本来の要件は断りたい〜サイジュ(冒険者?)
って、兄上の話ってこれだけじゃないよな?
だったら、わざわざ来る必要ないんじゃないか?
「サイジュ、覚えてると思うが、6の月の5の週は必ず家に顔を出せよ?」
そのための念押しかよっ。
「どうしてもですか?参加しないといけませんか?」
「当たり前だろ」
家に顔を出すのは良い。
母上の誕生日だからな。
けど、なぜ舞踏会にまで参加しなければならない!?
「ご令嬢の相手とかしたくないです」
「そんなのは、俺も同じだ」
そうでしょうけれども!
俺は放蕩息子なんですから、放っておいてもらえないんですかね?
ご令嬢たちは、流行りのドレスと化粧と香水で、誰が誰だかわからないのが現状。
そんな中から、婚約者を選ぶとか不可能だろ!?
王太子であるフォリー兄上は、すごい。
幼馴染でアングリュール公爵のご令嬢ティタニナーリア嬢と子供の時に婚約している。
兄上が自分で決めたと聞いている。
昨年、フォリー兄上と【婚姻の儀】を交わし、王太子妃となっている。
現在は王妃教育とかで、忙しくしているらしい。
子供の頃から続いている王妃教育がどれだけ大変なのかわかるよな。
長い真っ直ぐな銀髪で、柔らかな金の瞳。
【聖女】の職業を与えられた癒しの美女で、
【聖なる光りの乙女】という二つ名を持つご令嬢、義姉上である。
バトル兄上は、アンジュール侯爵のご令嬢である【戦姫】の二つ名を持つミネルヴァ嬢との婚約を願っていたはずだ。
俺的にはとてもお似合いだと思ってるし、正式に決まればいいなとも思ってるよ。
【戦姫】ミネルヴァ嬢は、王国騎士団団長のバトル兄上の副官でもあるしね。
戦う姿はとても美しい、と聞いたことがある。
戦ってる姿は見たことがないけどね。
紅の髪に翠玉の瞳のキリっとした麗人という感じだ。
けど、そうするとだ。
残りは俺しかいないわけだ。
王家の残りの三男坊。
不真面目王子って呼ばれてるらしいよ、俺。
いつもは表に顔を出さない俺が、表に出てくるのが父上である国王陛下の誕生祝賀舞踏会と母上である王妃殿下の誕生祝賀舞踏会くらいである。
その母上の誕生祝賀舞踏会が来月6の月にある。
こんな俺でも、王族の端くれ。
それはそれは、色んなご令嬢に囲まれることになるのだろう。
苦行でしかないのだが!?
母上の生家のアンリパァール公爵のご令嬢はまだ3歳だから除外される。
じゃないと、俺に幼女趣味の噂が持ち上がってしまう。
それは勘弁してほしい。
アンヴァール侯爵のご令嬢は、フォリー兄上と同年代なので、王家に嫁ぐのはそろそろ諦めていただきたい。
申し訳ないが、年上は好みではない。
問題なのは、残りの2人だ。
アンミュール伯爵のご令嬢ソーニャ嬢。
アンファール伯爵のご令嬢クリィチャ嬢。
どちらも同じ年のご令嬢だ。
だが、俺はどちらのご令嬢も苦手だ。
いや、苦手というよりも嫌いだ。
嫌悪感しか感じない。
子爵家や男爵家など、伯爵家よりも下の身分のご令嬢を見下した態度に、嫌がらせの数々。
平民に対しての横暴な振る舞い。
貴族令嬢としての立ち居振る舞いではない。
醜い性根は隠せるものではないんだよね。
冒険者をしていれば、領主の娘の噂話などはたくさん聞こえてくる。
この2人はまったく良い噂を聞かないのだが。
噂だけで決めつけるのはいけないよな。
まぁ、実際にクリィチャの方は、平民に対する態度を見ているしな。
俺がどこで冒険者をやっていると思う?
アンファール領だぞ?
そんな人物を王族に向かい入れる!?
100%ない。
あり得ない。
ソーニャの方も、アンミュール領で探らせている。
こちらもクリィチャと変わらないと報告が上がってきている。
何を勘違いしているのか。
何様のつもりなのか。
とにかく俺は、現在の6領主のご令嬢から婚約者を選ぶつもりはない。
むしろ結婚しなくてもいいくらいなんだが?
そうすると、母上に泣かれそうなんだよな。
努力はするが、期待はしないで欲しいところだな。
どうしたもんかな。
バトル兄上は、俺に帰省する約束をさせて、王都へと戻っていった。
とりあえず俺は、ゆっくりアシーダへ戻るとしようか…。
気が重いな。




