第十五話「神化──罪の数」
──ああ懐かしい。
これは走馬灯と言うやつだろうか?
トウマとバカやってレイを揶揄って、
そして怒られて.....
僕は何かあいつらに残せただろうか?
血に染まった目であいつらを見た。
──もうやり残したことはないと思ったんだがな.....
まあやり残したことがないって言っている奴ほど
やり残したことがあるのはよくあることだな。
次の瞬間、トウマが僕に気を取られて、
分身体の攻撃を喰らいそうになっていた。
「.....ッ!」
──僕の体は勝手に動いていて、
能力を使用していた。
境界によって、分身体を別のとこに送った。
ああ、もっと生きたい。
あの頃では考えられないほど!
みんなと同じ時間を過ごせたのが
どれだけ嬉しく、楽しく、幸せだったか!
──ああ誰か僕を【助けて欲しい】
その時、僕の体は眩く光り始めた。
能力の暴走それが頭に思い浮かんだ。
青紫だった髪は白銀になり
心臓を抉られた傷は穴が塞がり、
心臓は元の位置に戻っていた。
カイはその異様な光景に後退りし、
トウマとツムグは困惑していた。
ここで、意識を失ってしまったら、
レイの時みたいになってしまう。
忘れるなお前の原点を
──後悔を抱えて、
誰かの未来を守れるように、救えるように!
光が満ちてゆく、.....人間は進化する。成長を遂げ、知能を発達し、二足歩行などの様々な個性を手に入れた。
もしも、能力が発達していったら?それは神にも匹敵する力になり、
──【神化】
と呼んでも遜色ないだろう。
その力は境界という名前では表せないほどだった。
新たな名は
【界隙】──ほぼ全ての境界を無制限に操れると言っても過言ではない。
その異質な力にカイは何かを感じ取り、僕に触れようとしたが、
「.....?」
その手は僕に届くことはなかった。界隙で、カイがこちらに来ようとしたら戻るようにした。
「ならこれならどうだ!」
カイは僕の上にある建物を十個ほど増やして、
圧死させようとしてきたが、
僕が手を横に薙ぎ払った瞬間、デカい界隙を作り、
「へっ?」
今度はカイの頭上に浴びせてやった。
増やす能力で分身体を増やして囮にし、
分身体は塵になった。
僕は界隙を操り、分身や攻撃は全て、界隙によって吸い込まれて戻される。そして動いた瞬間、界隙によって戻される。
──詰み。
カイの頭にはその言葉でいっぱいだった。
「お兄さん。強いね.....」
カイはもの寂しそうにそう言った。
「僕の負けだよ。」
カイはあっさり負けを認めた。
なにか企んでいるのか?
カイは良くも悪くも少し昔の僕に似ている。
あの時の僕なら何をする?
「でも.....」
そう言いながら、周りにあるものを増やし続けた。
──まずい!やつの狙いは!
「能力の暴走。お兄さんと違ってね.....」
「.....お前、死ぬぞ?」
「ふ、ふふ、心配してくれているのかなぁ?大丈夫、このゲームは負けても君は殺すから。」
そう言い、カイは見た目が変わり、青紫から漆黒の髪になった。
「クソッ.....止められないよな。」
「安心しろキョウ、俺らがいて、お前がいるそれがリグレット部だ。」
キョウの肩にトウマは手を置いて、
「俺が引きつける。お前らが打開策を考えてくれ。」
カイはあらゆる物を増やしている。
分身体は無制限に作り、なんとかトウマは避け続けている。
カイ自身は空を飛び真顔で僕らを見ている。
やつはトウマに触り、トウマを増やした。
「へっ」
と見ているツムグはそう声に出した。増えたトウマは本人自身を殴った。
僕は手始めに石を投げた。
やつの頬に当たり、次第に回復した。
恐らく治癒力を増やしたのだろう。
普通の攻撃は届かない。なにか打開策は?
