123話
5組に逃げ帰ったらミニスラちゃんの事をバラすと暗黙的に脅されしまったが、あの場で騒いでしまうのは良くない。とりあえずそのまま席に着席して授業を受ける事になった。
だが手ぶらで来てるので教科書や筆記用具など、授業に必要なものは何もない。必要な物が揃って以上、授業を受ける事が出来ない。しかも授業をしているのは一番嫌いな学年主任の数学。
優等生な俺にとってはとても心苦しいが、スマホでも弄って時間を潰そう。そう思っていたのだが……。
「ほぅ。夏野君はスマホを取り出してグーグルのサイトを開くぅ!一体何を検索するのかぁ!」
「……」
「いやー赤神先生の勝手な行動には困ったものですが、これはこれで面白いですなぁ!ささっ、夏野君。慣れない1組ですが、君はいつもの君でいいですよぉ?ありの~ままで~」
学年主任が俺の行動をいちいち大声で実況してくる。俺の座っている席は教卓のすぐ隣にあるから何をやっているのかはすぐ確認されてしまうのだ。日頃の俺に対するヘイトをここぞとばかりに発散してきやがる。
これがいつもの5組ならたとえエロサイトを見てることを大声で実況されようが何にも問題ない。5組の奴らにとっては慣れた事だからそんな事で目立つ事はない。
だがここは1組。さっきからすごいジロジロ見られて悪目立ちしているのに行動を逐一実況されるのは最悪だ。
スマホをしまう。さて、どうやって時間を潰そうか。
寝るのが王道だが、寝てる間も学年主任にいじられ続けるのは最悪のさらに最悪。夏野をいじっても良いという認識が1組で生まれるしまうかもしれない。
この授業を受けた後5組に逃げ帰るだけなら大して問題にはならないが、ミニスラちゃんが赤神ちゃんに捕まってしまってる以上ひょっとしたらしばらく1組に留まらないといけないかもしれない。
そしてその間に一度夏野をいじっても良いと言う認識を持たれてしまうともう止まる事ができない。
後はどんどんエスカレートしていじめの対象になって……。
ああ、そうか!
『適当に気の弱そうな奴1一人選んで1組のいじめられ役になってもらう。一人を生贄に捧げるだけで解決だ』
自分で言った事を自分自身で実行してしまってるのだ!おおっ……恐ろしい!
笑いが込み上げる。
だからわざわざこんな所に席を置いたのだろう。だが俺が天才だって事を考慮に入れてなかったのが失敗だったな。
この頭脳を使っていじめられルートを回避している!誰が好き好んで生贄になってやるもんか!目立たずに何も問題なくこの1組を去ってやる!
さて、そう決まった以上やってはいけない事がいくつかある。寝たり、トイレに行って時間を潰すような陰キャラ行動だ。
そして今やる事、それは1組の奴らと友好的に接することだ。
ちらっ
ん?目の前にいる女の子と目が合ったぞ?なら友好的に接しようじゃないか!
「はっはっはっ」
手を上げて笑顔でその子に挨拶する。この超絶イケメンの俺がこんな近くで笑顔で接するんだ、目をハートにさせて惚れさせてしまうだろうなぁ。全く罪な男だ。
「ごっ、ごめんなさい……」
女の子は小声で謝罪して申し訳なさそうに視線を教科書の方に移す。
ふっ……君の照れた顔も可愛いぜ!何か思ってた反応より少し違う気もするが概ね大成功だろう!




