現アンファールの浅い企み〜ボークーン(アンファール領主)
「お父様、いつになったらアルサイジェス様は私の旦那様になって下さるの?」
儂の可愛いひとり娘のクリィチャの問いに、昨年の出来事を思い出す。
昨年の王妃様の生誕を祝う舞踏会で、アルサイジェス第三王子に呪いの種を仕込んだ。
難しいかと思われたが、たまたま本当にたまたま千載一遇のチャンスが訪れたのだ。
直接触れることが出来なければ、成就しない類いの呪いだった。
儂が他の参加者とぶつかって倒れそうになったところを、アルサイジェス第三王子が手を貸してくれたのだ。
これで呪いの種は発芽する。
一年かけて呪いが発動し、アルサイジェス第三王子は真実の認識が出来なくなるのだそうだ。
それが、我が家で召抱えている黒の呪術師から、渡された【虚偽の呪い】の種だ。
黒の呪術師が膨大な魔力と時間を費やし練り上げた呪いだ。
【解呪】されることはないと自信たっぷりだったから、間違いないのだろうが、不安になるのはしかたなかろう?
大丈夫だろうかと、不安に思うのもあと少し。
ここまでは、うまく進んでいる。
アルサイジェス第三王子にかけた呪いが完成するのもあと5日だ。
この日をどれだけ待ったことか。
「クリィチャ、あと5日だ、あと5日でお前は王族の仲間入りだ」
この儂も縁戚に名を連ねることが出来る。
「あと5日で、あの美しいアルサイジェス様が私のものになるのね」
待ち遠しいわ。
と、クリィチャは今にも踊り出しそうだ。
なんとも愛らしいではないか。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それは、最初は小さな違和感だった。
だが、そんなものあと3日もすればどうでも良くなるはずだ。
あと3日で呪いは完成するのだ。
黒の呪術師が屋敷の与えている部屋から出てこなくなった。
いや、出てこないことなどいつものことだったのだが、なぜか嫌な感じが拭えない。
「ジェント、ジェントはおるか!?」
儂は我が家の家令の名を呼ぶ。
「旦那様、どうなさいましたか?」
後ろから声をかけられて、飛び上がりそうになる。
どこにいたのだ?
いきなり消えたり現れたりする家令は、儂の長年の右腕でもある。
「そこにいたのか。あやつ、黒の呪術師の様子を確認して来い」
「かしこまりました」
ジェントは、お辞儀をしたと思ったら、音もなく儂の前から消えた。
「旦那様」
ぎゃあっっっ。
こやつ、儂の心の臓を止めようとしておるのか!?
ひとつ息を整えてから、
「あやつはどうしていた」
「それが、何やら怯えているようでございました」
怯える、だと?
あの傲岸不遜のあやつが、怯える!?
「何に怯えていたと?」
「そんなはずはないとか、ありえないとか、そのようなことをぶつぶつと言っておられました」
何がどうなっておるのだ?
「あやつのことをしばし監視しておけ」
「かしこまりました」
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トーヤのテンションがあがります(笑)
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