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自縄自縛な僕・三人の女神   作者: 松永 もっこり
23/27

夏休み 奈津美編 下


「それじゃ、作ろうか。と

言いたいところだけど、何作る?」


食材をバカのように買ったは

いいが、肝心のメニューは

決まっていなかった。


楓が買い物袋を覗いた。


「ひき肉、じゃがいも、にんじん

、ローリエ...。奈津美さん、カレー

作るつもりだったの?」


「え!?う、うん。」


奈津美は何故か焦っていた。


「まさか、奈津美。お前カレー

作れない....とか?」


おそるおそる聞いてみた。まさかな...

奈津美は顔を下に向けて

モジモジし始めた。


「お恥ずかしい事に...いつも失敗

してばっかりで」


「おいおい、マジか」


いやっ、カレー作れるのが普通

って訳じゃないしな。多分な...


「まぁ、いいじゃん!お兄ちゃん!

奈津美さん、カレー作ろう!」


「楓ちゃん、ありがとう〜!

可愛いなぁぁぁ〜」


奈津美は楓をぬいぐるみかのように

頬ずりをして抱きしめた。

奈津美の胸の圧力で楓の顔が

真っ赤だ。


「奈津美さん、胸で死ぬ!

潰される!」


「え?あっ、ごめんね気付かなくて」



奈津美って胸大きかったんだな〜。

いやっ!でかいからどうとかじゃ

なくてだな!



「お兄ちゃん、目がやらしい!

エッチなのはダメだよ!いくら

奈津美さんのが大きいからって」


「ば、バカッ。違うからな!」


「はいはい、もう、作ろうよ!

奈津美さん!」


楓が面倒くさそうに咲人を

あしらう。そそくさと野菜を

洗い始めた。


「う、うん。」


楓のせいで奈津美に変に

思われたかもしれないじゃないか。

勘弁してくれよな。


楓と同様野菜やらの下準備を

しながら、咲人はため息をついた。


「サッキーと楓ちゃん

なかいいんだね〜」


「まぁ、一応2人だけで長いこと

生活してるからな。奈津美は

兄弟いないのか?」


「いないよ、だから楓ちゃん

みたいな可愛い妹がいるサッキー

は幸せだと思うよ。」


「そんなもんかね〜。なぁ、カレー

のどの工程で間違えるんだ?」


「あー、ええとね。

いつも、焦がしちゃうんだよね」


「なるほどな、じゃあ今日は

最後の仕上げは奈津美に任せるよ」


「え!?いや、焦がすよ?

いいの?いいの!サッキー!?」


「いや、焦がす許可を求めるなよ。

大丈夫、見てやるから」


それからしばらくは順調に

カレー作りは進んだ。


「ねぇねぇ、お兄ちゃん。

コロッケカレーにしようよ〜」


「おっ、いいな。

じゃ、俺が作るから」


「うん。よろしく〜」


奈津美は咲人と楓のこの会話を

羨ましそうに聞いていた。


「サッキー、コロッケ作れるの?

私できないよ〜。サッキーってさ

料理もできるなんてすごいね!

未来の奥さんは大助かりだね!」


「ありがとな、今度教えるよ。でもな

まず、結婚できるかどうかだな」


「サッキーできると思うな〜。

カッコいいし、その...優しいし」


普段は笑顔ばかりの奈津美を

見慣れている咲人にとって

照れている表情は新鮮だった。


「ありがとな。奈津美も笑顔が

可愛いし、頑張り屋だから

問題ないと思うぞ。」


「か、可愛いか〜。ふ、ふーん。」


なんだかすごく上機嫌になる

奈津美だった。

その時だった。


「痛っ!?」


「おい、どうした!奈津美?」


「包丁で指切っちゃった...」


「ちょっと待ってろ。

楓〜すばらく作業任せるぞ。」


「うん、任せといて〜♪」


「奈津美、指出してみろ。」


奈津美はおそるおそる指を出した。

咲人が慣れた手つきで

手当てをしていく。


サッキーって本当に何でも

できるんだな。私なんかとは

すごくかけ離れてる。



「よしっ!終わり。

奈津美はあとは仕上げだけで

いいから、あとは休んでていいよ」


「うん、ごめんね。迷惑かけて。

サッキー手当てすごく慣れてと

思ったんだけど、お医者さんか

何か目指してるの?」


「あー、それか。小さい頃

楓がよく怪我してて、俺が

手当てしてたからな。

だから、慣れてるんだよ。」


キッチンの方から怒号が飛んできた。


「お兄ちゃん、余計な事は

言わなくていいからね!

