11
2対1で戦う場合、相手を挟むようにして戦うのが定石だ。
そこはフロも分かっている様子で、俺に合わせて上手く動いてくれていた。
俺の予想に反してフロは速さを生かし老婆を翻弄した。
老婆自身も相当手こずっている様子で今の所は俺達が優勢だった。
レベル差がとても大きいがこれならなんとかなるかもしれない・・・そう思い俺は初期武器のひのき棒をぐっと握り締めた。
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・これが若さか」
「・・・」
フロは武器を下ろし地面に腰を下ろして休憩していた。
老婆と戦闘が始まっておそよ30秒だろうか・・・フロのスタミナは尽きていたのだ。
俺は戦っていた時に浮かんでいた疑問をフロにぶつける。
「あ、ごめんごめん、婆さんちょっとタンマ!・・・てかさ~あのさ~?」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・何かね?」
「相手の攻撃を全部回避して戦うのだったらぁ、そのすごく重そうなゴテゴテした鎧脱ごうよ!?明らかに戦闘スタイルと合ってないじゃん!?」
「・・・」
「その重装備ってタンク装備だよな?だったらいちいちアクロバットに回避してないで防御もしようよ!なんでそんな鎧着てるんだよ!?」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・だって、もし軽装で攻撃が当たったら痛いじゃん?」
「てめぇ、その鎧脱げやおらぁ!!こっちは初期装備の布の服で戦ってるんだよ!!」
無理矢理脱がせてみる。
こんな重い装備であんなに速く動けるんだったら軽装にしたらもっと速いだろう。
「・・・勝利の栄光を君に!」
「ぐふっ!?」
突然フロに思いっきり突き飛ばされた。
何かのスキルだろうか、俺の体は数メートル近く吹き飛んだ。
ドキューン!
吹き飛ばされた直後、体のすぐ傍をビームが通り光で視界がとれなくなった。
ピンク色のビーム・・・老婆の攻撃か!?
「フロっ!?」
俺は体を起こしてフロの方を見る。
だが・・・ビームで焼き尽くされた光景だけでフロの姿は確認できなかった。
「今のは卑怯だったかい?(暗黒微笑)」
「・・・いや」
俺は老婆の方を振り返り構えを取る。
「多分、あいつはもう使い物にならなかっただろうし」
「このぉっ!」
「あらよっと!!」
ガキーン!!
ひのきの棒とピンク色に輝く杖がかち合う。
老婆のビームライフルは威力は高く正確に相手をロックオンするもののチャージに時間がかかる。
そのチャージを妨害するため、常に絶え間なく攻撃を仕掛ける。
「ばぁさん!そろそろ帰れるところ(あの世)に帰ったらどうだ!?嬉しいだろ!?」
「負け惜しみをっ!」
老婆は接近攻撃として杖を剣の代わりとして使う。
ブォン!
上から振り下ろされた杖を俺は紙一重で避ける。
スタミナを温存するためにできるだけ少なくギリギリで避ける。
ブンッ!
俺は老婆の懐に踏み込んで老婆の頭目掛けて思いっきりひのきの棒を振り下ろす。
もう相手が老婆だからと言って躊躇してられない・・・少しでも気を抜いたら時が見えてしまう!
こんっ
「やったか・・・!?」
俺の攻撃は見事クリーンヒットする。
思いっきり振り下ろした攻撃だ・・・大ダメー・・・なん・・・だとっ!?
「ボクが一番うまく体を使えるんだ!」
「いや・・・そりゃそうだろ。お前の体なんだから・・・」
老婆のHPケージを見る。
だが今の攻撃で1%も削れていなかった。
「くそっ・・・」
いくらクリーンヒットしてもレベル差に装備差がここまで大きいとダメージがまともに通らない。
ガンダリウム合金にゴム鉄砲を飛ばしているようなもんだ。




