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アナザーストーリー  作者: りょーじぃ
第四章 現代編
32/38

第31話 再結成 VS 最高神

2016/9/25 文構成を修正実施

 ここは中国、古北口より数十キロ離れたトルコ軍のベースキャンプ。


 大山 修・宮田ミヤダ・井田・ヒルダンは、日本と古北口が菅野とゲリラ軍の襲撃に会い八方塞りの状況に驚愕の表情見せていた。


 一早く我に返ったのは宮田ミヤダで、大島亡き今、冷静さを失わない事が必要だと常に自身に言い聞かせ、その場の全員に対し話しを始める。


「まずは、最高神を倒すのが先決だ!」

「しかしミヤダ、国は大丈夫なのか!?」

「ゲリラ軍は各地を占拠したと聞いている。ならば、まずは声明文を出すはずだからいきなり戦争になる事はない。ならば、無秩序に攻撃する可能性のある最高神を撃退するのが先だ。そのうちゲリラ軍から声明も発表されるから、そっちはとりあえず国に任せる!恐らく、トルコにいたゲリラ軍は渦のような場所から出て来たと言っていたから、恐らくその渦を移動空間として使ったんだろう!」

「・・・渦、と言う事は源流の石」

「なんだ、その源流の石というヤツは?」


 宮田ミヤダは攻撃を仕掛けて来る可能性が高いのは知能のない最高神だと考え、最高神の討伐を第一優先に掲げる。

 日本の主要場所を征服する遠回りな方法を取るのは交渉を持ちかける為で、ならば日本は暫く大丈夫だろうと宮田ミヤダは判断し、そして渦のキーワードに反応したのは井田にヒルダンは質問する。

 源流の石の存在は日本のみの機密情報だが、こうなってしまった以上黙っている訳には行かないと覚悟を決めた宮田ミヤダは違反を犯す事を承知でヒルダンに話す。


「トルコで発生した渦の件。・・・実は、その渦の発祥の地は日本である可能性高いのだ」

「何!?日本でか?」

「ああ、日本が極秘で進めているプロジェクトがあり、それを実施する為にその渦を使っていた。そして、その渦は源流の石と言う物から発生していて、その渦はワームホールとして使える」

「なるほど・・・。ゲリラ軍が使ったことで証明されたが、これが使えれば戦争するには脅威だ。・・・確かに公表は出来ないな」


 神妙な表情のヒルダンに対し、宮田ミヤダは笑みを浮かべる。

 その顔は、戦場という場所をまるで楽しむような表情でもあった。


「・・・ワシもやっぱり戦場で生きた人間だ。今の状況で言うには不適切な発言だが、こういった場面はワクワクするな。それに、久々に暴れようじゃないか?ジャンヌダルク再結成と洒落込もうぜ」

「ミヤダ・・・」


 宮田ミヤダの表情を見たヒルダンは暫く考え込んだが、彼の言葉と表情に何かが吹っ切れたかのように周りにいた隊員に指示を出す。


「我が第3部隊は、これより古北口へ行き最高神と対戦する!ヤツの相手は我らジャンヌダルクが行なう!他の者はバックアップを頼む!」


 迷いの消えたヒルダンの指示を受け隊員達の士気は上がり戦闘準備が始る横で、ヒルダンは宮田ミヤダの顔を見て笑みを見せる。


「ミヤダ・・・、やっぱり我々は戦場で生きていた人間だ。これから、アジアから世界へ続くテロが始まるかも知れないのに。・・・どうしてだろうな、お前と同じでワクワクが止まらないな」

「それが、数々の死線を潜り抜けて来た軍人としては当たり前の事だ!」


 ヒルダンの言葉に笑う宮田ミヤダは増田に連絡を入れ、井田とヒルダンと共に古北口へ向かう。

 増田もその情報は中国に着いた後入手し既に日本へ戻る術を無くした為、カラマイへ向かい源流の石の入り口側を探しそちらから日本へ侵入する方法を探り、宮田ミヤダ達は最高神のいる戦場へ向かい、その先にあった戦場は炎で木々は全て焼き尽くされ、目の前にいる竜の周り数キロは何も無い焼け焦げた荒地が広がっていた。


