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10話 陽菜ちゃんの体操服

 「え~と、ここの式はこうやって解けばいいんだよね?」


 「うい」


 「夏野君、私も教えて欲しいのだけど」


 「うい」


 「じゃあ後で私も国語で分からない所があるから教えてもらってもいいですか?」


 「うい」


 「……ナオ、あんた人の話真面目に聞いてる?」


 「うい」


 「……任天堂が2006年発売した家庭用ゲーム機は?」


 「うぃー」


 学校で1番の美少女である陽菜と陽菜の友達2人の計3人が俺の部屋に来て来年の高校受験に向けた受験勉強対策をしに来たらしい。


 あぁーめんどくせぇ。ゲームしたいよー漫画読みたいよー。


 美少女3人がいきなり男の部屋に入ってきて勉強会を始めるこんなシチュエーション、漫画やアニメくらいのイベントだろうしほんどの男にとってこのイベントは嬉しいはずだ。

 だけど別にこの3人は俺に気があって家に来たわけじゃないんだよなぁ。

 

 「ナオは頭も良くて教えることも上手なんだから少しくらい協力して欲しいなー」


 陽菜がそう言いながら参考書を俺の目の前に持ってきてツンツンと優しく俺の頬を指で突いて俺に教えるよう催促する。


 「そう、このビッチどもの目的は今までテストや模試を全て満点とってきた俺の頭脳だ。俺に好意があって来た訳じゃない。つまりあれだ『おじさんに興味はないけどおじさんのお金に興味があるの~』みたいな感じ」 


 「あの……」


 「そんなのやる気出なくて当然だわ~」


 「声に出てるけど?」


 「うい」

 

 めんどくせぇ、めんどくせぇ。 


 かちゃかちゃ


 手が寂しかったからスラでも抱っこしようと思ったが、どうやらスラは俺が買ってきたゲームに夢中の様子。

 スライムを倒して勇者のレベルが上がるたびに嬉しそうに少しぷるぷるしていた。

 お前は倒される方だっちゅーに。


 そうそう、堂々とスラはゲームをしているが友達2人も既にスラのことを知っているため隠す必要はない。

 1年前スラが教室に侵入して陽菜のカバンに身を隠していたのだがなんやかんやでバレたらしい。

 その時はスラを陽菜に任せっきりにしていたから詳しい事は知らない。


 「へぇー……協力してくれないんだったら私にも考えがあるわよ?」


 「あん?」


 「それはー……えーっと、ナオが私の体操服勝手に持って帰ったことみんなにバラす!」


 「ええっ!?」


 陽菜は何か自信満々そうにしながら言った。

 

 嘘だろ!?

 犯人俺だってバレてた!証拠は残していないはず……!!

 どうしてバレた!?


 「……」

 

 「……はは」

 

 うわああああああ!!

 てかドン引きしてるよ!?陽菜の連れ2人俺の顔見てドン引きしてるよ!?

 『みんなにバラす!』じゃねぇよ!普通に聞かれてるからぁ!!

 

 ただの脅しに使ったつもりだろうが、事情の知らない2人の前でそれ言ったら脅しどころかただの攻撃じゃないか!

 どうしよう、どうしよう!

 

 「っという嘘をばら撒いたら困るんじゃない?日頃の行いが悪いから嘘でも本当になっちゃうわよ」

 

 陽菜が慌てながら咄嗟のフォローをする。

 

 「そ、そうだよねー。夏野君って少し変わってるから変な噂も本当になっちゃうよー」

 「うんうん」


 ……セーフ。

 この様子だとクラスに広まることはなさそうだ。

 本当に陽菜さん簡便してくれよー。


 「ん?」


 ぴょんぴょん


 スラが何を思ったのかふとゲームを中断しどこかに行った。

 何しにいったんだ?うんこか?スラがうんこするかどうかは知らんが。


 「じゃあさ勉強会の続きがんばろうね」


 「そうだねー」


 仕方ない。

 しばらくは真面目に勉強を教えるとするか。

 本当にバラされたりすることはないだろうと思うがここはしばらく大人しく従っておこう。

 

 「あーさっきの、式の回答の導き方だが――」


 ガチャ


 スラが何かを袋に入れて持ってきたようだ。


 カキカキ

 

 「"返却(゜∀゜)"」


 備え付けのホワイトボードに文字を書く。


 「返却?スラに何か貸したっけ?」


 スラは袋から取り出した何かを首を傾げてる陽菜に渡した。

 ……それは――陽菜の体操服。


 「……」

 

 陽菜は自然にそっと体操服を自分のかばんにしまうが、陽菜のお友達はその光景をガン見している。

 何考えているかは分かる。さっきの体操服の話って本当の事だったんじゃね?とか考えているのだろう。


 おいおい、スラに悪気はないんだろうがタイミング最悪だなぁオイ!

 どうするんだよ、どうするんだよこれ。


 「……えーっと……そのー」


 陽菜が平然と装いつつ冷や汗をかきながらきょどっている。

 頼むぞ陽菜様!ここで陽菜様が何とかしないと俺終わっちゃうよ!終わっちゃうよ!?


 「実は~……あー……スラに貸してたんだよね。スラが着てみたいって言うからさ。はは……」

 

 それ無理あるんじゃね!?スラが着たいって何だよ!?どうやって着るんだよ!?


 「そっかー……そうなんだ」


 気を使ってるのかそれ以上、深いことは聞いてこなかった。

 おお、いい子たちじゃないか!

 疑念は持たれるかもしれないが俺はとりあえず助かる!

 少なくとも学校中に噂を流されて肩身が狭くなる思いをする必要はなくなる!


 かきかき

 何かを察したスラがまたホワイトボードに何か書く。


 「"スラちゃんじゃないよ?体操服着たのはなお君!"」


 空気読めやスラああああああああ!!

 今日の晩飯覚えて置けよおおおおおおおおおお!!!


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