早く手伝いに来てよ〜!」


「分かった、分かった。

奈津美は休んでろよ」



サッキーみたいな人が結婚する人

だったら、きっと幸せだろうな。

ん?サッキーがいいの?私?

...いやいや、そんなんじゃないよね!


そんな事を考えて、少したってから

咲人に呼ばれた。


「よしっ、仕上げだ。なるべく

弱火でじっくり温めたがいいんだ」


「弱火なの?私いつも強火でしてた

だから、焦がすんだ〜」


原因が分かった奈津美は

肩を落とした。


「それが分かっただけでも

良かったじゃないか。それなら

奈津美はもうできるだろうさ。

一応、俺がするから、見ててくれ。」


咲人の作業工程を近くで見ようと

奈津美は近づいた。

すると、半ば後ろから抱きついて

いるような格好になった。


「あ、あの奈津美さん?

言いにくいんだけどさ、その

当たってるんだけど...」


それを聞いた奈津美は顔が

みるみる赤くなっていった。


「ご、ごめんサッキー。」


「いや、別に謝ることじゃ

ないからいいんだけどな」


(柔らかくて気持ちよかった)

なんて言えないもんな!



出来たコロッケカレーを

机に並べ、咲人、楓、奈津美の

三人は食べ始めた。



「うん、美味しい!な、楓・奈津美」


「うん!これならいっぱい

お腹にはいるよ!」


「私が作るのとは天と地の差が

あるぐらい美味しいね」


しばし穏やかな時間が流れる。

穏やかな昼。しかし、

楓が壊すのだが。


「それで、奈津美さん。いつ

お兄ちゃんに頭を

撫でてもらったの?」


危うくカレーを吹きかけた咲人。


楓の奴、忘れてたと思ってたのに

ちっ!奈津美なんとか

ごまかしてくれ〜!!

咲人は奈津美に念を送る。

咲人の願い虚しく砕ける。


奈津美は幸せそうに語るのだった。


「クラスマッチの時にね

私がナイスプレーをしたからね

サッキーに頼んだの。

頭撫でて〜って」


「へ、へぇ〜。そうなんだ〜。

他にはあります?」


やめて!楓!顔が怖いよ!

お兄ちゃんそんな

妹の顔見たくない!よ!


「うーん。頭を撫でてもらうのは

それっきりかな。」


「ありがとうございます♪

あとで、お兄ちゃんとゆっくり

話し合いますね!」


楓の顔に思わず奈津美も

怖気付いてしまう。


「話し合い?う、うん。頑張ってね

あと、楓ちゃんちょっと顔怖いよ?」


「え?私ったらいけな〜い。

すいません。変な顔見せてしまって」



さっきから、楓のちょいちょい

こっちを見てくる視線に背中が

ゾクゾクする。これは今日

寝れないな。



美味しいはずのカレーも

なんだか冷めたように感じる

咲人だった。



.....


咲人は帰る奈津美を送ることにした。


「今日はありがとうサッキー。

今度は私一人で頑張ってみる。」


「おう、火加減だけ気を付ければ

だいだから。頑張れよ。

今度なんか作ったら俺に

食わせてくれよ。」


え?これって

一生俺に味噌汁を作ってくれないか

とかいう古風なプロポーズのこと?

いや!いや!違うよね?

なに勘違いしてんだか!私ったら

でもサッキーだったら別に

いいかな///....べ、別に好きでも

ないのにバカじゃないの?


「奈津美?大丈夫か?」


「うん!いいよ!ずっと

食べてくれる?」


上目遣いで咲人に聞いてみた。


「ずっと?あーそうだな。

作って俺が食っていいなら

ずっと食べるぞ」


夕方とはいえ、まだ日差しは強い。

そんな日差しには負けない今日一番

の笑顔で答えた。


「分かった!サッキーのためにも

私上手くなるね!」


「俺のため?よく分からんが。

応援するから、頑張れよ」


「うん。じゃあ、私の家はもう

近くだから。送ってくれて

ありがとう!サッキー。

じゃあね」


........


奈津美を送り、日差しの強い

綺麗な夕焼けの空の下を

帰る咲人だった。


そういえば、明日は生徒会で

大掃除するとか言ってたな

桜子先輩。久しぶりに会うな〜。

ついでに写真も届けよう。


...


この時咲人はまだ気付いていない。

少しづつだが、確実に歯車が

動き出していることに。






奈津美編が沙奈編より

薄い希ガス

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