この町はアシーダ〜バンドーン(門番)
今日もいい天気だな。
今の時間帯は、ゆとりがある。
朝は、冒険者たちが町の外に出て依頼をこなすため、ガヤガヤしている。
その時間はとっくに過ぎた。
夕方から夜にかけても同じだ。
戻ってきた冒険者たちが、討伐した魔物を抱えて戻ってくる。
慣れてはいるが、血なまぐさい。
もうちょっと、キレイに解体して持って帰ってこられないもんかね?
今はその間の時間帯だ。
そんないつもと変わらない日常に現れたのが、やたらと丁寧な話し方をする坊主だった。
あとで確認したら、成人してたけどな。
12歳くらいに見えてたぞ?
しかし、あの坊主、本当に田舎から来たのか?
やけに礼儀正しいし、身なりのちゃんとした、良いところのおぼっちゃまって感じだったぞ?
判定の魔導具のことも身分証のことも、何も知らないようだった。
貴族なら、実物を見たことはないかもしれないが、判定の魔導具の存在くらいは知っているはずだ。
知らなかったからと言って、田舎から来た平民と言い切ることも出来ないよな?
坊主は黄色味の強い茶色のような髪で、瞳は薄い紫色っぽい感じだったな。
どこにでもいる色合いの成人になりたてのまだ子供のような坊主だった。
髪や瞳は、魔力の属性に左右される事が多いことは周知の事実ではあるが、知らない人も少なからずいる。
自分たちと同じ色ではない子供を捨てたり、虐待したりする親も残念ながら存在するのだ。
赤髪や赤い瞳なんかだと火属性が使える可能性がある。
水色や青の瞳や髪などは水属性が使えるかもしれない。
茶色なんかは、火属性かもしれないし、土属性かもしれない。
緑の瞳は風属性の可能性。
緑色の髪の人は見たことがないな。
もっと都会とかにはいるのかもな?
紫色は火属性と水属性、両方の可能性があると言われている。
なんで、火と水なんだろうな?
金髪や銀髪は、王族や貴族に多く3属性や4属性を持っていたりする。
だから、坊主は3属性をもっている可能性があるのではないかと思ってしまったんだよな。
だから、平民か疑わしく思える。
しかし、あれで本当に冒険者をやるのか?
大丈夫なのか?
荷物は肩に斜め掛けしたカバンひとつだったぞ?
武器はどうした!?
剣とか槍とか弓とかは?
防具は?
胸あてとか盾とかは?
魔法を使うなら杖は?
そのどれも持ってなかったぞ?
本当に冒険者になるつもりなのか?
どこかの貴族の三男坊とか四男坊とかじゃないのか?
髪も顔も汚れていないし、着ていた服だって田舎から旅してきたって言うよりは、その辺まで馬車で来た、と言われても納得出来るくらい汚れていなかった。
貴族のボンボンだと言われた方が、しっくりくるんだがなぁ。
本当に貴族なら、それはそれで心配になるな。
あれじゃ他の貴族と渡り合えないだろう?
高慢な感じはしないし、傲慢な感じでもない。
俺たちみたいな平民をバカにするでもないし、それ以上に素直すぎる。
門番に対して、あんなに丁寧に話す貴族なんていないだろうな。
少なくとも俺は出会ったことがねぇな。
貴族は門を通る時に、馬車から降りても来ないしな。
あの坊主は、謎だな。
まぁ、本当に冒険者をやるなら門を通るだろうしな。
気にしといてやるかな。
やたらと門番に心配されていることを、ミゲルはまだ知らない。