 ヒルダンが事前に現地居る軍へ連絡しその場にいる兵を全て撤退させた事でエアを取られる可能性も危惧していたが、その為に兵の命を危険に晒す訳にはいかないと話すヒルダンの意見を宮田ミヤダも理解していた。


「よし!まずはワシが前へ出る!」

「では、中佐は隊長の後方に配置を。相手の炎のブレスの後、接近戦で相手の攻撃力を確認して下さい。私はこのままサポートへ回ります」

「分かった!」


 前に出る宮田ミヤダを見て井田はヒルダンに指示を出し、その言葉に宮田ミヤダはアシュルの前に立ち敵を誘導すると、アシュルは吸い込んだ息を大量に吐き出す息から放たれた業火な炎が宮田ミヤダへ襲い掛かる。


「おりゃー!!」

「ミヤダ!よく受けとめた!次はこっちから行くぞ!」

「おお!」


 業火の炎を気の盾で受け止める宮田ミヤダを見て、『あの事件』以来変わった事を知っているヒルダンは嬉しそうな表情を見せる。

 あの時、ゲリラ軍の罠に嵌り仲間を失い宮田ミヤダは、それを切掛けにタンク役をしなくなり単独で行動するようになり、後にアサシンという二つ名が付くほどの伝説を残したのは確かだ。

 だがヒルダンの知る宮田ミヤダと言えば、戦場で常に前に立つ盾役として命を張って皆を守っていた守護神的存在で、久しぶりに見たその姿にヒルダンは懐かしさと共に頼もしさを感じていた。


 だが気の盾を使ったとは言え業火に宮田ミヤダの服は黒く焼け始めるが、その後ろから勢い欲飛び出したヒルダンが持っていた剣を抜きアシュルの懐目掛けて降り抜き、その攻撃をアシュルは指先から生える鋭い爪でヒルダンの刀を握り剣の動きを止め、剣を押さえられたヒルダンは剣を支えに宙に浮いた状態になった。


 はたから見れば次の敵の攻撃を受ける事になり簡単に言えばピンチの状況だが、それを見ている宮田ミヤダ達はそれぞれの持ち場を離れる事なく、只ヒルダンを信じると同時に彼が奥の手を出していない事も知っているからだ。


「じゃぁ、これならどうだ?」


 宙で止まったままで口元が緩ませるヒルダンの剣から発せられた光は、アシュルが握っていたその手がその光に負け徐々に開かれてゆく。


 ヒルダンはジャンヌダルク在住の時に笹塚にその才能を買われ、能力を開花させた気の使い手であり、ヒルダンの気は上村と近い具現化系になるが勿質に気を込める事である程度の大きさまで気を伸ばしたり、広げたりする事が出来る能力を持つ。


 ヒルダンは剣に込めた気を広げ今度はその気をアシュル目掛け放ると、それに気付いたアシュルは首を曲げ攻撃を避け後ろへ下がりヒルダンとの距離を取る。


「隊長今です!」


 そのタイミングを待っていた井田は、ヒルダンの奇襲攻撃に驚き敵が距離を取り間合いを取るタイミングを狙い連続攻撃を掛け、それに反応した宮田ミヤダは気を集中させた拳に巨大な光の玉が集めたそれは、異様な雰囲気を醸し出している。


「わりぃな・・・手加減は出来んぞ!」


 宮田ミヤダは拳を後ろに下げ攻撃の構えを取り敵の懐へ向かい飛び出す行動に不意を付かれたアシュルは、何も出来ずにそのまま攻撃を受けた。

 ・・・筈だったが、アシュルの目の前に突如壁が立ちはだかったが、それは灰色の不気味な4本の腕で、その腕に見覚えがある宮田ミヤダが記憶を辿った答えの先は、大仙陵で戦ったスィンだと確信する。


