七話 熱い想い
結月と頭領が奥に行くのを手を振って見送ったあと、僕たちは依頼室を出て向かいののれんをくぐる。 のれんの向こうには、障子があり開けると中は食事処になっている。
真ん中を通路にして左右にそれぞれ4つずつ長机があり、1つの机に8つの座布団が敷かれ、向かい合うように食事する形になり、今も各机に数人が座り食事を楽しんでいた。
僕たちがどこに座るか悩んでいると、ウナギを食べていた一人の青年と目が合った。
短く紅い髪をたて黒いバンダナを巻き、灰色の着物を着ていた。 その青年は、箸を置き一目散に琴のもとに駆けつけ、飛び込んできた。
「琴さああああああああああああん!! 俺と付き合ってくれえええええええええええ!!」
琴は、飛びかかってくる青年の袖口と首下あたりの部分の布をねじるように掴み、短い掛け声とともに背負い投げをきめた。
バンっと大きな音が鳴り響くが、他の人はちらりと見るだけでまた食事を楽しんだ。 うん、いつものことだからね。
「ああー!!ご、ごめんなさい、 熱田さん! 身の危険を感じたのでつい…… 」
琴が申し訳なさそうに言い、 熱田と呼ばれた青年の看病を始めた。
「い、いや突然飛びかかった俺が悪いから……」
息も切れ切れに言われ、琴がなおさら申し訳なさそうに誤っていた。
とりあえず熱田に手をかし立たせ、近くの座布団に座らせるついでに給仕さんにお茶を3つ頼んだ。
「さてっと、お前には何度も言っているがもう一度言う。 そんなに琴がいいか?」
僕が熱田に言うと、琴がひじで僕を突っついてくる。その様子を見ていた熱田が、両手を机にたたきつけ
「てめぇぇぇぇえええぇぇぇ、羨ましいんだよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!そこ代われぇぇぇぇぇえええええぇぇぇぇぇ!!」
「いいぞ」
どっこいせと立ち上がり熱田と場所を交代しようとしたが、さっきまでの暑苦しさが嘘のように冷め、顔も伏せて気恥ずかしそう言った。
「い、いや……やっぱりこのままで……」
少しは度胸を持てよ、と思いながら座り直して話しを再開する。
「で、実際どこがいいんだよ」
「なんだよお前、ずっと琴さんと一緒にいるのにそんなことも分からないのか」
ため息を吐き、呆れた口調で言われた。
「いいか? まず、透き通るような白い肌。 それに、子供っぽい顔なのに、どこか大人びた魅力。 そしてどんな人でも優しく接してくれる寛大な心!!」
「だってさ」っと琴に話しを振ってみると、頬を少し赤らめ苦笑いしていた。
そんなやりとりをしていると給仕さんがお茶を3つ持ってきた。 「これはおまけです」っとみたらし団子も置いていった。 僕たちは「ありがとうございます」っと頭をさげて感謝した。
「おう、お前ら!今日から新しい家族が増えるぞ!!」
頭領が結月の背中を押す形で奥から出てきた。すると、みんなが「可愛いー!!」、「妹になってくれー!」、「にぃにぃって呼んでー!!」っと盛り上がる。
土汚れた着物から、抹茶色の着物に白の水玉のついた落ち着いた着物に着替えて登場してきた。髪もひとつにまとめられ、動くたびに犬のしっぽのように左右に揺れる。
「はじめまして、今日からここで給仕として働くことになりました。 結月 花です。 よろしくお願いします!」
うれしさで弾んだ声でみんなに挨拶した。




