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112話

  ペットごときににメインもサブもないと思うが、スラは腕組をしたままドヤ顔で偉そうにペットとしての心得やら決まりなどを黒に説明する。相変わらず黒は動かず反応を見せないが、スラが喋り続けると言う事はちゃんと聞いているのだろう。

  

  「って、黒様!寝ないでください~!ボクの分のお菓子あげますので~!」


  寝てたらしい。


  スラは床に頭をこすり付けながら丁寧にせんべいを黒の前に差し出す。黒はもぞもぞ動いてせんべいをくわえてゆっくりもぐもぐし始めた。

  つい数分前、メインペットだと威張っていた奴がする行動じゃねーぞ!完全に序列が黒の方が上じゃねーか!


  「"……うまうま"」


  「おいしいですか!大量生産にも関わらずまるで職人が作ったような醤油砂糖の香ばしさが――うにゅ?」

  

  「"……ん"」

  

  黒はくわえていたせんべいを半分に割って、その半分をふよふよと浮かしてスラに手の上に乗せた。するとスラは目を輝けさせながらももらったせんべいの半分を頬張った。

 

  「もぐもぐ……美味しゅうございます!美味しゅうございます!」


  優しさをもらった感動のせいか涙目になってもぐもぐするスラ。


  「"……よかよか"」


  そしていつも通りの黒。

  あっもうこれダメだは。数万年か数億年か知らないが長い時間を生きてきて築き上げた序列はそうそう簡単に覆るもんじゃねーわ。もう完全に下っ端根性が染み付いてるじゃねーか。


  「おいそこの青いサブペット、俺の分のせんべいも持ってきてくれ」


  「持ってきます!」


  ビシッと敬礼した後、とことこと台所へ。今日から黒が俺のメインペットかぁ。よろしくな!


  「よっと」


  後片付けを済んだ陽菜がサブペットと入れ替わるように居間に戻ってきて、黒をぬいぐるみのように抱きかかえる。

  そしてぽよんと黒の上に陽菜の大きなおっぱいが乗った。ふむ、やはりやわらかいも同士が反発し合うその動きはなんと素晴らしい。サブペットが美少女化してから久しく見てなかったそのぽよんぽよんを見ることができて俺にっこり、もっこり。


  「……どこ見てんの?」


  「物理の勉強を頭の中でしていただけだ。どこも見ちゃいない」


  そう言いつつ目線は柔らかいぽよんぽよんから逸らさない。ここで目を逸らすとおっぱいを見ていた、つまりエロい目で陽菜を見ていたこと認めたことになってしまうかだ。俺は負けないぞ。むしろ食後のコーヒーを嗜みながらガン見してやる。


  「へ~、どっちかって言うと~保険体育じゃない~?いやらしいな~」


  「か、母さん!?」


  母さんがニヤニヤしながら喋りかけてくる。しまった!おっぱいに視野が奪われていたせいで母さんがいた事に気づかなかった! 

  おいおい、どうするんだよ!?母さんには成績優秀で品行方正の男の子と言うイメージで通っているはずなのにそのイメージが崩れてしまいそうじゃないか!他の人間に俺の事をどう思われようが知ったことではないが、母さんには家族生活を円滑に送る為に良いイメージを持っていてほしい!

  そ、そうだ!その健全な男の子というイメージを利用するんだ!無知系少年でこの場を貫き通す!母性に訴えるんだ!!


  「お、おっ、おっぱいってあんなに柔らかいんだね。ぼく知らなかったよー。でも、ぼく良い子だからあまりじろじろ見ないようにするねー(棒)」


  「……すぅー。それはないと思う。私の中のナオのドン引きランキングが更新されるレベルよ」


  「あはぁん!?故郷でスラのドヤ顔あざといポーズを真似して『私の事も信じてもいいのよ?』とかやってた奴の分際で何がドン引きだ!?男がおっぱいを見て何が悪いんだぁ!?この世界はなぁ、おっぱいを見せるだけで男から金を取れるくらいおっぱいは凄いんだよ!!タダでおっぱい見せてくれるんだったらガン見して何が悪い!?おっぱいisワールドオオォッ!!」


  「ええぇっ!?べ、別に見せ付けるつもりでやったつもりじゃ――」


  「逆切れは良くないよ~」


  「あ、はい。すいませんでした」


  母さんに注意されて俺しょんぼり。正座で座りなおす。

  ふっ……だが、俺のイメージは保たれたと思う。きっと成功だ。


  ……あれ、何が成功なんだっけ?


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