第12話 上陸
2015/10/11 全文章校正実施
2016/4/12 全文章校正実施
上村達の乗り込んだ船内には各自の個室がある。
個室といってもそう大層な作りではなく、ベットと机が置いてあるだけの簡素な部屋だが、船という限られたスペースを考えれば贅沢な作りになっている。
その一室にある上村の部屋では、椅子に腰を掛け自分の使う新たな武器の事を考えている上村がいて、上村は田島へ刀を渡した事で自身の片手が空いた事で物理化した気以外に飛び道具的な物を作りたいと思っている。
色々妄想する中で思い出したのが大山 修の念射で、あれを自身なりにアレンジして飛び道具にする事が出来ないか考えていて、気の放出系が得意ではない上村であったが、気を物理化する事が出来るのであれば、物理化した物を利用して放出系同様の効果を得られるのではないかと考える。
そこで上村は船内の武器庫へ向かい、倉庫内でいろいろと武器を物色し使えそうな物がないか確認する。
最初は実銃に気を留める事も考えたが、実弾なんて撃った事はないし、接近戦タイプなら軽くて使い易いモデルガンの方がいいと考え、まずはプラスチック弾丸に気を込めてモデルガンを使い発射する事を試みたが、気を留める事で素材自体の劣化と言う問題が発生し、プレスチック弾に気を込めると、それはたちまち劣化し、まるで酸を掛けられたかのように腐食し、モデルガンも同様に気に耐える素材としては使えず、その後も他の金属を試すがどれも気を込めると粉々になってしまい、こうなると多分実銃でもダメだろうと諦めと疲れの溜まった表情を上村は見せる。
前に笹塚が言っていた武器は砲台に気を込めて放出すると聞いていたが、もしかすると政府が今でもこれを使っていないのは、それに耐えうる素材が存在しないという事なのかと上村は感じ、あの刀以外に気を受け入れられる物はないのだろうかと感じる。
だが今でも国主導で動いているのであれば何かしら研究はしている筈だと考えると、上村の脳裏に一人の人物が浮かぶと、今まで上村が心の隅に残り気になっていた事に合点がいった。
「・・・博士なら、何か知っているのかも。」
あの時、気を使った兵器を聞いた時の菅野の態度は何かを隠している様にしか見えず、菅野の態度は明らかに政府主導で何かが水面下で動いていて、その研究には菅野自身も絡んでいると考えるのが妥当と考え、もし関係なければあんな返事をするはずが無いと結論したが今の上村にその事を確認するには厳しい状況にあり、海のど真ん中である今、菅野に連絡を取るには政府支給の衛星電話しかなく、その会話は間違いなく筒抜けであり、それが知られる事でどうなる事ではないが、政府が裏でやっている可能性のある事を調べるのは少なからず内部から反感を買う感じがし、波風を立てず穏便に事を運びたい上村にとって、それは最善の選択ではないと感じる。
この件は日本に戻ってから再度確認する事で己を納得させた上村は現実の問題へ戻り、目の前にある気の使い方の解決策を考えながら右手で買った本をまとめる為にあった輪ゴムを弄り椅子に寄り掛かる。
上村はそのゴムを指鉄砲にして壁目掛けて発射すると、ゴムは勢いよ浮く部屋の天井に当たりやがてベッドに落ちるのを見詰めていた上村は、しばらくして何かを思いついたかのように小さく呟く。
「・・・気を練って発射台を作り、そこから気を放射するのは本当に可能なんだろうか。」
今作ったゴム鉄砲の様に、指にゴムを巻き発射する行為を気で再現すれば硬質な気を作り発射台を作り、次に柔軟性のある気で作った発射台に引っ掛け放つ。
この方法はおそらく笹塚も考案した方法だろうと考える上村であったが、自身がまだ気を操り出してまだ日が浅い事もあり、まずは実践してみるのも大事だと感じ、己の片手に気を集中し手の平に青白い光を作り出し、上村はそれにさらに気を込め圧縮すると気が手を覆うように纏わり付き出し、その気は上村の想像する発射装置の形に具現化する。
