九話 それでも、僕はやってない
少女が山菜を採りにいった山のふもとにやってきた。 僕を先頭に結月、琴の順に一列になって山に入る。 山の中は木々が日差しを遮り涼しくなっていた。
「頭領さんから聞いたのですが『天文』っていうみたいですね、天城さんたちの職場の名前」
結月が僕の服を引っ張りながら何気なく聞いてきた。
「突然どうした?」
「いやーただ登るのもつまらないので話しのきっかけをと、と思いまして」
苦笑いをしながら話しの続きを始める。
「そこで、今回は天城さんたちの職場について聞こうかなと思います!」
そんなこと言われても何を話したらいいものか……。 琴に目で助けを求めると、うなづき代わりに答えてくれるようだ。
「まず、名前の由来からかな」
琴が説明が始まり結月が身体ごと琴の方に向け、後ろ向きに山を登るという危険なことをやりだした。 それに驚いた琴が、いつ転んでも支えられるように腰を落としじりじり山を登る。
いつまで経っても話しが進まないことを疑問に思ったのか首をかしげ話しの続きを促すが、琴は結月を支えなければならない謎の使命感を帯びていた。
「結月、琴の隣いけ。そんな登り方じゃ、いつか転ぶぞ」
そうですねと答え、すててーと琴の隣に移動する。 やっと普通の登り方を始めたことに安心した琴が話しの続きを始める。
「わたしたちの仕事は、困ってることを助ける、いわばなんでも屋みたいな仕事なの。 でもそれは表の仕事で裏の仕事もやっているの」
「う、裏の仕事って……いやらしいことですか!!」
顔を赤くしながら身体を隠し、驚愕した。
「ち、違うよ!! わたしの身体は悠のものだから、他人には触らせません!!」
お前、そんなこと言うなよ! 変な誤解されるだろ!! ……ほらぁ、結月が変な目で僕を見る!
琴には、少しお灸をそえなければいけないみたいだ。
「裏の仕事っていうのは、変な仕事じゃなくて神様からの依頼だ。 それから琴、帰ったら少し話しがある……」
「話があるなんて言って、押し倒すですね! お風呂は済ませときます!」
親指をたて、「まかせとけ」といわんばかりにうれしそうにしている琴の頭を鞘で軽くたたき黙らせる。 結月の教育に良くないです。
一連の流れを笑って流した結月が話を元に戻すため質問をしてきた。
「神様の? でもどうやって神様からの依頼を受けるんですか?」
「神様から手紙がくるんだ。 それを受け取って仕事をしてる。 天から文がくるから天文って名前になったらしい」
「ちゃんとした理由があったのですか、納得です。 ……ところで本当に琴さんに手を出してないんですか? 寝てる時に胸揉んだりしてません?」
その後も『僕が夜な夜な琴にいやらしいことをしているか会議』で盛り上がり、無事山頂まで着いた。