 宮田ミヤダの攻撃を受けてもダメージを受けたのは4本の腕のうち僅か2本だけで、井田もそれを見て耐性後の最高神だと確信し、これを出せる者は恐らく一人いないと感じる3人の目の前にその人物が現れる。


「やはり・・・邪魔をするのは貴方達ですか」

「・・・お前、菅野だろ?」


 黒い仮面と同色のローブ。

 それは、大仙陵で見たあの男で、しかし今はその中身の人物を知っている宮田ミヤダが発した言葉に、男は仮面越しではあったが一歩翻った姿に驚きの表情を見せているのが伺えた。


「誰です、そいつは?」

「ここまで来てシラを切るつもりか!?省のワシ達をそこまで知っていてなぜ、室長の菅野を知らないと言うのだ?」

「・・・貴様らは、死んでいったゲリラ軍の敵でもある。せいぜい、そいつらに遊ばれながら死に行くといい。あっちに行ったら、仲間に謝罪してくれ」


 男は暫く押し黙ったまま3人を見つめたが、やがて男は後ろを向きその先にあるアエの眠る洞窟へ向かい歩き出し、男は発した口調は以前に聞いたものと違う重く低い声を発し、サヨナラを告げるように右手を挙げながら洞窟へと消えて行ったと同時に、3人の視界の目の前に2体の最高神が現れる。


「・・・まずいですね。アシュリはともかく、スィンは幻惑を使うので肉眼で捕らえる事は出来ません。とりあえず、アシュリに攻撃を集中しましょう」

「ヨッシャー!来い!」


 井田は次の作戦を伝えると人手が足りないのを理解した宮田ミヤダは、気合を入れ体の最高神は襲い掛かりアシュリが放つ炎を気の盾でスィンの攻撃をもう一方の片手に気を込め受け止める。

 しかし、スィンの攻撃はまだ数本の腕と共に残っていて、その残りの腕で宮田ミヤダに襲い掛かるが、そこへヒルダンが加勢し残りの腕の動きを止める。


 だが、これでは肝心の攻撃が出来ない。

 自身の力では、あの攻撃を受け止める事は出来ないし、ましてや最高神にダメージを与える事も出来ないと焦る井田は胸にしまってあったナイフを取り出す。


「隊長、アシュルから直接攻撃来ます!中佐、スィンの残りの腕をなんとか押さえて下さい!私もそっちに加勢します!」


 自身の攻撃では加勢できないのは知っているが、このまま手を拱いているのも耐えられないと感じた井田は自身の無力に憤りを感じつつ手に持ったナイフを持ち防戦する2人に加勢しに飛び出そうとした井田の後ろから聞き覚えのある声が聞こえる。


「おいおい・・・、お前が前に出ちゃダメだろうが。キチンと、わたしらの管制をしてくれよ」

「大佐!!」

「まったく・・・もう一般人だって言ってるだろうが。大佐なんて大層な呼び名は恐れ多いわ」


 その口調は聞くに堪えないチンピラのような口調だが、その声に井田は今まで何度も助けられた笹塚の声だと覚えている井田の歓喜の声に、その男は迷惑そうな口調で話すがその表情は笑っている。


 上村達が中国へ出発した後、増田から連絡を貰い事の詳細を確認した後その日の最終便で増田たちよりも早く出発しここ中国へ着いていた。

 笹塚の存在に気付いたアシュリは炎のブレスを笹塚目掛けて放ち、その炎を笹塚は両手を前に出すと笹塚の手に炎は吸い込まれ消えて行く。


「わたしに、そんな物は効かねぇよ」

「大佐!」

「ササヅカ!?」

「よぉ、久しぶりだなヒルダン。・・・それに宮田ミヤダ、今のお前は楽しそうだな」

「これでジャンヌダルク再結成だな。まったく・・・お前達は、そんな程度の奴らに手こずる程腕が鈍ったのか?スィンは宮田ミヤダが倒した後だから、耐性が上がってるはずだな。・・・こっちは、わたしに任せろ」


