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アナザーストーリー  作者: りょーじぃ
第一章 国家公務員になる
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第6話 旧友との再会

2016/1/17 文構成を修正実施

 ここは省建屋の2階の研究室エリア。

 このフロアは研究室が多くあり、生物のサンプルからDNAデータの収集などを行っている。


 以前、第2生物との戦いの時は討伐後に生物は跡形もなくなくなってしまったが、稀に生物の破片等が残る場合があり、そのサンプルから生物の生態を解析し今後の対策に当てる。

 今回、第一部隊が東北へ出向しているのも、解析する為の貴重な生物のサンプルがほとんど残っているとの事情報だった為である。


 2階のフロアは広いが、エレベータから廊下を挟んで研究室の入り口までの広さはほとんどなく入り口は1ヶ所なのは、機密データもあるから常に入出管理が出来る目的だそうだ。

 先程もらったIDカードをかざすと扉の施行が解除され、上村は自身が持つカードは大体の部屋には入れる事を理解する。


 開錠されたドアノブを回し室内へ入ると室内はさらに細かく仕切られていて、中心部に大きな部屋は応接的な部屋になっており、それを取り囲むようにいくつかの小部屋が個々の研究室になっている。

 

 小部屋の入り口に貼ってあるネームプレートで部屋の持ち主の名前が分かり、肩書きのある者には手前に肩書きが書いてあるので、上村はそれを確認しながら一番偉そうな位の人から挨拶すれば良いかと考える。


「えーと・・・、どれが一番偉いのかな?」


 上村はプレートを睨みながらボソボソと口出しながら探す。

 研究室長、これか?

 菅野 智弘室長 多分これが一番偉そうだ。


 白衣を着て白髪の髪が爆発したような髪型の博士が出てくるのかな、それとも片目眼帯のシュールな学者?上村はそんな事を考えながら扉をノックすると「どうぞ」と帰って来たその声は思ったより声は若く、上村がイメージしていた老人博士とは違い上村より上か同じくらいの年齢に聞こえる。


 上村が想像する若くして研究室長となると、気難しい人や物理的な電気系の人とは話が合わないと考えると、いきなり「生物学的に見なさい!」とか言われたりするのかなとか、実際には言われた事なかったが嫌な予感を想像させる。


 扉を開けると研究室とは思えない光景が目に入る。

 壁にはアイドルのポスター、BGMはそのアイドルユニットの歌が流れる異様な雰囲気の部屋の奥に室長らしき人物がいるが、その姿は白衣ではなく、ピンクでお揃いの鉢巻とはっぴを着ている少し古臭いアイドル追っかけの衣装をしていて、上村は部屋間違えたか?と一瞬焦ったが、再度確認したプレートには確かに室長と書いてあったから間違いない。


 我に返た上村は、とりあえず挨拶からだと思い「失礼します。本日より第二部隊に配属になりました上村と申します」と、丁寧に挨拶したところ「どーも、元気?」と簡素な挨拶が返ってくる。

 えっ、誰ですか?、と顔を良く見ると大人になっているので多少の違いはあったが昔見た事のある笑顔がそこにあり、上村はその人間が誰なのが即座に理解し驚きの表情をし叫ぶように名前を呼んだ。


「博士!?」

「そうだよ、久しぶり。中学校以来だね元気してた?」


 目がテンになるとはこの事だろうと上村は感じる。

 その時、上村は数秒意識が飛んだ感じがしたが、すぐに我に返る目の前の人物を見つめる。

 ほっそりとした体にアン○ンマンのようなやさしい笑顔。

 懐かしい顔だった。


 彼は中学までの同級生で通称「博士」。

 親の影響もあってアマチュア無線やソフトウェアなど、当時それほど普及していない時代にパソコンをいじり、アマチュア無線までしていた根っからの電気屋で、それで周りからは博士と呼ばれていた。


「ここって、生物研究所だよね?なんでそこに博士が?」

「大学で生物環境学を学んでからこちらの道に入ったんだ。無論、まだ電気もパソコンも弄っているけど」

「で、このポスターも」

「相変わらずでしょ? 今じゃ時代がやっと僕に追いついた感じがする、ね」


 彼は当時から熱狂的なアイドルオタクだが、当時はアイドルやグラビア雑誌は男子目線ではエロ本の部類に属されていて、彼は後ろめたい気持ちで収集していた事を上村は思い出す。

 中学を卒業してから疎遠になってしまっていたが、実家にいたのは知っていたので、たまに仕事の事で突然相談しに行ったりはしていたが、ここ数年はまったく会っていなかったのでまさかこんな所に居るなんて、上村は突然の再開に思ってもいなかった驚きを見せる。


