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生まれたその日にダンジョンに捨てられた俺はドラゴンに育てられる  作者: トーヤ


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見送り〜ザランデュエル(父)

「あの子、本当に大丈夫かしら?」


まだちょっと鼻を啜るように話すリデルに、


「どうしてだい?」


俺は、聞き返す。


「だって、ザランデュエル?

あの子【転移】で戻ってくるって言ってたわよ?」

「言ってたな」


それがどうしたんだ?


「人族って、【転移】の魔法って使えなかったんじゃないかしら?」

「あっ…」


そうだったな。

人族との交流なんて、たぶんもう何十年も前に途絶えているから忘れていたな。


あの頃、友誼を結んだ友、アルランバートも、もうこの世にはいない。

永遠の眠りにつくのを、自分の目で確認したのだから。


アルランバートは、この国の王家の血筋だったよな。

確か母は第3王妃のルクレティナーリアだったか?

リデルと仲が良かったな。


まだルクレティナーリアが少女の頃に、他の侯爵家のルクレティナーリアより少し年上の娘に、湖へと突き落とされたのだったか?


後で聞いた話では、ルクレティナーリアの美しさに嫉妬しての事だったらしいがな。

王子に自分を選んでもらいたかったのだと、言っていたらしい。

もちろん王妃候補からは外され、修道院へと送られることになったようだった。

少し考えれば、バレた時にどうなるかなんて、わかりきっているのにな?

浅はかな娘だったな。


まだ少女であったルクレティナーリアは、その頃から目立っていたようだな。

まっ、リデルのほうが、美人だがな。


王妃候補の筆頭ではあったが、実家が伯爵家だったため、正妃にはなれなかったらしい。

そもそも人族の嫉妬や自尊心は、凄まじかった。


公爵の娘が第1王妃として正妃に決まるまで、

正妃である第1王妃の父親の公爵、第2王妃の父親の侯爵が、

水面下で第3王妃の伯爵家に圧力をかけていたのは、明白だったんだがな。


ルクレティナーリアは、自ら第3王妃を願ったとのことだった。

王妃を断ることが出来ない以上、そう願うしかなかったらしい。

目立ちたくないから、第3王妃でいいのだと。

面倒なことには、巻き込まないでほしいのだと。

リデルに、話していたようだ。


話が逸れたな。

湖に落ちたルクレティナーリアを助けたのがリデルだった。

その後、2人は何やら意気投合して、リディ、レティと呼び合うほどに仲良くなった。


その縁で、アルランバートとも知り合った。

生まれた頃から知っていたからな。

成人し、王家からも離籍し、公爵家の当主としてアンリパァール公爵領を納めていた。


俺たちは、あのアルランバートがいる領が好きだった。


南に位置していたため、温暖な気候で、海があった。

実り豊かな穏やかな町が多かった。

他国と接する箇所がなく、平和で平民も皆、笑って過ごしていた。


俺とリデルもよく人化して、遊びに行ったものだ。

ルクレティナーリアとアルランバートは、俺たちが龍であることは知っていたが、他のものは知らなかったはずだ。

容姿の変わらない俺たちを不気味がっていたからな。


人族の寿命は、短すぎる。


確かアルランバートの孫娘か?その娘だったか?が、今の王のただ1人の王妃のはずだ。


昔を思い出していたところへ、リデルが続ける。


「しかも、私たちが魔法を教えた事で、人族が使う魔法とは違う可能性があるんじゃないかしら?」


確かに俺たちは、龍族特有の魔法を使う。


「いやでも、普通に使えてたぞ?」


そう、ミゲルは教えたら使えたのだ。


「そもそも、龍族の魔法をなぜミゲルちゃんは使えるようになったの?」


普通に教えたら使えたから、今まで気にしたことがなかった。

言われてみれば、どうして使えるんだ?

やはりあれが関係しているのか?


「ミゲルの魔力量も人族のそれではないな?」


リデルは頷く。

そうして、もう一度言う。


「あの子、大丈夫かしら?」


ミゲルの姿は、もうすでに見えなくなっていた。


「ちょっと飛んで見てこようか?」


俺がそう言うと、


「やめておきましょう。あの子はきっと、気づいてしまうわよ」


リデルは首を横に振る。


「そうだな」


俺たちは、ミゲルが会いに帰ってきてくれるのをここで待っていることにしよう。

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