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120話

  「陽菜、白澤さんの横に座ってみてくれ」


  「ん?座ったけど何?」


  ……ほぅ。

  陽菜はクラスで1番の美少女と言うことは周知の事実だったが、ガチのアイドルの横に座らせてみても全く引けを取らない。同格のオーラを漂わせている。

  今度適当なアイドルのオーディションに勝手に書類送って申し込んでおくか?

  いや、駄目だ。マジで合格したらシャレにならない。陽菜は俺と俺達5組だけのものだ。


  「んふ~!」


  スラが陽菜と白澤さんの間に入っていつものあざといポーズをとっている。きっと俺が記念で写真撮影をするとでも思って紛れ込んだんだろう。

  でも俺は基本、エロいの以外は写真は撮らんぞ?


  だが、周りの男子はスマホを片手に持っている奴もちらほらといた。そして男子生徒の一人が発言した。そろそろクラスメイトの名前を覚えないとな。


  「あの、白澤さん!もしよろしければ写真撮影してもいいでしょうか?アイドルをこんな近くで見るのなんて初めてなので……」

  

  俺はそいつの前に立ち写真撮影を妨害する。


  「あ~駄目だよ君ぃ~。少なくとも陽菜の撮影はマネージャーの俺が許さない。もしその写真がネットに出回って、陽菜が有名なって本当にアイドルなんかになってしまって、陽菜の初めてが芸能界の闇に奪われたらどうするんだ?ああ、別にスラは撮ってもいいぞ。どうせスラなんか一部のロリコンしか反応しない」

  

  「あっ、その……。写真撮影はまた今度でいいですか?実は夏野君に相談したい事があって……」


  男子どもは残念そうにうなだれて、俺の方に鋭い視線を向けた。

  写真撮影を妨害された恨みと言うより、白澤さんが個人的に俺に用件があると言う事を聞いたせいで生まれた嫉妬心だろう。

  

  「ナオに相談!?何を相談するのかは知らないけど、大した事じゃないなら止めといた方がいいわよ。下らなければ下らないほどしょーもない事しかしないから。……そしてそれは大抵エッチな事に繋がる。ナオに相談する時は他に誰も頼れなくて絶体絶命の時の最後の手段って時よ」


  「そうです!なお君はピンチの時は神のように頼もしいです!」


  おお……なんと素晴らしいフォローだ。俺は感動で思わず、ご褒美としてスラの口にキャンディーを放り込んで頭をなでなでしてしまった。


  「うにゅ~」


  「そ、それで、この蛆虫に相談したい事があると言うことですが何でしょう?陽菜の言う通り、私なんて犯罪者すれすれの変態ですので出来れば他の人に相談した方がよろしいかと……」


  すると陽菜が席を立って、周りに聞こえないよう小声で言った。


  「そこまで言ってない。……と言うか、もうちょっとしゃきっとしなさいよ。確かに芸能人相手に緊張するなって言うのも難しいかもしれないけど、それを言ったらスラなんてもっともっと格上の女神なのよ?」


  何故そこでスラが出てくるのか分からない。女神だろうがペットの時点で格下だ。

  見てみろ、あのキャンデイーを美味しそうに舐めて幸せそうにしているあれ相手に緊張なんてする訳ないだろう。



  ◇◇◇◇◇

  


  「っと言うことで1組のギスギスした雰囲気をなんとかしたいのです。夏野君なら解決方法を知ってるかなっと思いまして」


  どうやら白澤さんがいる1組は先日の合宿で色々と揉めてしまい今でもギスギスした雰囲気が続いているらしい。

  それをなんとかしたいと思い、5組を勝利に導いたと噂されている俺の所に相談に来たらしい。

  

  「すいません、解決方法は何も思い浮かばないです。そういうのは――ああ、そうだ。5組の男子をまとめるリーダー、遠藤が良い解決方法を知ってると思いますね。なぁ、遠藤どう思う?」


