第十五話 日々
6月30日22時37分、外線より、騎兵隊長室にて。
「ラヴィエルです。久しぶりですね、リンディ士官」
「もしもし?突然ごめんなさいね。もう2ヶ月も会ってなかったわね、そう言えば」
「ジョルジオの件は、失礼しました」
「隊長が謝ること無いのよ。誰にも迷惑なんて掛かってないわ。皆が然るべき仕事をしただけ。よくある事だもの」
「・・・壊れる人も、たまに居ますからね。この世界の環境じゃ仕方ないですけど」
「うふふ。ここでは時間の感覚すら変になるわよね。私なんかもう死んで30年以上経つのよ?地上だったら皺だらけだわ、きっと」
「俺だって、もう10年以上経ちますよ」
「もう、ここへ来て初めて会った人の顔なんて忘れちゃうわよね。皆居なくなるのは突然だもの」
「俺、気の済むまでここに居られると思ってました」
「私だってそうよ・・・初めて仲間が、居なくなるまでは」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・私、あと何年ここに居られるのかしら。早く結婚しなきゃ」
「何か、全然変わりませんね。地上の生活と」
「世知辛いわよね~~~。どうせなら地上と全く同じ環境で0歳からやり直したかったわよ」
「外見は若いから良いじゃないですか」
「逆に怖いわよ。歳とらない分、命の終わりも急に来るから」
「せめて皆の寿命を統一して、残りの年数を教えてくれたら良いんですけどね。自分がいつ死ぬかなんて、結局何回死んでも分かりません。きっと」
「不安になった天使がヤケになって堕ちるのも無理ないわよね。
・・まあ、一部の話だし、それにしても野蛮すぎるけど」
「自己表現の方法が地上とは桁違いなんですよね。
洗脳、幻視、街の破壊とか、色々。
科学技術だとか、俺達にも分からない非科学的な力によってそれが可能になってしまったんですね。
・・・誰にしろ、自分の主張を表現したいものです。けれど手段を問わない者が、はぐれ者になってしまう。俺は全て、それだけの事に思えます」
「ねぇ、訊いていい?隊長は勿論、悪魔や堕天使とは反対の正義を持っているのよね?」
「当然です。そもそも、それがこの世界の天使の定義じゃないですか」
「ゴメンなさい。時々、貴方どっちの味方なのか分からなくなるのよ」
「あくまで思想の範囲で収まれば、の話ですよ。犯罪者は許せません」
「そうよね・・・あ、ちょっと待って」
「―――もしもし?ちょっともうひとり『来た』みたい。17歳の男の子だって」
「大変ですね。それで、結局用事は何だったんですか?」
「え?ううん。大したことじゃないの。色々あって、大丈夫かしら?って」
「ああ、大丈夫ですよ。万事とは行きませんが、何とかやってます」
「そう、良かったわ。また近い内に顔を出すわね。リベルの様子も見たいし」
「是非、そうして下さい。それじゃ」
「・・・・ラビさんって、ホントは結構喋るんですね」
「!!
・・居るなら一声かけろよ。せめて見える範囲に来い」
「ラビさんがずっと窓見て喋ってたんじゃないですか!
折角サンディさんが誘ってくれたのに、隊長は来ないんですか?」
「あんまり好きじゃない。お前こそ楽しんで来いよ。主役なんだから」
「そんなぁー!ラビさんも行きましょうよー!」
「・・・?!お前、ちょっと飲んだのか?なんか少し・・」
「サンディさんはこの世界に20歳ルールなんて無いって言ってましたよ?」
「そうだけど・・・・・。
程々にしておけよ。明日は絶対非番にしないからな」
「はい!隊長!!」
「寝坊したら叩き斬るからな」
「はい!たいちょー!」
「リベル」
「?」
「先に死ぬなよ」
「・・・・・・・・・・はい、ラビさん!」
ここまでで、「宵」の完結です。
最後まで読んで下さった方、本当にありがとうございます!
続きを近々(1週間後くらい?)新シリーズとして書きます
感想、ご指摘、もし良かったら書いて行って下さい!!非常に励みになります。
挿絵も、最初の適当絵(ホント雑ですみません)から随時更新予定です。
最後になりましたが、皆の心の中に、少しでもリベルやラビさんたちがお邪魔できて、感無量です。
本当に、ありがとうございました!




