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「もう動かない・・・何があってもこの領域から出ない」
晩御飯を食べ終え再びベッドでゴロゴロする。
今日はずっと、スラ以外のペットの姿が見えなかったがどうやら仕事があるらしく一日中外出だそうだ。
あいつらに仕事と言う概念があるのが驚きだ。
そういえば、あのまま帰宅してしまったが、老人は大丈夫だろうか。
俺は何もせず帰って来てしまって良かったのだろうか・・・そう自身に問いかける。
「まっ、いっか!もう十分長生きしただろう!」
あんな金持ちっぽい老人なんて散々この世で良い思いしてきただろうし、さぞかし羨ましい美少女ハーレム人生を歩んできたのだろう!
むしろさっさとくたばるがいい。
そして若い世代にその席を譲るがいい。
「なおくん!どうか早まらないでください!そんなにさんぽが嫌だったのですか!?」
「・・・ん?」
突然スラが俺の体にしがみ付いてきて涙目になっていた。
スラはいきなり何を言ってるんだ?
「なら、さんぽはこれから週1回だけでいいですから!もう一度、ゆっくり考え直してください!」
「えっ?・・・ああ、うん。じゃあそれで」
「考え直してくれましたか!悩み事があれば一人で考え込まずいつでもボクに相談してください!」
スラが納得したのか、にぱーっといつもの笑顔に戻っていた。
ん~・・・たまに話が噛み合わない時があるんだよなぁ。
やれやれ、困った生き物だ。
さて、さっきの漫画の続きを読むか・・・
ほっぺですりすりしてくるスラを手で軽く払いのけて漫画の続きを読む。
ギョギョエエエエエエエ!!ギョギョエエエエエエエ!!
「なんだ、なんだ!?」
突然、大音量の化物の悲鳴のような音が部屋に響き渡る。
俺は驚きのあまり状況を理解する前に床に転がって頭の上に漫画を載せ、姿勢を低くして伏せた。
ギョギョギョギョエエエエエエエ!!
頭をフル回転させて冷静を保ちつつ何が起きたのか考える。
この不快な音はつい最近聞いたことがあるぞ・・・
「よいしょっと」
スラが部屋の隅に置いてあったガラクタに手を触れると音が鳴り止んだ。
・・・思い出した。
あれはメールを使って故郷と送受信する装置。
確かあの悲鳴音は当時スラが住んでた時の故郷で流行っていた効果音とか言ってたと思う。
ただ、前の時はここまでびっくりするほどうるさくはなかったはずだ。
「マナーモードにしといてくれって言っただろう?前より酷くなってんじゃねぇか」
「うにゅ~・・・すいません。多分、すぐに読まないといけない緊急のメールが来たんだと思います!」
「緊急?どうせあれだろ?今日の晩御飯の味噌汁はかつおダシがよく出ていておいしかった!・・・とかそんなレベルのメールだろう?」
故郷に行ったおかげで機械女神という神がどんな存在かってのは良く分かった。
どうせ大した事ない内容か、くだらない内容だろう。
「お隣さんに迷惑だからちゃんと音量切っといてくれよ」
漫画読もう・・・
ベッドに戻ろうとした時にスラの方を見ると、いつもとは違う真面目な雰囲気を出しながらスラちゃん専用ノートPCを操作していた。
あー・・・俺もパソコンでエロサイト見るときもあんな感じだと思う。
なんかこう、キリッっとしましまうよな。
分かるよスラ。




