最初の町アシーダ
へぇー!
ラノベみたいだな。
最初の感想は、そんな感じだった。
町はぐるっと壁で覆われているみたいだ。
魔物とかやって来るのかな?
って、そりゃ来るか。
村道にも結構いたもんな。
出入りするには、あの門を通るんだな?
あっ、身分証的なものが必要なのか?
細かいことは、父さんたちに確認するのを忘れたな。
「こんにちは」
俺は門番さん?兵士さん?に声をかけた。
「おう、坊主どうした?」
「冒険者になりたくて、田舎から出て来たのですが、身分証みたいなものが何もありません。どうしたらいいですか?」
門番さんは、俺をジロジロと見ている。
あれ?なんかおかしかったか?
「ずいぶん丁寧な喋りだな。本当に田舎から来たのか?」
怪しまれてる?
大人だった前世の記憶があるからな。
社会人として丁寧に話すのが普通だったんだが…。
ここでは、それは普通ではないのか?
「本当ですよ」
丁寧すぎるのもダメなのか?
「まぁいい。ウソをついてもすぐにバレるからな?」
んっ?どういうことだ?
首を傾げてると、
「こっちに来い」
と、呼ばれる。
詰所みたいな感じか?
「坊主、名前は?」
「ミゲルです」
門番さん?は、何かの道具を指で示して、
「ここに手を置いて、少し魔力を流せ。あっ、魔力の扱い方はわかるか?」
俺は頷いて、言われた通り手を置いて、ほんの少しだけ魔力を流す。
それは、青く光って何かプレートのようなものを生み出した。
すげぇ、マジでファンタジーだ!
「ほらよ、これは仮の身分証だ。これを持って冒険者登録をして来い。登録出来たら、これは返しに来いよ」
おっ、ラノベでよくあるヤツだな。
「わかりました。さっき光ったのはなんですか?」
何かを確認したんだよな?
「あれは、嘘を言っていないかの確認と犯罪歴の有無を調べたんだ」
おー、これもラノベあるあるだな!
「なるほど、俺は大丈夫ってことですか?」
「あぁ、青は問題ないぞ。赤だったら町には入れることは出来ないからな」
なるほどね。
「ありがとうございました。町の出入りにお金は必要ですか?」
ほら、ラノベだと、身分証がないと銅貨何枚とか銀貨何枚とかの通行料みたいのを払わなきゃダメだったりするじゃん?
「いや、必要ねぇよ。他の国じゃどうかしらんが、この国は身分証があって、犯罪歴がなければ自由に出入り出来るぞ」
おー、すごいな。
「教えていただきありがとうございます」
門番さん?…あーもーめんどくせぇ。
もう門番さんでいいか!
門番さんは、顔を顰めてから、言った。
「ちょっとお上品すぎるぞ?そんなんじゃ、他の冒険者に舐められて絡まれるだけだぞ?」
「そうなんですか?」
門番さんの眉がピクっと上がる。
おっと、丁寧なのはダメなんだったよな。
「そうなのか?…みたいな感じで大丈夫かな?」
これならどうだ?
「まぁ、まだ丁寧だか、さっきよりはその方がいいと思うぞ」
「わかった!ありがとう!」
「おうよ、早く冒険者登録して来い」
俺は門番さんに手を振って、アシーダの町へと入った。




