113話
「っという事なので火の始末と戸締りの確認はちゃんとする必要があるのです!」
スラのオリエンテーション?はまだ続いている。だが、あまりにも常識的で当たり前で初歩的な説明のせいか黒を抱えている陽菜ですらうとうとして気絶寸前。俺も途中まで聞いていたが今は話半分に聞きながら漫画を読んでいる最中だ。
『ではテレビの前の皆さんも一緒にやって見ましょう。そーれ、ワンツー、ワンツー』
うねうねうね
ミニスラちゃんたちはテレビを見ながら腰痛が改善するストレッチ体操をうねうね体を動かして実践していた。
お前ら軟体生物が腰痛に悩まされてなんかねーだろ。そもそも腰なんてねーだろ。なんかがんばってうねうねしてるけど絶対効果なんてねーだろ。
まぁ、暇だからちょっとからかってみるか。
「おいおい、そんなんじゃ腰痛は改善しねーぞ?もっとぐっと体を伸ばすんだ」
ミニスラちゃんの1体に指を当ててぐいぐい押してみる。
うねー
そして棒で伸ばされた生地のように必死に体を伸ばすミニスラちゃん。
『そしてそのまま片足を上げて下ろしてみましょう。さんはい、ワンツー、ワンツー』
さぁ、足なんてないスライムたちはこの後どうするんだ?
ぽんぽんぽん
今度は伸ばされた体をテレビに映っているお姉さんに合わせて上下に伸ばす。
「おいおい、そんなんじゃオリンピックには出れねーぞ?もっと大きく上に伸ばして!」
うにょーん!
「もっとだ!限界を超えないスライムなんてレベル1の勇者に倒される雑魚スライムで終わってしまうぞ!」
うにょーーーん!!
ぱぁん!
「あ……」
体を上に伸ばしすぎて限界を突破したせいなのか、まさかのミニスラちゃん爆発。いつものように弾け散り、そしてもぞもぞと再生していた。もしかしてからかいすぎたか?
『はい、これを毎日3分するだけですごく楽になります!ぜひ毎日の体操を欠かさずやってみましょう!』
腰痛改善ストレッチ体操が終わって次のコーナーになる。と、とりあえず謝っておこうか?適当な事言って弾け散らしてしまったし。
「"こーちありがとヽ(≧∀≦)ノ"」
「あ、ああ」
謝ろうと思ったらホワイトボードにそう書かれ、何故か感謝されてしまい戸惑う俺。
「"がんばってよーつうなおしましょう!あしたもがんばろうねー(。>ω<)"」
「"ねー!(≧Д≦)"」
ぴょんぴょん!
「えぇー……?」
元気に跳ねるミニスラちゃん。てか、がんばって腰痛治そうって何!?実は腰痛だったの!?腰あったの!?
そこらへん良く分からないがもし仮に本当にこいつらが腰痛持ちで真剣にストレッチ体操をしていたのだとしたら何か凄く罪悪感が沸いて出てくる。
そ、そうだよな。もう何百万、何億って年月を生きてるんだから腰がなくても腰痛くらいなるはな。あれ、何言ってるんだ俺?まぁいい、とにかく飼い主としてまじめにペットの健康管理をしようじゃないか!
「俺はまだ若いから腰痛の苦しさとか知らないんだけどさ、もし腰が痛い時があったら遠慮なく言えよ?何ができるって訳でもないけど出来るだけ協力してやるかさ?」
「"ミニスラちゃん、よーつうなんてないよ?(´・ω・`)"」
「でも、さっき腰痛治そうっとか書いてたろ?ほら、そこに残ってるじゃん」
「"ほう(*´・∀・)"」
いや、ほうじゃねーよ!?何なんだよこいつら!?じゃあなんで一生懸命にストレッチしてたんだよ!?腰痛治したかったんじゃねーのかよ!?
「っと言う事なので黒様が好きな『黒様専用迫撃砲』の夜間使用はご近所の皆様のご迷惑になりますのでお控えください!」
「って待てやぁ!迫撃砲なんて夜も昼も使うなよ!?撃っていいのは俺の股間の迫撃砲だけだからぁ!!」
「い、いきなりどうしたの!?」
ミニスラちゃんの相手をしている合間に、スラは腰痛問題なんて吹き飛ぶほどのとんでもない事を黒に言っていた。陽菜が俺の声に驚いて起きておどおどしていたが今はそんなの気にしてる場合じゃない!
「いいか?この地球で迫撃砲なんか使った瞬間、それはもう人類に宣戦布告するみたいなもんだからな?おいこら、絶対に使うなよ!?てか、どうかお願いします!!」
黒に土下座してお願いする。俺の土下座で人類が救われるなら安いものだ。後でふざけたオリエンテーリングしているスラには覚悟してもらおう。