 菅野は大学の研究所から直接召集をかけられ、電気・機械が出来るので研究所立ち上げからのメンバーだったと話し、上村の事は事前に知らされていた事を話すと、なぜこの年齢で室長と言う肩書を持っていたのかを理解する。


「なるほど、だから室長なのね。」

「本当だよ、僕は身分不相応だから断ったんだけど、研究所のコアな部分から関わっているから僕主体でないと研究所事態が稼動しないって言われて、ね。」

「まー、こんな所で会えると思わなかったよ。」

「事情は大体聞いてたから、名前と戦った場所で大体わかったよ。」


 菅野の会話を聞く度に感じる懐かしい声は昔と変わらなず、その声も小学生の時は頼りない細い声だと思っていたが、大人になって貫禄が出ると落ち着ける穏やかな声だと感じる。


「でもこのアイドルはどうにかならんかなー。」

「いやー、これは止められないね。」

「職場に貼るなんて!公私混同だ!」

「イヤーお堅い、ね。」


 その後は中学生的なおバカな会話が続き、そこから菅野も共に挨拶回りをしてくれたが、この省内で菅野はかなりの地位らしく、年上そうな外観やお偉そうな人からも挨拶をされ、上村はその横を腰巾着のように付いて行き自己紹介と挨拶を済ませながら、研究室長という強力な盾を手に入れた上村は一気に最上階手前の階まで進んだ。

 ・・・まぁ、途中は倉庫とかでしたけど。


 さすがに大臣とは会う事は出来なかったが、菅野のお陰で防衛省と兼務となる政務官の方とは挨拶は大方済ます事は出来、博士も「多分大臣にはあまり用事はないし、殆ど居ないよ」と話す。

 確かに国の意見を聞いてから動くってかなりレスポンス悪いしね。


 一通りの挨拶も終わり時間もちょうどお昼を過ぎた所だったので、2人で昼食を食べる事にした。


 菅野自身は結構な仕事がまだ残っていそうなのに上村に気を使ってくれたようで、挨拶周りをしている最中も結構な頻度で足止めをくらっている事が度々あったが「ほとんど雑用係だよ」と本人は言っていたが、それを簡単にこなしてしまうからこそ若くして室長になる器の人間だったんだなと上村は思い知らされた。


 二人は近くのレストランで食事を取り、菅野が案内したレストランの店内は、レストランと言うより喫茶店的な落ち着いた雰囲気で、菅野は仕事が立て込んでいる時にここで書類の確認をしたりするらしいが、落ち着いて出来ていいのだとの事で本人のお気に入りのお店だそうで、小洒落た喫茶店で二人は食事をしながら上村は菅野に今回の生物に関しての進捗状況を確認する。


「生物の生態、というかどういった物質で構成されているのか理解出来たの?」

「うーん、まだ真相にはたどり着いていないのだけど、どうやら自然界では構成されない物質もあるんだ」

「と言うことは、化学物質?」


 菅野は話す話に、生物が核とかを食べて当然変異したって昔聞いたことのある?ような現象なのかと上村は感じるが、その事に関しては相違があると菅野は話を続ける。


「でも、そうでもないんだ。ただ自然界では構成されるはずの無い物質が一部組み込まれていると言うことは、誰かが意図的に作り出した可能性があるんだよ、ね」


 博士が仮設として考えているのは、昔に誰かが行っていた生物的実験の跡が何かの要因によって自然界の物質と融合して謎の生物を作り出していると言う可能性で、謎の生物の死体が消えてしまうのは、どちらかの物質がダメージを受けることによって肉体を維持できない為だと話し、だから環境に関係なく生物の死体は残ったり残らなかったりしていると菅野が考える仮説を話す。


「だから今回の東北の生物の解析がうまくいけば、生物への内部的ダメージを与えられるヒントが得られるかもしれないん、だ。これが見つかれば、生物の発生を未然に防ぐことが出来るかもしれない。まぁ、まだすべては仮設に過ぎないんだけど、ね・・・」


 今回の東北で発見された死体は、今の所ほぼ完璧な状態で残っているので、そのサンプルを使って実験を行えば有効な攻撃手段が見つかるかもしれないと話す博士の表情は少し寂しげで複雑な顔で苦笑し、上村は成果がでないのは研究者としては辛い所だと受け取る。


