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四十話 手紙

 「そういえば、帰るときに手紙をもらいましたよ」


 料理も終わり各々が好きな具材をつっついているときに、結月が言った。


 「おおー、恋文かー。 それはよかったなー」


 さして興味もなく鍋をつっつく。 今は腹を満たすことが先だ。


 「恋文じゃないですけど、もっと興味を持ってくださいよ……。 変な赤い鎧兜着た人からもらった手紙ですよ!」


 そんな奇人から物をもらうなよ、と言いたいが口が肉でいっぱいになってるから言葉を発せなかった。


 「ちなみにどんなのことが書いてあるの?」


 琴が聞いてみるも鍋から目を離さない。


 「えぇっと、『明日、なんとか山の山頂に来てほしい』ってありますね」

 「ちょっと見せて」


 琴が結月の手元に首を伸ばして手紙を読む。


 「羅獄山(らごくざん)ね。 ほら、花ちゃんが天狗と会った山のことだよ」


ポンっと手を叩いて納得すると結月も鍋をつつき始めた。


 「それで会いに行くのか?」

「一応って感じですかね。 もしもの時は助けてくださいよ」

 「うぇ……僕たちも行くのか……」


 正直行きたくない。 奇人に会うなんて嫌だし、怪我するかもしれない。




 そして次の日の昼。 軽く昼食を取ってから、天文を出た。

 なんだかんだ結月と琴に説得させられて、護衛と称したお供をすることになった。

 琴が言うには「花ちゃんの貞操を守るため」とのことだ。

 僕の足を蹴っ飛ばした威力を考えれば、貞操なんて自分で守れると思うのだが……。

 精神的な問題なのだろうか。 見知らない男が襲ってきたら怖くて身体が動かないかもしれない。

 結月もまだ小さな子供だ。 このような状態になる可能性は十分に考えられる。

 それならば、仕方ない。 結月も僕たちの仲間だ。 守ってやらないといけない。

 そうと決まればさっそく琴を刀に憑かせる。 憑かせなくてもいいが、一応の用心だ。

 これから会いに行くのは、赤い鎧兜を着た奇人だ。

 恰好からして戦闘経験がありそうな人だし、用心するに越したことはないだろう。

 まぁ、人を火で焼くのは問題だが脅しぐらいはいいだろう。

 

 「準備はいいか?」


 結月が元気よく返事するのを見てから、赤い鎧兜に会いに行った。

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