始まりの日
練習用の作品です!
昼は良い。
朝日も夕日も、目が痛くなってしまうからな。
そう思いながら彼は新聞を広げた。
トラブルバスターという職業にとって、日課の一つである。
だが、その大切にすべき日課を、二ページも読まないうち彼はやめた。
そして新聞を折り畳みながら彼は言う。
「おや、珍しい。お客さんかい」
扉の前に立つお客に彼は声を掛けた。
これには客来も驚いたことだろう。なぜならその人物は、まだ事務所のドアを開けていないのだから。
「入りなさいよ。大丈夫。鍵は掛かってないからさ」
安心させるような声を出して、客人を招く。
ガチャリ――部屋に響く音を聞きながら、彼はゆっくりとドアのほうに身体を向けた。
入ってきたお客は女性。
服装こそこのレンゲ地区で流行りの安っぽい服装だったが、彼女の髪を見てロッドは目を細めた。
(これは結構な身分じゃないか……)
カラカラ国では銀髪自体はそう珍しくはない。だが『絹のような』銀髪というものは、このレンゲ地区では、滅多にお目にかかれない。
この地区は、南の砂漠から海風によって運ばれる砂に、毎日苦しめられているのだ。
そのため、長い髪は傷みやすいという理由でこの地区の女性は短髪が多い。面倒で切らないという女性は、漏らさずその髪を傷めている。
「こちらの仕事はわかりますか? お客さん」
「え、あ、はい。トラブルバスター……ですよね?」
ロッドはゆっくりと頷いた。
「どうぞ」
続けて彼は、彼女をソファーに座るように促す。
彼女が座ったことを確認して、ロッドは聞いた。
「この地区の人間ではありませんよね。それなのに、中央からこんなところまで?」
「なんで……中央って……」
女性の目に怯えの色が広がったことを確認して、彼は質問を変えた。
「詮索はなしにしましょう。お互いに、ね。どんな依頼で?」
「あ、あの……父が……いなくなってしまって」
「ほぉ。それは立派なトラブルだ。結構、引き受けますよ」
「え!? あ、あの、内容とか料金とか」
彼女の言葉の続きを遮り、彼は立ち上がった。
「ここから中央まで一日はかかる。馬車なら二日だ。その間に聞いても問題ないでしょう?」
「で、でも、父が中央にいるかなんて」
「わかりますよ。大丈夫。あなたの父上は中央にいますよ」
彼はそう言いながら、後ろの木箱からコートと帽子を取り出す。
「そうそう。これは失礼」
彼は帽子を被りつつ、彼女を正面に捉える。
「私の名前はロッド・バルタザール。トラブルバスターのロッド。どうぞ、お見知りおきを」
机の上に畳まれている新聞の見出しには、この国の財務大臣が失踪した旨が書いてあった。この国ではそう珍しくない、太った初老の銀髪の男性の写真とともに。
○
二人は、エクシアと名乗る彼女が馬を停めたという停留所に来ていた。
「これは……いったい」
ロッドは眉をしかめた。
その停留所には多くの人が押しかけ、視界を目一杯に埋めている。
「こっちから行けそうですよ!」
「ああ」
結局、その人ごみを大回りに半周するはめになった。
そして行き着いた先で、ロッドはもう一度眉をしかめる。
今回はハの字だ。
群集を抜け彼が見たものは、翼を休めているペガサス二頭と、絢爛とした馬車だった。
(高貴な出だとは思ったが……ペガサス、とはな……)
今回の報酬に利潤を確信し、彼は口元を緩ませた。
「あ、あの、もしかして、良くありませんでしたか?」
「いえ。ただ、服装はこちらに馴染ませてあるのに、こっちは素直だと思いましてね」
クスクスと笑いながら彼は馬車へ進む。
「失礼」
御者に向かって、爽やかな笑顔を向ける。が、反応はない。
なるほど、きっと忠実な者なのだろう。
ロッドは改めてエクシアを見ると、彼女は隣の普通の馬車に乗る最中だった。
「……あっれー?」
ここまで読んで頂けて大変恐縮なのですが
ほかの作品で行き詰ったために書いたものですので
続きをいつ書くかはわかりません……
大変失礼いたしました