 ジャンヌダルクでヒルダンが在籍した組のメンバーは4人で、宮田ミヤダと井田、そして笹塚で、メンバーの統率役でもあった笹塚が片手に出した気を刀にそれを合わせる。

 その刀は大島の使っていた刀で、その刀に笹塚は気を込め攻撃力を増幅させた刀を構えると、一直線にスィンへ突進する。

 これまで放出系の気を使い後方からの攻撃が多かったが、大島へ実戦で使える刀術を教え込んだ笹塚は武器を持てば接近戦もできるオールマイティな実力の持ち主で、実戦での刀裁きは笹塚の方が師匠にあたる。


 笹塚はスィンの腕のから繰り出される攻撃を華麗にかわし刀の届く間合いに入り再、び襲い掛かる攻撃を物ともせず気を纏った刀をスィン目掛けて振り抜いた。

 しかし、その攻撃はスィンを捕らえたかに見えたが捕らえた筈のスィンは目の前から消え、笹塚が感じた感触はまるで霧を切ったような感触だった。


「なるほど・・・。確か、目で捉えた物は全て幻になるんだな」


 何かを確認したかったかのように、笹塚は先の戦闘で既に知っていた筈のスィンの特性を確認するかのように攻撃を仕掛けた後、何かを思ったのか再び刀に気を込め出す姿に井田は何かに気付いたのか即座に指示を出し始める。


「隊長はアシュルの攻撃に集中して下さい。中佐はアシュルへ攻撃を」

「大佐の方はいいのか!?」

「あの大佐です、心配無用です!」


 井田の言葉に宮田ミヤダは押されたかのように会話を止め、目の前のアシュルに集中した。

 今、横で戦っているのは自分の尊敬するあの笹塚だと改めて実感した宮田ミヤダは、あれから自衛隊を辞め暫く実戦を経験していなかった笹塚が先の戦いでは以前のような鋭さは感じられなかったのは確かだったが、今そこに居る笹塚は以前と変わらない闘気を纏いそれは凄みさえも感じられる。


 上村が突き進んでいる道を笹塚も共に歩み、この日の為にトレーニングを積み闘気を蓄え最高神と戦う準備をして来たと井田もきっと同じ事を感じそう悟ったのだろうと感じた宮田ミヤダは、目の前のアシュルに睨む。


「大佐!!そちらは任せました!」

「ああ?誰に物言ってるんだ?そっちこそ気を付けろよ」

「はい!」


 2人の会話が終わると、再結成したジャンヌダルクは再び2体の最高神に向かって行く。


 笹塚は刀に気を込め最高神へ突っ込んで行き、振り抜かれた刀が当たった筈のスィンは無傷で別の場所に浮いている場所へ向かって来る笹塚へ繰り出すスィンの無数の攻撃を軽やかにかわし間合いに入るかと思われたが、笹塚はその手前で刀を振り下ろした刀はそのまま地面に直撃し、地面は巨大な土煙と爆音を上げ無数の粉々になった砂粒が飛び散る。

 その瞬間、土煙からスィン目掛けて笹塚の刀が襲い掛かり、それを紙一重でスィンはかわしたが刀の気に触れた1本の腕は粉々に砕け散る。


「やはり、お前の幻惑の正体は大体分かった」


 刃先を最高神へ向け語る笹塚は即座にスィンに向かって攻撃を繰り出し、その攻撃は幻惑によって無効化されたが、笹塚はそれを分かっていたかのように振り抜いた刀をそのまま手放し地面へ突き刺す。

 笹塚は両手で攻撃をしたい為、わざと刀を落としたのだ。


 最初の攻撃は相手を誘導し本当の狙いはこの攻撃の為の準備で、スィンを見つめていた笹塚は目線を逸らさずにひたすらスィンを見続けるその両手には、大量の気を込めた気砲が準備されている。