「いまの発生タイミングなら、うちの部隊で全然事は足りるし大丈夫だって。」

「まぁ、あの大島さんと宮田ミヤダさんが居れば、ね。今は大丈夫だと思うよ。」

「今は?」

「うん、これもまだ確立した結果じゃないんだけど、生物は戦闘時に受けた傷はすぐに回復する能力があるけど、そのあとに耐性が付く可能性があるんだ。」

「耐性って、それじゃ一度受けた傷はそれ以上の攻撃でなければ効かなくなるって事?」

「うん、採取したサンプルにストレスを与えたあと一日放置したんだ。すると翌日細胞が活性化してサンプルの一部から再生を始めて、そのサンプルはすぐに大島さんに処理をお願いして事無きを得たけど、大島さんが言うには普通のプラスティック系の付着攻撃が効かなかったんで、宮田ミヤダさんの特殊ナイフで切り刻んで消滅させたんだって話だ。」

「つまり、プラスティック付着による腐食が起きない。」

「うん、それは多分耐性が付いたからじゃないかと思うん、だ。」

「じゃあ、先日自衛隊が全滅した時の第2生物達は。」

「恐らく前よりも強化されている可能性がある、ね。」


 生物の防御反応なのかは不明だが、生物は異常な回復力を持ち、しかも外部からの攻撃を受けると耐性がつき、それ以上の攻撃を繰り出さなければならないと博士が話すと、先日起きた第2生物襲来時に生き残った生物達が次に現れた際はさらに強力になっていると上村が話すと、薄気味悪そうに口元を開き話を続ける。


「でも、上村がいれば大丈夫さ、接近戦ならどこでも狙えるし、ね。」

「話を聞く限りだと大島隊長のほうが凄そうだけどね。」

「うーん、ちょっと取っ付き難い人だけど、ね。」


 薄笑いのまま博士は、接近戦に強い上村であれば問題無いと話すと上村は第一部隊隊長も同じタイプだと話すが、大島は気難しい人間だと笑いながら菅野は返すし、食事が来た所で一旦会話の途切れた後、菅野が思い出したかのように上村に話し出す。


「あ、そうだ第一部隊で思い出したけど、大山さんに会ったの?」


 菅野の切り出した話を聞いて上村は一瞬背中に寒気を感じる。

 春の暖かい気候で少し汗ばむ気候であったが、上村の背中はかなり汗ばんで来ていて、動揺を見せまいとばかりに冷静さを装い話す。


「い、いや。今日から遠征だし。第2部隊も誰も居なかったから説明は全然・・・。」


 上村はクールに話を続けたが背中の汗が引かず、それと同時に前からは心臓の心拍数が確実に上がっていることが判るほど胸は動いていた。


「いやー、同級生が3人も居るなんて、狭い日本って感じだよ、ね。」

「あ、ああ、そうだね。」

「大山さん、上村が入隊する事知ってて楽しみにしてたよ。まぁ、出向から帰って来たらみんなで飯食べようよ。」


 上村はたまに博士が羨ましく思う時がある。

 アイドルオタクなんて今は市民権は得られたが昔は後ろめたい趣味で、それでも本人は好きなことに没頭する事で目標を得て好きな道を進んでいる感じがして、小学生くらいの行動範囲であればたとえアイドルオタクであろうと自分の道を進むカッコいい人間だったと上村は思っていた。


 その点自分は心に秘めたものはあったが行動は出来ず、好きな女の子にも告白も出来ずやりたい事は途中で投げ出す。

 確かにクラスで人気はあったが、実際は何を考えてるか分からなかったので影は薄く人とつるむことも無かった。

 今回も大山に会ったところで特に何も起こらないだろう。

 なにもせず終わってしまうだろう。


 上村は彼の話を聞きながら、同い年だが言葉に説得力がある自身に満ちた菅野の口調がとても羨ましく感じ、なんか年取ってから他人の羨ましい所に

嫉妬ばっかりしている気がして来た自身に対しなんだか気持ちが沈んだ。


 博士は午後から会議なのでここで別れて私は省舎へ戻ったが、ずいぶん放っておいてしまった隊長が少し心配になり全然問題ない人だけど一応と感じ連絡を試みると、丁度その時電話が鳴り着信先は隊長からだ。


「おう!今どこだ!」

「隊長、今お昼食べて省舎に戻って来た所です」

「よし!ちょっと出かけるぞ!」

「どこへ行くのですか?」

「お前さんの武器を探しにな!!」


 それから、二人はすぐに荷物を揃えて出発する。

 ちょっとって言うから日帰りかと思えば2泊の予定で長野・岐阜付近へ向かうとの事で、そこに生物のあわられた跡地に生物が使っていた武器が残っていたらしい。


 丁度もう一人の隊員ともそこで落ち合う事なので、上村達は急きょ西へ出向する事になった。

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