上村はその具現化した気に、今度は威力が増す圧縮ではなく気の形を変えるイメージを送り込む。
上村がこの船上での1カ月行った修行で掴んだ物はイメージを気に込める事で具現化出来る方法で、圧縮させるイメージは威力の増強だが、その気にさらにイメージを送り込み気自体を別の道具に変え具現化する方法で、気とはイメージする事で己の体内より放出する物だとこの修行で理解出来た上村は、自身が苦手にしている放出系はそのイメージが出来ない為だと感じている。
上村の手にあった気で出来た反りのある棒の回りにさらに気が覆われ、自身が想像する発射台は無難な弓矢から始める事にし、弓の胴周りは硬質で弦はしなやかな弓をイメージして気を込めが、硬質物と軟質物をつなげる具現化がうまく出来ず、胴は具現化出来たが弦がうまく作れず、逆に弦を作る事は出来ても硬質系と軟質系の異なる物質を繋ぎ合わせる方法が思い浮かばず、弓として使うことは出来なかった。
大きくため息を付いた上村は上陸まで時間はあると考え、上陸までになんとかこれをモノにしようと目標を作り、語学駄目でも通訳さんいると考え夜の時間を全て気の修行に当てる。
田島は上村の渡した刀を使いこなせるようになり、この航海の2ヶ月の成果はかなりのものを得て、上陸までに戦力として間に合った。
あと数日で上陸するある日、最後の総仕上げとして上陸後の戦闘での連携に使用するため、今回の特訓で身に付けた技を披露する事になった。
宮田は特に新しい技を習得はしておらす、今回の修行は自身の基礎部分の向上を目指し、その結果スピードと筋力この二つの強化で以前よりコンマ数秒早く行動出来るとの事で、増田が使う特技である相手の動きを読み取る技を延長線に見据えた修行だと話すが、それはまだ戦闘で使えるレベルではないとの事なので知っている程度でいいと話す。
確かに相手の行動を読んで目を閉じて行動する事は増田の素早い動きと相まって強力な武器になるから、宮田も同じスピード重視の増田からいろいろと参考にしているのだろうと感じた上村は、普通隊長って部下より偉いんだぜ!的なオーラが出ているが宮田は口調こそ偉そうだが、相手の長所を取り入れたりする素直さと向上心が凄いとも感じている。
まぁ、確かに殆ど単独行動で隊長らしい事はあまりしていないが・・・。
続いて田島に発表で、田島は上村から譲り受けた刀を使い特訓している衝撃波を披露し、その後に上村の気を刀に込めた合体技を披露する。
二人はこの技を「オーラヴレード」と名づけた。
繰り出される気の色を見たまんま付けた名前だったが、二人で協力して作り出す技は田島の衝撃波を何倍にも増強させたが、刀の耐久度が不明なのと上村がいないと使えない技なので、とっておきの手か斬り込み用の大技として使うと言う話でまとまった。
最後に発表した上村は特に新しい技は作っていなかったが、今回はオーラヴレードに尽力を尽くした事を話し、未完成だが気の具現化で武器を作る話もした。
「そんなのより!早く武器作れ!」と上村は宮田に言われたが、まだ素材選定も終わってないと説明する。
互いの戦闘力を知った宮田は続けて今回の隊の編成を決め、田島が前衛で上村がフォローへ回り、宮田が単独で数減らす、いつもとそんなに変わらないが今後のフォーメーションも決まった。
そして上陸当日。
水平線の先に大陸が見える。
常に大陸を見ながらの航海だったが、こんな真近に陸を見るのは補給の時しかなかったので本当に久しぶりだと三人は大海原の中で感じる。
港に入り久々の大地に降り立った上村は、船も数時間なら乗ったことがあったがこれほどに長い航海は初めてだったので、地に足を置いてすぐグラグラとめまいに襲われ、上村はそのめまいを止めようと額に手を当てると、その手の隙間から差し込むのはギラギラとした灼熱の太陽。
