108話
朝食を食べ終え今日も俺とスラと陽菜、2人と1匹で登校する。
「君と手を繋いで、踊りたい~♪ふふふーんふふふーん(うろ覚え)」
「随分機嫌が良いみたいだけどどうしたの?てっきり学校に行くのが鬱で登校拒否すると思ってたのに」
るんるん気分で鼻歌交じりの歌を歌っていると陽菜が不思議そうに聞いてくる。
「そりゃあ友達と何日かぶりに会うんだから気分上々ハイテンションだろ!YO!YO!YO!で、俺が登校拒否しないか監視する為に心配になって覗いてたのか?
「そっちは大して気にしてないわよ。問題は黒の方」
「黒?あんな大人しい奴のどこが問題なんだ?」
陽菜は小さくため息をつく。俺のハイテンションとは対照的に陽菜はローテンションのようだ。
「いい?黒をペットにするってことは実質ナオが機械女神のトップになるってことになるのよ?それが心配で心配で……」
「安心してください!なお君はなお君です!決して権力を使って悪いような事はしないとスラちゃん断言します!なお君が権力を使ってやる事はえっちな事だけです!」
「よく分かってるじゃないか。ご褒美として今日のスラのおやつに色を付けておいてやろう」
「えへへ~ありがとうございます~!でも、おやつに絵の具は付けなくてもいいですよ?」
よしよし、今日も馬鹿可愛い奴だ。頭でも撫でてやろう――おや?
頭を撫でてやろうとしたら何故かスラに手を握られていた。すごくスキンシップしてくる奴だが外で手まで握ってくるのは珍しい。
「何で手握ってんだ?」
「なお君がさっきボクと手を繋ぎたいって言ったからです!」
あん?俺そんな事言ってねぇぞ?
きっとスラの頭の妄想が現実にあった出来事だと勘違いしてしまったんだろう。たまにスラってそういうところあるからな~。困った奴だ。
「やだ、クラスのみんなに噂になっちゃうから離して☆」
ぶんぶんぶん!
「うにゅ!?」
握られた手を強引に振って引きはがす。これでよし。
まぁ、本当に手を握ったところを誰かに見られて噂になってしまった所で別に困ることも恥ずかしくなることもないけどな。俺自身は他人にどう思われようが気にもしない。
「……はぁー。そもそもナオはどうやってあの黒をあんなに手懐ける事が出来たの?」
「お菓子やってエロに対する情熱を語ってパンツプレゼントしただけだぞ?てか、スライムなんてみんな人懐っこいんだからあんなもんだろ」
「普段はぼけーっとしながら日向ぼっこばっかしてる黒だけど、黒は一番最初に造られた機械女神で他の機械女神と人間をまとめ上げて神々と戦ったすごい指導者なのよ。だからそう安々と誰かのペットになる事なんて――」
「陽菜ちゃん、陽菜ちゃん」
スラがぐいぐいと陽菜の袖を引っ張り、そして無言で陽菜を見つめた。
「と、とにかくスラなんかと違って黒のスペックは軽自動車とF1マシンくらい違うからスラの時と同じようにアクセル全開にしたら大事故になるわよ。だからしっかり注意して取り扱う事」
「うーす」
んーそうは言っても、スラですらやろうと思えば世界征服ができるくらいのスペックはあるからなぁ。つまりあのスラでも十分オーバースペックなんだから今更注意しろと言われてもどう注意すれば良いのか分からんねぇ。
「確かにスピード勝負では軽自動車ではF1マシンには勝てませんが軽自動車はF1マシンよりも遥かに安く買えて気軽に乗れます!だからスラちゃんも負けていません!」
スラはぴょんぴょんと小さくジャンプしながら謎の張り合いをしていた。
「その通りだ。それに最近は軽自動車の下取り価格も高いしな」
「……んー?…………うにゅ!?」
しばらく俺の言った意味を考えた後、どうやら理解したらしくスラはぷるぷる震えていた。