 攻撃準備が出来た瞬間、笹塚は両手をスィンの胸に当て持っていた巨大な気をスィン目掛けて叩きつけた。


 刀で攻撃してからそこまでの動作時間は僅か数秒の世界で、笹塚は一瞬でそこまでの動作を行いスィンに気を放出したのだ。


 笹塚はさっきまでの攻撃でスィンの幻惑は瞳術の一種で相手と目を合わせる事で発動する事を確認し、増田のように目を閉じて攻撃すれば回避可能だが通常はありえない選択だと考えた笹塚は、瞳術の発動タイミングと原理を確認する為にわざと攻撃を繰り出していたのだ。

 そこで判ったのが、幻惑は一度発動すると術者が認識した攻撃に対してのみ発動する事で、ならば変則攻撃をすればいいのたが、相手は同様の武器での連続攻撃や生半可な攻撃では見破られてしまう最高神だと考えた笹塚は、気の攻撃を繰り出しその気を壁にして速攻で次の攻撃を繰り出した。


 笹塚が送り込んだ気は即座にスィンの体内の許容量を超え、体からあふれ出しスィンの体を内部破壊し、笹塚は地面に刺さっていた刀を抜き近くにあったスィンが現れた術紙を見つけ、刀を振るいバラバラに切り刻んだ。


宮田ミヤダそっちは大丈夫だよな?」

「はい!任せて下さい!」


 笹塚は宮田ミヤダに戦局の確認をした後、男が入っていった洞窟へ向かった。


 炎のブレスを連続して放つアシュルに対し、宮田ミヤダはひたすら盾を構えそれに耐え隙を見てヒルダンが気を覆った剣で攻撃を仕掛ける。


「隊長、気の壁の質が落ちて来ています。一旦下がって下さい。中佐はその間敵を引き付けて下さい」

「分かった!」

「ヒルダン!任せたぞ!」


 長い対戦で宮田ミヤダの気も尽きつつあった為、一度後方へ戻り体力を回復する間にヒルダンがその間は気を広げ盾にして攻撃を防御する役割に回るが、防御力が低いヒルダンではアシュルの炎をブレスを防ぐのは厳しい状況だと管制役である井田は一番理解している。


「その間、私が攻撃へ回ります!」

「おい!無茶はするな!」


 宮田ミヤダの静止を振り切り井田はヒルダンのいる前衛へ向かう。

 井田の戦闘管制能力は群を抜いているが直接攻撃の力は普通の人間と変わりない程度の力で、元々の虚弱体質を変えたい為にこの世界へ入り厳しい訓練に耐えた事でその面影は微塵も感じられないが、結局はその体質を変えられずにいた為戦闘でも重火器等を使う事は出来ず管制役として戦闘を支えていた。


 確かに普通の女子と考えれば当然だが、戦闘に生きると決めた井田にとっては最高神と互角に渡り合う大島と大山 由希子は、自身へのコンプレックスでもあった。

 目の前にいる最高神は今までのとは格が違うのは分かっているが、今役に立たなければこれまでの努力と苦悩は報われないと思った井田は無意識に最高神に向かって突進し、アシュルの攻撃はヒルダンが防いでいる今ならと機会を伺っていた井田は、アシュルの胸元目掛けて短刀と振り抜いた。


 しかし、その攻撃はアシュルの体に傷を付ける事は出来ず気付いたアシュルは井田に向け尾尻で攻撃し弾き飛ばされるが、後方にいた宮田ミヤダが井田の前に出て井田を止める。


「・・・お前、何か勘違いをしているようだが!自分が足手まといなんて思っていたら、それは大間違いだぞ!」

宮田ミヤダ隊長・・・」

「大島や大山 由希子が力の基準ではない!己の長所を活かしてこそ、それが力だ!」


 井田を抱きながら叫ぶ宮田ミヤダは、井田の責任感の強さは元上官である宮田ミヤダは良く知っていて、大島達が東北で失踪した事を事前に気付けなかった自分を責めていた時も宮田ミヤダは次の指令を与える事で井田に発破を掛けたりした。