ここは灼熱の国トルコ。
日本と気温はそんなに変わらないが、こちらの方が湿度が低いのだろうか、空気は澄んでいるが照りつける太陽は容赦なく刺してくる感じだ。
船から降りると港には既に数台の軍用車が止まっており、その前を軍隊が整列をしている。
「久しぶりだな!!ヒルダン!」
「おお!ミヤダか!」
「久しいな!そっちはどうだ?」
「相変わらず宗教戦争に巻き込まれているよ」
「忙しいところすまなかったな!あれから情報は?」
「イダには引き続き連絡しているが、ワタシの直営の軍が遺跡の調査は進めてる。」
宮田はその隊の先頭にいる人物に手を差し伸べる先に居る人物は、トルコ軍第3部隊隊長 ヒルダン=スーレー。
彼はその昔、国境を越える兵隊【ジャンヌダルク】に所属していて、そのメンバーには笹塚と宮田と井田もいて、当時は中東の宗教戦争に収集が着かなくなり、世界各国々が非公式に軍の精鋭を派遣させ規模の縮小を行う為に送り出した世界中の戦争のプロとも言える人物の集団、その軍隊がジャンヌダルクだった。
その時アジア軍隊としてメンバーを組み当時から単独行動派だった宮田に、井田と共に最後まで援軍として付いて行きサポート約として尽力を尽くし数々の戦闘をくぐり抜けてきた仲間だそうだ。
挨拶も早々に、ヒルダンは真面目な顔になり宮田に話しかける。
「あるにはあったんだが・・・。どうもオマエ言っていた風景とどうも違うんだ」
「違う!?」
「ああ、オマエの言っていた日本の風景、そうだな森林と連峰が見えると・・・。」
宮田は事前にヒルダンに日本で渦のあった場所の風景をメールで送っていて、ヒルダン達はその渦は見つけたが、その先には見たことのない風景が見えたと報告すると、予想外の返事に一瞬言葉を失った宮田が再び話を続ける。
「日本の風景ではなかったのか!?」
「ああ、お前に貰った写真の風景ではないが、間違いなく現世でもない・・・」
捜索隊の話によると、その先に見える風景は枯れ果てた砂漠で、宮田から送られた写真の風景とは似ても似つかなく、ヒルダンはその場所を特定しようと調べたが、現代の世界に同等の風景の場所は存在しない事も判明したと宮田へ告げる。
渦の先の風景が違うと言う事は、そのトンネルはトルコと日本を繋ぐだけではなく他の場所への移動手段として自由に移動できると言う事だと感じる上村は、この数ヶ月の捜索でも見つからない理由は大島達が別の場所に居る可能性が高いと感じている。
現在遺跡周辺は厳戒態勢にして入場は禁止にし、日本からの交渉もこれから始まるのを待つとの事で、ヒルダンの話では鈴森がうまく動かしているらしいが、後で連絡が取れた井田の話だと政府間の交渉状況は順調だが実際に動き出すにはまだ日が掛かるとの事で、正直そちらのレスポンスは期待していなかったのだが、想像以上の遅さに国同士だとしょうがないのかと想定内の事と宮田達は片付ける。
宮田達が現地に着いた事で、ここからは宮田がトルコ軍と警備の交代をする。
小粒ではあるが国内でも生物が引き続き発生しているのでそちらの強化も重要で、今の所は増田一人で問題なく片付けているが、部隊の殆どの人員が国内に居ない為、井田達は増田と共に引き続き国内討伐に専念する。
井田達への連絡を終えると国間の交渉は鈴森に任してある宮田は、渦のあるメソポタミア遺跡へ向かう為トルコ軍の軍用車へ乗り込む。
その後、メソポタミア遺跡へ向かう最中に入ったヒルダンへの無線連絡は上村達へ緊張をもたらす。
車内で会話をするヒルダンは会話は会話の最中にその表情を次第に険しい表情へ変へて行く。
遺跡調査中の隊員から渦から生物らしき物が出てきたと連絡が入り、今まで国内でしか確認されなかった生物がここトルコで確認されたのだ。
その話を聞き三人にも緊張が走る。
生物が国内を出たのだ。




