三話 僕たちの仕事
どんぶりとお茶椀にご飯を盛り、サケの切り身をのせ熱いお茶をかけてお茶漬けを作る。 さらに、二人分のきゅうりのつけものを机に並べる。もちろん、どんぶりの方が結月ので、お茶椀の方が僕のだ。
僕は机を挟んで結月と向かい合うように座ると同時に刀を横に置くと、さっきまで布団の上でぼーっとしていた狐耳の女性が僕の隣に座ってきた。 まだ若干、結月がおびえているけど今はご飯を楽しもうではないか!
「お茶漬けですか……てっきり私は、そばを食べさせてくれると思ってましたよ」
少しがっかりした様子を見せたが、丁寧に両手を合わせてから食べ始めた。一度に多くのごはんをかきこみ、はふはふして口の中の熱を冷ますように食べている。
「おーい、火傷するぞー」
「はいふぅうふへぇふぅ」
そうか、大丈夫か。 確かに一気にかき込むのが正しい食べ方だと思うが火傷はしないようにしてもらいたい。
「じゃあ、僕もいただきます!」
結月に習い合掌してお茶漬けを食べる。 ただ熱いお茶をかけただけなのに、なんでこんなにおいしくなるのか全く謎な食べ物だなぁ。 とぼんやり思いながらお茶漬けをかき込む。
「さてと、食べながら説明するけどいいな? まず、僕の隣でニコニコしている狐耳は森の精霊の一人で琴って名前。 そして僕の相方だ」
「琴です。よろしくお願いします」
ぺこりとお辞儀して結月に挨拶した。 それにつられて結月も「こちらこそ」と挨拶し、ぺこりとお辞儀をする。
そして、もうお茶漬けを食べ終え、つけものをぽりぽり食べてる。 音がいいのか、何度も噛んで味よりも音を楽しんでいるみたいだった。
「いつもこの刀に琴を憑かせて仕事してる」
そばに置いておいた刀を結月に見せ、質問はないかを尋ねた。
「はい! 二つあります」
手をまっすぐ上げ質問を言う。
「まずひとつ! 精霊ってなんですか?」
「精霊っていうのは、そうだな……その場を守る神様みたいなものかな。 琴の場合は森の精霊だから、森を守ってる神様だな。 姿かたちもさまざまで、琴のように人型のやつもいれば、半分人間、半分獣の獣人型、まんま獣の獣型があって、持ってる力も違う。 はい、ふたつめは?」
力についてつっこまれないように先を促す。力については僕もいまいち分からない。
「あっはい、えーっと、一緒に仕事しているのに琴さんが家にいたのはどうしてですか?」
「あーそれは……」
「それは瞬間移動ができるからだよ!」
机から身を乗り出して、琴が僕に代わって興奮ぎみに答えた。琴が代わりに説明するみたいだから、琴に任せて食べることに集中する。
前に「人間にはできないことが、自分にはできる! 」ということに優越感を持っていると言っていたが、単に自慢したいだけかもしれない。
それに瞬間移動なんて、人間一度は夢見る超能力の一つだもんなぁ。 僕も未だにほしい。
「どこでも……とはいかないけど、これがあるところには行けるんだよ!」
手のひらを上に向け目をつむり、深く息を吸い吐き出す。 力を使うのかと思い、僕も食べることをやめ琴の手のひらを見る。 数回、深呼吸を繰り返し、最後に大きく息を吸い込む。 すると手のひらから青く小さな炎が、ぼうっと出てきた。
ビクっと驚いた結月だったが、炎から目を離せずにいた。 にこりと結月に微笑みかけ、両手で炎を優しく包み込んだ。 指と指との間から炎の淡い光が漏れ出すが、すぐに光は消えた。
覆っていた手をどけると、そこにはさっきの炎と同じ青色の丸い珠があった。
「ふぅー、これが瞬間移動に必要な珠だよ。 これには、あなたと一緒にいたいっという願いを込めて作りました。どうぞ」
息を吐き捨て珠を結月に差し出す。 琴の顔と手のひらの珠を交互に見て、珠を親指と人差し指でつかみ、覗き込むように見てみると、珠の中で炎がゆらめいているのが見えた。
「あ、あの、どうして私にこれを……」
にこりと微笑むことを返事として、何も答えようとしない。 視線で僕に説明を要求してくるが、僕にもわからないから説明のしようがない。 ただ渡したかったから渡した。 そんな程度だろう。
「さて、簡単だけど僕たちのことは話した。 次はそっちなー」




