表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/49

二十四話 家、大事!

 「頭領、なんて?」


 今日の寝るところを頭領に相談に行ったはずの結月が天門の玄関先で膝を抱えてうずくまっていた。 服も営業用の着物ではなく、僕と会った時の水色の着物に着替えていた。


 「あばぁぎぃざあああああああんんんんんん!!!」


 鼻水を垂らしながらひどい顔で泣きついてきた。 うぐっ、僕の服に鼻水が……。


 強引に抱き付いてくる結月を引きはがし、懐から浅草紙を取り出し鼻を拭いてやる。

 しゃくりあげながら泣くのを我慢しようとしても、目からどんどん涙があふれてきている。


 「ね、寝泊りで、できる、ところは、も、もうないって、頭領さ、んが」

 「そっか、そっか。 じゃあうち来い! 泊める代わりに家事とかやってもらうけどね」


 もともと泊まれるところがなかったら泊めてあげるつもりでいたし、予定調和といえば予定調和だ。


 「それでいいだろ? 琴」


 僕の後ろにいることに一応確認を取るけど、はじめから答えは決まってたようで笑顔でうなずいてくれた。

 それを見た結月が思いっきり泣いた。 一度汚れたからもう汚しちまえ!

 わんわん泣いてることをそっと抱きしめて背中をぽんぽん叩いてあやしてやった。

 



 「ずいぶん濡れちゃったね」

 「そうだな……。 明日、晴れるかな……」


 自分の服をもう一度見ると、胸に大きな濡れた跡がはっきりと残っていた。 泣いてる結月を抱きしめた結果がこれである。 まさかここまで濡れるとは思わなかった。

 結月にとっては、それほどうれしかったことなのだろうか? 本人に聞いてみたいところだが、僕の背中で寝ている。

 どうやら泣きつかれて寝てしまったようだ。

 琴に提灯を任せて夜道を歩いていると、僕の袖を引っ張りながら楽しそうに言った。

 

 「ねぇねぇ、こうしてるとわたしたち夫婦みたいじゃない?」

 「夫婦?」 

 「ほらぁ、わたしがお母さんで、悠がお父さん! そして、花ちゃんがわたしたちの子供!!」


 その話はやめてほしい……。 さっき変に告白じみたことをやったせいで、琴と二人になると変に気まずい。 なのに、そんな夫婦なんて言われるともうおかしくなりそうだ。


 「ばかなこと言ってないで、早く帰るぞ。 今日はもう疲れた」


 興味なさそうに話を強制的に区切り、琴より先に行った。

 

 「ちょっとぐらいはいいじゃん! 付き合ってよ! わたしのこと好きなんでしょ! それに灯ないと転ぶよ!」


 ぷんすか怒りながら、僕の後を走って追ってきた。

 そして僕は、小石につまづいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