ」


  スラは小さな声を出す。

  うむ、おっぱいはちゃんと2つ。それにミニスラちゃんよりも小さいからこれは本物のおっぱいだな。  

  

  「あいつらが大人しく留守番するとは思わなかったが……まぁいい。きっと今頃、庭で怒りの雑草むしりでもしてるのだろう」


  スラの体を触るのを止めてクーラーボックスを担ぎ直す。


  「セクハラは終わりですか!ではセクハラに対する罰ですが……ふふ~ん、何にしましょうか~?明日は一日中スラちゃんスリスリとか――……」


  「さっきから何言ってるんだ?ペットにセクハラするとか獣姦かよ?俺はそんな変態じゃない。真っ当な人間だ。ほら、そんなことより早く赤神ちゃんの部屋まで案内してくれ」


  「うにゅ~……」


  スラは何だかとても残念そうにとぼとぼ前を歩いて行った。


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