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三十九話 料理

 鍋に水を入れて囲炉裏に置く。

 そして昆布を一口大に切った鍋に入れ、砂糖、酒、みりん、醤油を加えて火にかける。

 本来、火をつけるには火打石を使い苦労してつけるが僕の家には琴がいる。 囲炉裏を指差すだけでいとも簡単に火が灯る。

 

 「それじゃあ、悠は火の番をお願いね。 花ちゃんはこっちきて手伝って」


 うむを言わせずに火かき棒を僕に差し出し、結月の手を掴んで立たせ台所に向かった。

 台所に消える前に「家事は忙しいのに」、と悪態をつくのが聞こえてしまい申し訳ない気分になった。

 琴の機嫌悪くしちゃったなぁ。

 そうだよな……、ずっと立ちっぱなしな上に動き回らないといけないもんな……。

 もっと早く気付けばよかったと後悔しながら、沸騰し始める鍋を眺めた。


 


 「花ちゃんはお米研いだあと、この干し肉を食べやすい大きさに切っておいて」


 台所に着くとさっそく指示が飛んできました。

 それにしても、すごい量の肉ですね……。 もっと買い方はあったのではないだろうか。


 「干し肉は熱田さんがくれるのよ」


 そうですか。 あの人なら貢ぎそうですもんね……。 それはそうと、さらっと心を読まれるとドキッとするのでやめてほしいです。

 おっと、早く用意しないといつまで経っても鍋が食べれませんね、さっさとやりますか!

 棚から竹でできたざるを取り出すと、米俵から米をすくってあらかじめ水屋から買っておいた水を使い米を二、三回研ぐ。

 それから、釜に研いだお米を入れて琴さんに火をつけてもらいました。

 次に私は大量の干し肉を切らないといけないのですが、切るのに全体重を乗せないと切れないので大変です。

 それにお米の火を見るために、いちいち中腰にならないといけないのがまた大変。

 うぐぅ、腰にきます……。




 さて、わたしは野菜ときのこを切っていこうかな。

 大変なお米と、力のいる干し肉は花ちゃんに任せたし、ずいぶんと楽になってきた。

 ちょっと意地悪しちゃったかな……。

 で、でもあの二人だけ楽しんでるなんて卑怯だもん! そう思いながらも横目で花ちゃんの行動を見てしまうあたり、意地悪しすぎたかもしれない。

 花ちゃんもあんなに頑張ってるんだし、わたしもやらないと!

 まずは一玉の白菜を切っていく。

 サクサクと心地いい音を立てながら、あっさり切れていく。 芯のある部分もさくさく切っていく。

 次にきのこを切りたいけど、切る前に井戸水で洗ってこなくっちゃ。 棚から桶を出すと、鍋に入れるきのこを全部入れて外に出る。

 冷たい風に吹かれて身震いしながらも、井戸水できのこを丁寧に洗う。

 手が冷たい……。

 井戸水は格段に冷たくなっていて、触れただけで手を引きたくなるほど冷たかった。 それでも、鍋のため我慢して洗う。

 洗い終わり家に戻るころには手が真っ赤になっていた。

 手に吐息を立てて温め、包丁を握る。

 手が震えないように力強く握って、笠の部分と茎の部分を切り分ける。 茎は捨てて、笠に十字の切り口を入れる。 

 これでわたしのやることは終わり! 切り終わった食材を大きめの桶に綺麗に入れる。

 花ちゃんは……まだかかりそうだね、悠は……どうでもいいか。 座って火を見るだけだもんね。

 悠のことは見捨てて、花ちゃんの手伝いを始める。

 はやく暖かい鍋を食べたい……。 

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