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二十話 現実

 私はその後も一、二年ほど月見壮で四ノ宮さんの手伝いをしながら、妖の印象を聞いて回りながら過ごしました。 やはりみなさんの妖に対する印象はあまり良くないのですが、二、三人は一緒に酒を飲んで楽しかったと答えてくれました。 それを聞いた時は、うれしい気持ちでいっぱいになると同時に驚きでした。 確かに私たちは酒が好きでところ構わず飲むことはありますが、人間を誘って飲むなんてことは聞いたこともありません。

 ですが一年の中で一番驚いたのは、四ノ宮さんに告白をされたことですかね。

  あっはは、あれは驚きましたねぇ、今世紀最大の驚きです。 それに応えた私も我ながら驚きですけど……。

 告白された時は私の部屋でした。 顔を真っ赤にして来たときは何事かと思いましたが、まさか告白とは思いもしませんでした。 もちろん私も鬼であることを明かしましたけど、「それでもいい」と優しく抱きしめてくれておもわず泣いてしまいました。

 ですが、どこかで聞き耳をたてていた仲居さんが、私が鬼であることを仕事仲間に話したらしくそれからねずみ算方式で町全体に広まるのには1ヶ月もかかりませんでした。

 仕方なしに早めに町を出て、四ノ宮さんと山奥で住みました。 幸いなことに木こりが使っていた古屋があったので、そこを貸りて生活していました。

 生活そのものには何の不満もなかったのですが、半年したぐらいですか……。

 町の警備隊が大勢の侍を連れこの小屋に押し寄せてきて、私を殺しました。

 鬼だからという理由で殺された

 人に危害を加えたことがなくても鬼であるから殺された。

 人ではないから殺された。

 私を守ろうとした四ノ宮さんも仲間だと間違われ殺された。

 この世は不条理だ。

 怖いやつなら大勢で殺せ。

 人であろうが不安要素なら殺せ。

 殺させる前に殺せ。 人間の世のために。 人間の安全のために。

 私は人間も妖も安心して暮らせる道を作ろうとした。

 私と四ノ宮さんがうまくいけば、きっと周りも賛同してくれると思っていた。

 でも、それは私の希望であり、願望であり、単なる幻だった。

 人間は私たち妖とは生きていけない。

 人間は私たちを単なる化け物としか見ることができない。

 どんなに仲が良くても、どんなに愛してても、どんなに想ってても、妖と知った途端態度が変わる。

 化け物は殺せと。 人様の世界に入ってくるなと。

 私は絶望した。 こんな世は間違ってる。 この世は人間だけのものではない。

 この世はみんなの、この世に生きとし生けるものの世界だ。

 

 

 私は侍たちが帰った小屋で血だまりに倒れながら悟った。

 教えられた。

 (わたし)のせいで愛する人すら死なせてしまった。

 この世で

 人間と妖は共存できない。

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