五話 出社しましょう
魚を焼く香ばしい匂いで、目を覚ました。すでに琴と結月は起きていて、せっせと朝食の準備をしていた。
僕は、その様子を目が冴えるまでぼぉーっと見ていたところを、結月が気づき元気よく挨拶した。 その声で琴も僕が起きたことに気づき挨拶し、もう少し時間がかかる、と教えてくれた。 僕も寝ぼけながらも挨拶し、朝食ができるのを布団の上で待った。
「それでは、いただきます!!」
「いただきます」
「いただきます!」
結月が合掌の音頭を取り、朝食を食べる。 白いご飯に焼き魚、そしてきゅうりの塩漬けと少し豪華な朝食を食べ終え、仕事場に行く準備をする。
寝巻から白色の狩衣に着替えて刀を持ち、琴と出会ったときにもらった赤い炎の珠の首飾りを着け、外に出る。
外では、琴の手元を夢中で覗き込んでいる結月がいた。
琴は、いつもの巫女服を着ているが、狐の特技である変化を使い、頭の耳としっぽを消し髪も、黄色から黒色に変えている。結月は、昨日の土汚れた空色の着物を着ていた。
「できたー!!」
琴がうれしそうな声で、作ったものを両手で持ち空に掲げた。 琴に拍手を送る結月もうれしそうに笑っていた。
作ったものをよく見ると、青い珠に紐を通した簡単な首飾りで、僕の首飾りと一緒のものだった。 ただ僕の赤い珠に対して、結月のは昨日作ってもらった青い珠だった。
琴が、結月の後ろに回り首飾りを着け、僕に話しかけてきた。
「花ちゃんのこと、どうするの?」
「ん? あぁ、頭領に頼んで、働かせてもらえないか聞いてみるつもり。 人手が足りないって言ってたから、多分雇ってもらえるだろう」
「私、働けるのですか!?」
炎の珠の首飾りをつけてもらった結月が興奮気味に聞いてきた。
「嫌か?」
「逆です!! どこも子供は雇えないって言われて……ずっとお金に困っていたんです!!」
「そっか……。 じゃあ、頑張れよ」
結月の頭をポンっと叩き仕事場に向かった。