  「ええっ!?ナンデ、ナンデ!?えっ~っとそうだな、ちゃんと話し合うべき……じゃないかな」


  全員の視線が突然話を振られて動揺している遠藤に向けられる。

  そしてターゲットが外れた俺はそっと席を立ち、計画通り!みたいな顔をする。面倒ごとを押し付け、遠藤はアイドルと生会話出来る。まさにWINWIN。 

 

  「……じー」


  陽菜がジト目で見てくる。俺の考えを見通されたのかもしれないがそれを妨害される筋合いはない。

   

  さて、休み時間が終わるまでミニスラちゃん探しでもして暇つぶしするか。どうせ奴らも登校してどこかに潜んでるんだろう。

  まずはミニスラちゃんの視点になってどこに隠れそうか予想してみるか。

  俺はorzのようになって教室を這いずるようにミニスラちゃん探しを――……


  「……ちょ、変な顔してると思ったらやっぱりやった!!やめなさいよ~!ぐぬぬっ~!」


  陽菜がすごい驚いた様子で俺の体を起こそうとする。

 

  「おい、いきなり何をするんだよ!?今更、俺が床を這いずり周る奇行したってそんなに驚くないことな――……ほう、なるほど」


  どうにで止める訳だ。俺の目の前にはなかなか清純そうな女の子が履いてそうなピンク色のパンツが見えた。誰のかって?白澤さんのパンツだ。

  

  「あっ……あの……そのっ。そ、そういうことは止めていただけませんか?」


  恥ずかしそうにしながら手でスカートを抑えてパンツが見えないように隠す。


  「私ならともかく……本当に警察に捕まるわよ?それとも何、捕まってでも見たかったの?」


  「……信じてくれるかどうか怪しいが今回は違うんだ。マジで。探しミニスラちゃんをしてただけだ。過失は認めるが本当に今回はやるつもりはなかったんだ!」


  全員の視線がまた俺に戻ってくる。しかも女子たちの目線ははとてもとても冷たいものだった。

  一方男子たちは『アイドル相手にもそんなことするかよ!?お前マジですげぇよ!!』というような目で見てきた。


  まずい、非常にまずいぞ。客観的に見たら俺は皆が見ている目の前で突然パンツを覗きこみにいったと言う状況。

  しかもパンツを見たのは初対面のアイドル。これ、教師に知られたら一発退学、下手したらマジで警察にお世話になるレベルじゃね?何気に人生で一番ピンチじゃね?


  「夏野君……?」


  「悪かった。今まで見たピンクで一番キレイなピンク色だった!」


  「……っ!?」


  「ああ、違う違う。そうじゃない!いいか、みんな良く聞いてくれ!さっきも言ったが悪気があってやったつもりじゃないんだ!だってそうだろ?俺が事故を装ってスケベ心を満たす程度の小物か?いいや、違うね!セクハラに関しては大物の中の大物。やる時は徹底的にやる。捕まるくらいのリスクを犯すくらいのでかいセクハラをするつもりだったら白澤さんのパンツに顔を埋めに行くのが俺だ!だから今回は本当に悪気はなかったんだ!」


  ……ああ、一体何を言ってるんだ。このままだと数十分後には警察署だろうか。どうせ人生終わるなら顔を埋めたかったなぁ。


  「夏野君に弱い美少女の陽菜ちゃん、どう思う?」


  女子が陽菜に今回の意見を聴く。


  「うーん、ジャッジが難しい所ね」


  「寝食を共にしているスラちゃんはどうでしょうか?」


  「最近のなお君のトレンドは堂々とセクハラするスタイルです!事故を装ってセクハラするむっつりスケベスタイルは最近やってみません!」


  「うーん……だよねー。水鉄砲で水着とかすくらいやっちゃう男にしては今回はみみっちいよねー」


  ざわざわと議論が始まる。そしてしばらくすると、今回は悪意なしと結論が出た。


  「でもどっちにしても迷惑をかけたのは間違いないんだし、白澤さんの相談に真摯に聞くくらいしないと白澤さんが被害届出すだけでムショ暮らしよ?」


  


    

    

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