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いつも現実世界で戦っているんだから仮想現実くらい穏やかに過ごしたい。
だから機械女神の力を使わなきゃ俺の生きている間には発明されないであろう仮想現実のコンセプトは「平和とエロ」でいきたいと思う。
「・・・まぁ、骨組みはこんなもんか」
ゲーム製作を開始して12時間ほどだろうか。
現実世界ではそろそろ朝食の時間だが俺は徹夜でゲームを作っていた。
後12時間以内に作り終わらなければいけないから長い休憩はとれないだろう。
「ん~・・・」
「なんだ?」
NPC陽菜が俺のゲーム製作の補助として使っているタブレットを覗き込む。
「なんだかナオが作るゲームにしては・・・普通ね」
「仕方ねぇじゃん。エロゲーは作れないんだし」
・・・よっしゃ!
NPC陽菜の目のザルだな!
他の奴にばれない様、表向きは剣と魔法の王道RPGを作っているが実は色々とエロ仕掛けを作っている。
例えば、とあるポイントに行って、門番に賄賂を渡すと露天風呂の女湯を覗ける所に案内されるようになっている。
しかもスラにばれないようかなり複雑なフラグを立てないと辿り着けないようにしているから精査されない限り大丈夫だろう。
・・・まぁ、ばれたらその時は仕方がない。
「うんうん、普通でいいのよ。普通で」
「・・・」
スラと陽菜が仮眠している今の内にもっと大胆なセクハラギミックを組み込みたいのだがNPC陽菜がさっきから俺の周りをうろちょろとしている。
潜入ゲームの無能兵みたいにザルだったら目を盗んで色々できるのだがNPC陽菜はさっきからかなり絡んでくる。
「主人公にヒントを与える酒場の店長役として一瀬先生を配置しようと思うんだが陽菜はどう思う?」
「いいんじゃない?・・・で、陽菜って何?」
「いやぁ、NPC陽菜だって生きてるのにNPCって呼ぶのは失礼かな~っと思ってな」
「陽菜も十分失礼だと思う・・・」
「だってその格好エロいし」
「ナオが無理矢理着せたんでしょ!」
そう言うと陽菜は、お尻の所の少しずれたスク水の箇所を指でくいっと元に戻す。
嗚呼、触りてぇなぁ・・・
ぴょんぴょんぴょん!
「で、NPCスライム状態スラはどんな役割を与えるの?」
「NPCスライム状態スラかぁ・・・」
NPCキャラは俺が呼び出さないと出てこないはずなんだが、さっきからちょこまかと近くで跳ねてるNPCスライム状態スラは気づいたら存在していた。
深夜のぼ~っとしてる時に出してしまったのだろうか。
「う~ん、とりあえず野に放っておこう。モンスター役としてがんばってこい」
ぴょんぴょんぴょん!
NPCスライム状態スラはやる気満々で森の方に跳ねて消えていった。
「デバック用として赤神先生を教会辺りに設置っと・・・」
「デバック用?」
「バグやおかしいところがないか調べるためのもんだ。赤神先生に話しかけるとゲーム初期状態にリセットするように役目を置いておく」
タブレットで赤神先生のアバターを教会にスワイプして設置する。
「よし・・・後は実際にテストプレイして決めていくか」
実際のゲーム製作だったらこんな行き当たりばったりの製作なんてしたらあっという間にプロジェクトは炎上してしまう。
それに比べて頭に適当にイメージするだけでプログラミングも絵も音楽も何もかも完璧に作ってくれるんだから便利な物だ。
「一応、ゲームとしての形は整ったんでしょ?ご飯でも食べてきたらどう?」
「ああ、そうだな。・・・ああ、そうだ。近くに豪華な露天風呂施設を作ったから行ってきたらどうだ?」
「・・・もうそんな古典的な手法じゃ私にセクハラできないわよ」
陽菜はおっぱいを手で隠す。
スク水着てるんだから隠す必要もないと思うが、おそらく咄嗟にやった防衛だろう。
「おいおい、ここじゃ覗きやセクハラなんてできないって分かってるだろ?」
「ま・・・まぁ、そうだけど・・・」
「必要ないんだったら消して、そのスペースを別の施設にしようと思うんだが?」
「・・・な~んか、誘導されてるような気がするんだけどな~・・・」
そう、スラと陽菜が戻ってくる前に陽菜をさっさとどっかに飛ばしたいのだ。
そうすれば俺の近くに監視がいなくなる。
陽菜が監視役を担ってここにいるかは知らないが、少なくともここに居られたら俺の計画が遂行できないのだ。
「まぁ、いいや。じゃあ朝風呂行ってくるね」
「いてら~(ガッツポーズ)」
陽菜は軽くスキップしながら露天風呂に向かった。
きっと楽しみなんだろう。
俺はその背中を笑顔で・・・ウェ~イと見送った。
よぉし・・・計画通り!!




