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八話 ウナギがない!

 結月の紹介も終わり、頭領が僕に紙を渡してきた。


「これ、お前たちの依頼書だ。たのんだぞ!」


 背中をバンっと叩かれ僕に喝を入れてくる。


「うぐっ、喝の入れ方もう少しなんとかならないですか? 痛いです」


 軽く咳き込み背中をなでる。


「もっと飯食って、頑丈な身体つくってから言え!」


 豪快に笑いながら何度も背中を叩かれた。


「おっと、そうだ。天城、今日は花も連れていってくれ」

「別にいいですけど……なにかあるんですか?」


 僕の問いには、答えず接待の基本を教わってる結月のところに行き僕についていくよう話し始めた。その間に、依頼書に目を通す。

 依頼書には、「人探し」と大きく書かれその詳細と似顔絵が書かれていた。 昨日の昼、山で山菜を取りにいった7歳の娘が帰ってこないというものだった。 髪は肩に少しかかるぐらいの長さで、目は小さい顔に反して大きく可愛らしい印象を与えるほどの美少女で、桃色の着物を着て出かけたらしい。

 僕が依頼書を見てると、


 「あああああああああああ!! 俺のウナギがああああああああああああ!!!」


 声のする方を見ると、熱田が黒い狼に向かって叫んでいた。


 「先生! それ俺のウナギ! ってもうない!!」

 「うまかったぞ」

 「知ってる!! さっきまで食ってたから!!」


 熱田の怒りに対して、先生と呼ばれた狼は口のまわりを舐めたあと寝ようとしていた。 先生を激しくゆすって起こそうとするが、まったく起きる気配がない。

 先生と呼ばれた狼は、熱田の相方だ。 弓に憑かせることで射った矢を獲物に当てるまで追尾する力を持っている。 まさに狩りをする肉食獣にぴったりの力だ。

 ちなみに「先生」と呼ばれる理由は、熱田の相方になる代わりに彼の先生になることを希望したそうだ。 熱田と出会う前は、森の精霊に対し教えを説いていたが、みんながいい子すぎて楽しくないとのことだった。 一人でもいいから問題児が欲しいということで、問題児熱田が生徒となり今の関係になった。


      

 

 そんなこんなで、結月を連れ村の近くにある山のふもとにやってきた。

 ここに来るまでに、笹の葉に包まれたおにぎり三つと竹の水筒を食事処で用意してもらった。

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