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生まれたその日にダンジョンに捨てられた俺はドラゴンに育てられる  作者: トーヤ


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3/11

記憶

父さんたち、驚いてたな。


そりゃそうか。

生まれてからの記憶が全部あるなんて、そんなこと思うわけないよな。


俺を産んでおきながら、ダンジョンに捨てた人族を、俺は憶えている。

親だとは思いたくないし、思ってもいない。


俺の両親は、ザランデュエル父さんとリデル母さんだ。


忘れることの出来ない記憶の片隅にうっすらと、アイツらのざらついた声が耳に残っている。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



『こんな呪われたような赤と青の目をしたガキだなんて』


そう言って、自分の子供を見る視線ではないものを、俺に向けている。


ただのオッドアイだろ?

生まれたばかりなのにそんな知識が俺にはあった。


目の前で騒いでいる男女のどちらの目の色も薄い茶色だった。

生まれたばかりなのに、ちゃんと目が見えてるな…不思議なこともあるもんだ。


なのに、俺は赤と青らしい。

隔世遺伝か?

それとも何かのチカラが働いているのか?


『どうするんだい、あんた』

『あぁ?ここで殺したら面倒なことになるからな。ダンジョンに捨てちまえばいいだろ。そしたら勝手に死ぬだろ』


ダンジョン!?

ここにはダンジョンがあるのか!?

って、捨てて殺す算段は止めろよな。


『そうね…ダンジョンなら死体は、ダンジョンに飲み込まれちまうんだったね』


えっ?

何?

マジで言ってんの!?

生まれたばかりなのに、また死ぬのか?


また…。

そう思う俺は、日本で32歳まで生きた記憶がある。

たぶん、ここは異世界ってことなんだろう?

そして、これは異世界転生ってやつなんだと思う。


転生して早々、俺はまた死ぬのか?

前世の名前は覚えていない、今世では名前すらない。

何ひとつわからないまま、何かをすることさえ出来ないまま、俺はまた死ぬのか…?



前世では、結婚を考えていた彼女がいた。

ある日彼女は、


『あなたよりお金持ちの彼と結婚するから、あなたにはもう用はないわ。さよなら』


とメッセージだけを送って来て、それっきりだ。

俺からは2度と連絡がつくことはなかった。


彼女が浮気をしているなんて思いもしなかった。

仲良く上手く過ごしていると思っていた。

それは俺だけだったようだがな…。


そこからの記憶は朧げだ。


ぽっかり胸に空いた穴を埋めるために、夜中まで残業を繰り返したのだろう。

そんな記憶は残っている。

そして、たぶん死んだのだ。

過労死だろう。

職場で死んだのか、部屋で死んだのか…

どこで死んだとしても、誰かに迷惑をかけてしまっているだろう。

もう謝ることもできないが…。


そんなことをつらつらと考えているのも、この命が尽きかけているからだろう。


生まれてから何も食べていないし、何も飲んでいない。

ダンジョンなんかに捨てなくても、ほっとけば死んだんだろうけどな。

死体が残らないようにダンジョンに捨てて行ったのだから、なんだかなぁ、とは思うけどな。


そこに、冒険者っぽい2人組が目の前に現れた。

銀髪で深海みたいに濃い青い瞳の超絶美女と赤銅色のような赤髪と赤い瞳の超絶イケメンだ。


「どうして、こんなところに赤ん坊が?」


美女の言葉に、イケメンが答える。


「精霊が言うには、瞳の色が不吉で不気味だからと、人族が捨てて行ったらしい。死ねば死体も残らないからとダンジョンに捨てに来たらしいぞ」


今、精霊って言ったよな?

精霊なんてのもいるのか!

しかも、イケメンは精霊と話せるみたいだぞ?


「なんてことを!」


なんだ?

息苦しい。

呼吸が出来なくて、ふみゃふみゃと泣くしか出来なかった。


「リデル、威圧が漏れてる、赤子が苦しがっているぞ」

「あっ…ごめんなさい」


リデルと呼ばれた美女は、慌てて呼吸を整えていた。


あっ、苦しくなくなった。

よかった。

息が出来る。


「あら!この子の瞳を見て?ザランデュエル」

「どうした?」

「右目が私の色で、左目があなたの色よ?どこが不気味なのよ?」

「おー、本当だな」


美女が、良いことを思いついたわって、両手を合わせて言った。


「連れて帰りましょう!」


マジで?

俺、死ななくてもいいのか!?


「はっ?連れて帰ってどうするんだ?」


そうだよな、冒険者なのに赤ん坊とかジャマだよな…。


「もちろん私たちの子供として育てるのよ!」


拾ってもらえるのか?


「いや、しかし我ら龍ぞ?」


龍!?

今、龍って言ったか?

龍ってことは、ドラゴンか?

ドラゴンのいる世界なのか!?

ファンタジーだ!!


「そうだけど…人族が成人するのなんてほんの15年とかよ?そのくらい人化していても問題なんかないじゃない?」


そうか、人化してるのか!

やっぱりファンタジーだな!


「それはそうだが…」


イケメンは、渋っている。

普通はそうだよな。

ちょっと生きられるかもと期待してしまったから、死にたくないな。


「ねっ?お願い!こんなに可愛いのよ?」


うるうるの瞳で、見上げる美女のお願いにイケメンは負けた。


イケメンはでっかいため息を吐いてから、


「わかった」


と、頷いた。


「ありがとう!!!」


美女は、イケメンに抱きついている。

うん、美男美女は目の保養だね。

けど、そろそろ俺は限界なので倒れます。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



そこから15年の間、俺は2人の子供として思いっきり可愛がられて育てられた。


本当にありがとう。


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