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「もし」シリーズ

最終面接

作者: 笛伊豆
掲載日:2026/02/08

優良な大企業にコネなしで挑む勇士。

だが。


超短編シリーズ。

すみません。飽きて放り出しました。

 長くて豪華な廊下に並べられた椅子に座って待っていると、僕の一つ前に坐っていた男がドアを開けて出てきた。

 呼ばれて席を立ってからまだ1分もたってない。

 案の定駄目だったらしい。

 涙目で肩を落としてトボトボと去って行く男。

 僕と同年代、いやむしろ同期か。

 見覚えはないから違う学園の学生なんだろうな。

 おそらくは最終学年。

 崖っぷちだ。


 早い奴は青田刈りということで、在学中に職場が決まっていると聞く。

 それどころか学園に入学する前から将来が約束された幸運な人もいるらしい。

 そんな奴、学園に通う必要ってないんじゃないのか?


 だけど知り合いに聞いたら行く先が決まっていても油断は出来ないそうだ。

 成績が落ちたり何か不祥事があったら断られることもあるし、特に男女関係のスキャンダルは致命的だ。

 時々派手な交際が明るみに出て切られた奴が学園も退学になってどこかに消えたりすることもあるという。


 僕たちみたいにそんなコネがない連中はもっと酷い。

 品行方正で成績優秀だとしたって引き取ってくれる相手がいるかどうか判らない。

 学園の評価は高いのにイケメンじゃないとか不細工とかで拒否されることもあるらしい。

 特に清潔さは重要で、だから僕も今朝は2回もシャワーを浴びた。

 香水もつけようかと思ったけど逆効果になるという話を聞いて断念した。


 せっかく最終面接までこぎ着けたのだ。

 散々断られてもう後がない。

 ここで駄目だったらもう立ち上がる気力が残っているかどうか。


 ライバルは多いし採用枠はたった1名だ。

 頑張るしかない。

 もうすぐ名前が呼ばれる。

 僕はポケットから取りだした「募集要項」をもう一度確認した。


 アララット伯爵家嫡女婿募集


    本年度卒業見込み

    専攻不問

    爵位不問

    業務内容:伯爵領統治補佐

    ……………


 アララット伯爵家は最近業績を伸ばしている優良領地家だ。

 それがなぜ今になって入り婿を求めているのかというと、婚約者だった某侯爵家の子息が男爵令嬢か何かと駆け落ちしてしまったからだという噂がある。

 だからこそこの時期になって伯爵家の入り婿という美味しすぎる職場が空いたわけで。


 伯爵家。

 おそらく最終試練は激烈な圧迫面接になるだろう。

 さっきから一人ずつ呼ばれて面接に向かった連中は全員すぐに叩き出されている。

 貴族のお坊ちゃんたちには耐えがたい圧迫のはずだ。


 だが僕は負けない。

 これでも前世では百通以上のお祈りメールを受け取りながらも就職を果たした男だ。

 職場はブラック企業だったから虐待には慣れている。

 アララット伯爵家がどんな圧力をかけてきても耐え抜いてみせる!


 僕の名前が呼ばれた。

 立ち上がる。

 さあ行くぞ!

 社畜のど根性を見せてやる!




「御家を志望した理由としましては、近年著しく発展している領地の将来性を鑑みて……」

「チェンジ」


いくら打たれ強くても実力がなければ。

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