もうランクアップだと!?〜ジーライ(ギルマス)
「ギルマス、ご相談が」
受付で1番仕事の早いカティーナが、俺の執務室に飛び込んできた。
珍しいにも程がある。
「嫁にでも行くのか?」
思わず言ってから、しまったと思ったところで、すでに遅いんだよな。
「辞めさせたいんですか?」
「違う、すまん。カティーナがここに来ることがないから、何事かと思った」
申し訳ない。
「すまん、それでどうしたんだ?」
「先ほど、ミゲルくんが見習いを卒業しました」
ミゲル?
「ドブ掃除の坊主か?」
「そうです」
もう見習いを卒業しただと!?
「ドブ掃除って、全区画終わってたか?」
「いえ、半分未満ですね」
マジかよ。
ヨーゴも乗り込んで来るんじゃないか?
「カティーナの用事は、ミゲルのことか?」
「いえ、ミゲルくん絡みといえばそうかも知れませんが…」
なんだ?
「ミゲルくんに聞かれたんですよ。見習いのための講習みたいなものはないのか?と」
「講習だぁ?」
「はい、一回銅貨何枚かで、解体の仕方や採取の方法、読み書きなどを教えたらいいんじゃないか?って、引退してヒマにしている元冒険者にお願いしたらどうかと」
ふむ?
確かに、一考する価値はあるかも知れない。
血抜きや解体が下手で、ホーンラビットの肉が美味くないと屋台などの親父たちから苦情が来ていたな。
ホーンラビットの肉もミゲルのしか売れてないんだったか?
見習いを卒業したら、ホーンラビットは狩らなくなるんじゃねぇか?
やべぇな。
「講習の件は前向きに考えるが、参加する見習いはいるのか?」
「費用によるかと…」
だよなぁ。
まともに薬草採取出来る見習いは少ねぇし。
討伐は出来ても、ボコボコにしないと倒せない奴らが多い。
だからこそ、ミゲルは際立って目立っていた。
薬草に雑草は混じっていない。
討伐も、食用部位には傷を付けない。
解体も査定にプラスが付くほどの腕前だ。
そんなミゲルなら、銅貨数枚くらい問題ではないだろうが、他の見習いは成人してるとは言え、毎日食い繋ぐのがやっとのやつらばかりだ。
そんな奴らが講習の費用を出してまで、参加するかどうか…。
「検討はしてみよう。今すぐどうこう出来ることでもないからな。受付業務に戻りたまえ」
「承知しました」
カティーナは綺麗なお辞儀をして、部屋を出て行った。
案自体はとても有益に思える。
ちゃんと検討する価値は間違いなくあるだろう。
本部に打診してみるのもありか?
費用を捻出することが出来れば、見習い達が講習料を負担しなくてもいいかも知れん。
それなら、マシな冒険者を増やすことが出来るんじゃないか?
そのためには、費用はギルド持ちでなんとか出来るといいんだが…。
カティーナが、去ってからすぐにヨーゴが俺の名前を叫びながら飛び込んできた。
やっぱりかよ。
「ジーライ!」
「なんだ、騒々しい」
幼馴染でもあるヨーゴは、普通にギルマスの俺の部屋に出入りしてくる。
ちゃんと段階を踏んで来いと、いつも言ってるんだがな。
しかもノックもしやがらねぇし。
「ミゲルが見習いを卒業しちまった!」
「そうだな」
そりゃ、あんだけ真面目に依頼こなしてんだからなぁ。
無駄もねぇしな。
アイツ、使えるよな。
上手いこと使っていかねぇとな?
「まだドブ掃除終わってないんだよ!」
「それはお前の都合だろ?今まで誰もやらなかったことをミゲルは出来るだけ終わらせてくれたんだろ?それだけでもすげぇじゃねぇか」
ギルドの周辺は、キレイになってるしな。
クサくなくなったしな。
「ランクアップしても、ミゲルにドブ掃除やってもらえないのか!?」
「町の中の雑用は、見習いの作業だからな」
情けねぇ顔してんなよ。
「ミゲルに指名依頼とか出来ねぇのか?」
「指名依頼だぁ!?Fランクにか!?」
そんなの聞いたことねぇな。
「もし、指名依頼出来るとしてだ。ちゃんと指名依頼料とFランク対応の依頼料払うんだろうな?まさか見習いの雑用依頼料で済ますつもりじゃねぇよな?」
そんなんだったら、絶対に受付ねぇけどな。
なんで、何も言わねぇんだ?
「まさか、お前。見習い待遇で済ますつもりだったのか!?そんなの絶対に許さねぇからな!?」
これでも俺は、冒険者ギルドのギルマスだからな?
冒険者を護るぞ。
使えるやつを潰すわけにはいかねぇからな?
ヨーゴ、お前の都合など知らん。
おいこらっ!
目が泳いでんぞ?
「Fランクに指名依頼を出したら、どのくらいになる?」
「AランクだろうがDランクだろうが指名に大銀貨1枚。あとは依頼内容によって報酬は変わる」
Sランクなんかは、大金貨や白金貨などが報酬なのは当たり前だ。
Dランクだって、銀貨や大銀貨の報酬だ。
Fランクの依頼の報酬は、大体が大銅貨8枚から銀貨1枚と大銅貨3枚くらいの間だ。
しかも話を聞いたら、見習いの雑用時も最低報酬の大銅貨3枚しか払ってなかったと言いやがる。
Fランクなのに、それで済まそうとするなんて、話にならんからな。
しかも指名依頼でだぞ!?
ふざけるにも程がある。
「ミゲルのあの仕事ぶりを見て、大銅貨3枚からプラスしなかったお前の面の皮の厚さに驚く」
ありえねぇだろ!?
あれだけの仕事をしてるんだぞ!?
続けてもらいたいなら、報酬は増やすのが普通だろ?
見習いだからわからねぇと思って、利用するなら冒険者ギルドとしては、今後ヨーゴの依頼は受理しねぇぞ。
そう言い捨ててやった。
「…」
無言かよ。
「あと何区画残ってるんだ?」
「…24区画」
まだそんなに残ってるのか。
「それなら、24区画まとめて、指名依頼料込みで、大銀貨4枚だな」
ヨーゴは、ヒュッと息を飲んだ。
「高くねぇか?」
「嫌なら、1区間ずつ指名依頼料の大銀貨1枚と報酬の大銅貨8枚を払うか?」
1区間ずつ指名依頼料払えば、それだけで大銀貨24枚になることくらいわかんだろ?
「…わかった。24区画まとめてで頼む」
さて、ミゲルが受けてくれるといいんだが。
「ミゲルが受けるかどうかはミゲル次第だからな」
俺は、帰ろうとしているヨーゴの背中にそう言って、追い打ちをかけた。
少しは反省しやがれっ!
使えるやつは、長く使うのが当たり前だろ!?
お読みいただきありがとうございます!
もしよければ評価もおねがいしますm(_ _)m
トーヤのテンションがあがります(笑)
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