116話
さて、ミニスラちゃんと黒と一緒に風呂に入るのは初めてなんだがスラと同じような感じでいいのだろうか?
「"あらって~♡"」
ミニスラちゃんが曇ったガラスにそう文字を書いて主張してきている。仕方ない、いつものように洗ってやるか。
石鹸を泡立てミニスラちゃん1匹をつかんで、もにゅもにゅと洗いながら揉む。そしてシャワーで石鹸を洗い流してそのまま湯船に放り投げる。
ぽちゃん
洗われたミニスラちゃんは満足したのか大人しくプカプカと湯船に浮かんでまったりとしていた。
こいつらって砂まみれになろうが泥まみれになろうがプルプルと少し体を振るわせるだけで体を綺麗に出来るらしく、洗ってやる必要はおろか風呂に入れてやる必要も実はない。
単純にこうやって洗われて湯船に浸かるのが好きなだけ。つまり俺の労働力だけが無駄に消費されるだけなのだが何年もやってる内にすっかり慣れてしまった。
スラを飼い始めた時は湯船に浸からせたら溶けるじゃないかとか石鹸で洗っても大丈夫なのかと色々考えたものだ。人が考えてる間にスラは自ら湯船に向かってダッシュで飛び跳ねてぷかぷかと浮いていたが。
さて、今か今かとうずうずしながら待機してる残りのミニスラちゃんも洗ってやるか。
「あれ、黒は?」
見回してみたがさっきまでいた黒が見当たらない。出て行ったのか?
むにゅ
そういや座っている椅子がとても柔らかいな。買い替えたのか?いつも使ってる椅子はあそこにあるしー……。あっ……これもしかして~?
俺はどうやら椅子と間違えて黒の上に座ってたらしい。俺氏、機械女神のトップにちんぽと肛門を擦り付ける痛恨のミス。機械女神が人間に宣戦布告する大義名分として十分なくらいの事をしてしまった。
「……すまんな」
丁寧に黒を洗ってやる事にした。
◇◇◇◇◇
「風呂上がったぞ~」
俺はシャンプーを飲んだ哀れなペットの様子が気になり少し早めに風呂から上がって居間に戻る。ミニスラちゃんはスラと同じ長湯が大好きで黒は知らないが今もそのまま湯船に浸かっている。
「スラは何やってるんだ?」
スラがソファの上でうつぶせになってクッションに顔を埋めている。呼びかけても反応がない。いつも元気にしているからあまり見ない光景だ。
「ナオと一緒にお風呂について行ったと思ったらすぐに帰ってきて、ずっとこの調子でしょんぼりしてるのよ」
陽菜はバケツの中でぷかぷか浮かんでいる負傷中のミニスラちゃんの様子を見ながら淡々と喋る。
「お、おう。マジか」
これがしょんぼりしてる状態か。スラがスライムの時は体をへこませながらソファの上で大人しくしていたが、美少女状態だと本当にしょんぼりしているように見えて可愛そうな気分になる。
「まぁ、ナオが悪い訳じゃないんだから放っておけばいいじゃない?むしろ一緒に入ろうとする方が不健全よ。てかさ、前から思ってたんだけど何でナオってスラにはセクハラしないの?」
「そりゃあ、ペットだからだろ」
「え~?ペットって言っても見た目はー……あまり調子乗らせるのも嫌だから控えめに言うけどそこそこ可愛いじゃん?なのにペットだから手を出さないってのも変じゃない?」
「はっはっはっ。もし陽菜がペットとして犬を飼ってたとしよう。陽菜はその犬が可愛いからって獣姦するのか?」
「しないわよ……」
「つまりそう言うことだ。とりあえず空いてるから風呂入ってこいよ?」
「は、はぁ……。なーんか納得できないけどまぁいいか。じゃあお風呂いただきますー」
陽菜はバケツの中のミニスラちゃんつかんでティッシュで軽く拭いて風呂場に向かう。
「そのミニスラちゃんはもう大丈夫なのか?」
「2号の事?うん、元気になったからお風呂に連れて行くね」
「よくそれが2号だって分かったな?俺は全く見分けがつかんぞ」
「えっ!?あ~……慣れよ慣れ。後、お風呂覗いたら腹いせにナオのお宝コレクションが入ってるHDDをドリルで壊す」
うわーん!!それだけは止めてー!!っとでも言うと思ったか?
HDDが壊されるくらいで全裸姿が見れるんだったら安いものだ。所詮ネットで拾ったり金で集めたお宝コレクションなんぞ時間と金を掛けてることでまた集め直す事出来る低ランクコレクション。美少女JK陽菜の全裸姿に叶うはずもない。っといつもなら言うが今回はちょっとパス。
「悪いな、ちょっとやる事があるから今日は覗きに行けない。また今度な」
「ナオにとってセクハラよりも大切な事が……存在するの?」
驚愕の表情で見ながら陽菜は風呂場に行った。
さて、母さんは親父の仕事の手伝いで部屋にいるのだろう。居間には俺とソファの上でマグロになってるスラの1人と1匹だけになった。