 井田の力では最高神を倒せないのは知っている。

 だが、それが強さではない。

 宮田ミヤダだって使いようによっては単独行動の方が脅威かも知れないが、それは仲間を助けられなった己から逃げた上での選択でそれは強さではない。


 強さとは己と向き合う事。


 変わる事は大事だが、逃げる事はそれとは違う。

 己と向き合って弱さを知り、悩み努力をする。

 ・・・その先に本当の強さがある。


 自身が弱かった所は皆を守り切るという信念と実感している宮田ミヤダは、自身の驕りで仲間を死なせた事を自分の弱さと勘違いし、単独行動を取り逃げていた自分は負けていた弱さと向き合い絶対に守りぬくと言う己の信念を貫き、再びタンクとして戦場に立つ事を決めた。


 物理的な観点で見れば攻撃力が低下した等デメリットもあるのは確かだが、仲間の信頼を得て周りに安心感を与える事はデメリットよりも周りの士気を挙げるメリットの方が遥かに高いと感じている。


「お前の強みはなんだ!?それを考えろ!お前にしか出来ない事があるはずだ!」

「隊長・・・」


 目の前でアシュルの攻撃を受けている宮田ミヤダは苦しそうだが、表情は楽しそうにも見えた井田は、アサシンの二つ名を持つ宮田ミヤダがこんな満足する表情を今までしていただろうかと驚きの表情で見つめ、あおの大仙陵での戦いから宮田ミヤダは変わったと、・・・いや、むしろ昔の活き活きした表情でもあったと感じる。


 井田は考えた。

 自分に出来る事は何かを。


 アシュルの目の前にいながらも、攻撃もせず暫く動かず瞑想する井田はやがて静かに目を見開き、再び2人の後方へと戻った。


「隊長、そのまま攻撃を防いで下さい。中佐は次のブレス攻撃に備えて気の壁を作って下さい。連続ブレスの後、相手が呼吸を整える間がチャンスです。隊長の強化系で攻撃して下さい!」

「了解!」

「おうよ!いいぞ!いつもの井田らしくなってきたぞ!どんどんコキ使え!!」

「ミヤダ、お前はマゾか?」

「それでは、遠慮なく行きます!」


 井田が導き出した答えは、は自身が参加して行なおうとした作戦を2人のみで組み直し指示で、その指令にヒルダンと宮田ミヤダも冗談を交えながら答える。


 これが本来の連携体制で、これこそがゲリラ軍圧倒的の状態をひっくり返し中東の宗教戦争を沈静させた伝説の軍隊『ジャンヌダルク』の復活だった。


 宮田ミヤダはアシュルの攻撃を防ぎながら片方の手に気を集め始め、ヒルダンはブレス攻撃に備え気の壁を作り、やがてアシュルの連続ブレス攻撃が炸裂するがヒルダンが事前に準備をしていた気の壁でその攻撃を防ぎ切り、攻撃が止んだと同時に宮田ミヤダが溜めていた拳を握り締め

 アシュル目掛けて飛び出す。


「敵の攻撃来ます!中佐、お願いします!」

「おう!」


 アシュルが飛び込む宮田ミヤダに対し鋭い爪を突き出すが、ヒルダンがその間に剣を挟み攻撃を宮田ミヤダの手前で阻止する。


「ミヤダ!今だ!」

「どーりゃー!!」


 ヒルダンの掛け声と共に気を込めた拳がアシュルの喉元目掛けて炸裂し、その拳はアシュルの喉をも突き抜け宮田ミヤダの拳はアシュルを貫通しアシュルの首と胴体は二つに分かれ、何も発する事無く地面に倒れ込み、やがてアシュルは紙屑のように砕け散りそれが砂のように細かくなると風と共に消えて無くなった。


「やったー!!」

「3人掛かりでなんだったが、なんとかやっつけたな」

「まっ、当然だろ!」


 井田は歓喜の声を上げ、ヒルダンは冷静に状況を把握し、宮田ミヤダは何時ものように大声を出すその姿は、かつての中東の戦地を駆け巡ったジャンヌダルク時代を思い出させる光景であった。


 その後、すぐに3人は笹塚が先に潜入した洞窟に向かう先では、笹塚と男との戦いが繰り広げられていた。


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