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三十八話 回転扉

 僕たちが家に着くことには結月が玄関にもたれかかって待っていた。


 「はい、おまたせー」


 手をひらひら振って言うと、「お腹減りました!」と空腹を訴えてきた。

 金を払ってからと言いたいが、ここは我慢。 まずは信頼度を高めることが最優先だ。

 とりあえず南京錠を外して家の中に入ると、もわぁっとした生暖かい空気が顔に張り付き不快な気分になる。


 「毎回、きついね」


 顔をしかめながらも琴が、窓を全開にする。 風が入り、生暖かい空気が流れていく。


「琴さーん、今日のご飯はー?」


 家に入るなり食卓に着いた、はらぺこ結月が言った。


 「そうだね……寒くなってきたし、鍋にしようかな。 保存してた食材もそろそろ腐りそうだし、丁度いいかな」

 「おお、鍋か! さっそく準備しないと!」


 食事に使う机を持ち上げ壁に立てかけ、元々机があったところの畳をめくると囲炉裏が出てきた。


 「うおおおおおお!! 天城さんの家は忍者屋敷ですか!! 他には、他には何があるんですか!」


 囲炉裏が出てくると目を輝かせて迫ってくる。

 ここまで食い付いてくると面白いな……。 ちょっと楽しくなってきた。

 窓の右横の壁に手をかけて、力を込める。 すると、壁が回転した。

 回転扉だ。 もし敵が攻めてきたら逃げるために作ったが、改装してから一度も使ってない。

 そもそも、敵が攻めてくることがない。


 「私もやりたいです、やりたいです!! 天城さん、代わってください!!」


 興奮ぎみの結月に戸惑いながらも場所を代わると、壁に背中をくっつけて壁を押して消える。 そして、一周して元の位置に戻る。

 笑顔で戻ってくると、また回転し始めた。


 「もう、遊んでないで手伝ってよ!!」


 とうとう琴からお叱りを受けた。

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