114話
「違うんです!なお君が思っている怖い迫撃砲じゃありません!ボクが言ってるのは移動用迫撃砲の事です!」
「あ?移動用?何それ?どこでも持ち運べる軽量でコンパクトな迫撃砲って事か?どっちにしてもダメだろ」
「移動用迫撃砲とはスライムが便利に移動する為に流用された迫撃砲の事です!黒様、ちょっと失礼しますね!って、寝てますので勝手に失礼します!」
断りを入れたと思ったら、スラがずぼっと黒の中に手を突っ込んでもぞもぞとし始めた。
何してるんだ?黒の中に手を入れている……。もしかして実はとってもエッチな事をしているのか!!ちょっと失礼しますね!って言うだけでそんなエッチな事していいのか!?なら俺もちょっと失礼(紳士風気取りって)って言いながらちん――
「紳士のように腰を前に突き出して、紳士のように腰を引くっ!!」
「ありましたありました。これです!なお君?」
「あっ、ああ」
せっかく頭の中で黒を美少女化して妄想していたのにキャンセルされてしまった。
スラが黒から手を引っこ抜くと黒塗りされた迫撃砲も出て来た。少し砲の太さが太いこと以外は地球にある迫撃砲と形も大きさも大体同じようだ。まぁ、実際に本物なんて見たこともないが。
機械ならほぼ何でもこうやって四次元ポケットにみたいに持ち運びできるのはスラで知っていたが、やっぱり兵器も持ち運びできるのか。スラが地球に来たときは故郷から何も持ってきてない手ぶらだったらしいが、黒の場合は持ち物検査する必要があるな。だって、寝ている間に勝手に使えるガバガバ四次元ポケットだし。
「これが黒様専用迫撃砲です!使い方は簡単で、行きたい所に目標をこうやって合わせて砲の中に黒様入れるだけです」
寝ているであろう黒をスラが勝手に砲の中に入れる。
ぽんっ!
すると軽い発射音が鳴り、黒が射出されて1メートル先に着弾した。
「あらかじめ行きたい所にセットして砲に入れば後は勝手に着くところが黒様がとても気に入っているのですが、距離が遠くなると発射音も大きくなるのです!」
だから夜間使用はダメって言ってたのか。
うーん、これなら別に言うほど危険じゃなから別にいいのだろうか?いや、使い方次第でとても危険なんだけどな。
だが、危なそうだからってアレはダメこれはダメって言うのも良くないしな。これくらいは許容範囲内にしておこうか?
「ふふーん、そしてなんとこの黒様専用迫撃砲の射程距離は地球の反対側まで行きま――うにゅ?」
迫撃砲からプスプスと言う異音と共に煙が上がっている。スラの慌てふためきようから見るにスラの想定外の事が起きているようだ。
「あーあ。やっちゃった」
陽菜はそんな慌てふためくスラとは対照的に落ち着いた感じでぼそっとつぶやいていた。スラは思考力が限界を超えたのか煙が出ている迫撃砲の近くで踊って歌っている。
おいおい、これやばいんじゃねーの!?まさか爆発とかしないよな!?そ、そうか!ただパニックになってるだけだと思っていたが、ひょっとしたら最悪の事態を防ぐためにスラは何とかしようとしてるのかもしれない!何で踊って歌ってるのかは知らないが、とりあえず俺も協力しておくか!
「スラ!俺に合わせろ!」
「は、はいっ!」
「必ずてにいれたいものは誰にもしられたくないー♪」
「ゆーきが愛だと、騒ぎたずに、その気になればいい!」
「あんたら何やってんの……?」
陽菜はどうやらこの緊急事態を理解していないらしい!
ぷしゅー!
「あっ」
迫撃砲は大きく煙をはいた後、ガラガラっと自壊して静かになった。どうやら危機は脱したらしい。やったぜ、俺たちの熱い思いが通じたようだ!
「ひっ、陽菜ちゃん……!どっ、どうしましょう!壊れてしまいました!!」
だが喜びににふけっている俺とは違いスラは涙目でがっくりしていた。がんばって積み木のように組み立てなおそうとしていたがまったくの無駄で形を整えてもすぐにバラバラになった。
「はぁ……目標地点を1メートル先とか無理して使うからよ」
「このままじゃ黒様にまた怒られてしまいます!陽菜ちゃん~!」
スラが泣きながら陽菜に抱き着いておっぱいに顔を埋めながら助けを求める。俺はケガもなく家にも損壊がないから別にいいが、スラは勝手に黒の持ち物を使って壊してしまったことに泣いていた。
いいなー。俺がああやって抱き着こうとしても拒否られるのに羨ましいなー。
「工具も予備パーツもないんだから直しようがないわよ。素直に黒に謝るしかないわね」
「いっ、いっしょに謝ってくれないでしょうか! こーれから一緒に、これから一緒に、殴りに行こうかー!」
「いや、殴りに行っちゃ駄目でしょ」
「そんなにパニックになるほど黒に怒られるのが嫌なのか?まぁ、俺が使わせたのも原因だから一緒に謝ってやるよ。ヤーヤーヤー!!」
「な、なお君!」
「ヤーヤーヤー!!」