「私、何も思いつかないし、こうゆうの苦手だから、頼んだ!」
ツムグは思考するのを諦めたのか、そう言ってトウマの加勢に行った。
復元と界隙であの増やすを破る方法は何かあるか?──いやこれなら
「ツムグ!カイを復元で暴走する前に戻せるか?」
「そこまでは出来ないけど、復元で動きを止めるぐらいなら出来る!」
「わかった!そうしてくれ。」
ツムグは頷いた末にドンドン増える弾幕を避け、
触れようとしたが、直前で増やされてしまい、
分身の方を触れてしまった。
それは塵になり、本体に蹴られてしまった。
僕は界隙を使い、
増える分身体と危険になる落下物を処理しながら、
吹っ飛ばされているツムグを本体の上に出し、
触れさせようとしたが、避けられそうだったので、
トウマを界隙で移動させ、
トウマが後ろからカイをはがいじめにし、
その隙にツムグはカイに触れた。
復元の能力を使って、相手のありえない物を復元させようとしたら、相手がバグって十秒ほど動けなくなるのを利用して、今度は僕がやつに触れて、
「界隙」
と小さく呟いた。その瞬間僕の視点は暗転して.....
*
暗い世界でたった一人で泣いている少年がいた。その姿はまるで昔の僕みたいに.....
「君は.....?キョウだっけ。ごめんなさい。」
少年は体育座りをしたまま、下を向き俯いている。
その姿は、一般人を虐殺していたカイには見えず、
僕には後悔に苛まれている子供に見えた。
「カイであってるよね?」
「.....そうだけど少し違う。あれもカイであって、僕もカイ。」
カイは自分の手のひらを見つめるように語った。
「僕はあいつ。ネクロに洗脳された。そのまま虐殺を繰り返していくうちにそれを楽しむ僕がいた。」
「それが君らの知るカイだよ.....」
この子は僕だ。昔騙され利用されるだけされその中で虐殺にすらも楽しみを見出していた。僕に似ている。
「だから僕を殺しても、もう一つの人格がいるから意味がないよ。まあどっちも殺さないと洗脳されてるから意味がないけど。」
今の僕はこの子にどんな言葉をかけてやれるだろうか?昔の僕はどんな言葉をかけてくれれば嬉しいだろう?
──僕はカイの頭を撫でた。
「なんで.....?」
とカイは言いながら泣いている
「僕は人殺しさ、あいつがやった罪は僕なんだ。だから、だから.....!」
昔の僕は大人を信じられなかった。でもきっと、恐らく。
「や め て く れ よ」
カイは声を震わせながら、言った。
僕は強く抱きしめた。
「ツッ.....!」
僕ならきっと共感して欲しかった。
辛さを孤独を一緒に抱えてほしかった。
でも半端な言葉じゃ信用できない。
だから抱きしめる。強く、されど優しく。
「ッハ.....僕に優しくしたって意味ないのに」
そこから、何分か抱きしめて
「ありがとう。もう大丈夫。」
カイはどこか決心した顔で僕に告げた。
「お前のしたことは確かに悪いことだ。だが僕も小さい頃たくさん悪いことをした。人を殺しても楽しむようになったり.....」
僕は大きく息を吸い込んで
「だから僕らはきっと地獄に行く。だからと言ったらおかしいが、お前も一緒に罪を抱えよう。」
「.....ごめんねお兄さん一緒に地獄には行けない。だから待ってる。」
「それって.....」
僕が手を伸ばした時、最後に見えたのは、もう一人のカイが悲しみを含んだ顔で
「ありがとう」
と言った姿だった。世界は再び暗転して.....
*
横になって倒れていた。隣にはカイがいた。ツムグとトウマも不安そうに眺めている。
「ゴハッ」
隣から吐血したカイがいた。
【暴走の代償】
レイの時と同じだ。しかし、あの時みたいにサクはいない。あれから時間も経っている。
「ああ、もう少し生きたかったなあ
君とリグレット部に入れたらきっと楽しかったんだろうな。」
僕は涙を腕で拭きながら。
「安心しろ。いつか会いに行ってやるからそれまで待っとけ、それが僕がお前に与える罪だ。」
【ハハ、そんな悲しい顔されなくてもわかってるよ。キョウ。】
カイはそう自嘲気味に言って、息を引き取った。カイに僕の着ていた服を被せて、
「今から、お前を操っていたやつをぶち殺してやるから安心して」
【眠ってくれ。カイ。】
僕はあの頃と変わらない、星空を見つめながらカイが安心できるようにそう告げた。




