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ワタシ死ねないみたいです。あと○○になる方法、探してます。  作者: マナマナ


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提案。もう一度現世に

 無事ことなきを経て戻るため廊下を歩く。それにしても窓がないだけで現世にある建物みたい。

 片側は壁しかないけど、もう片方にはドアがどこまでも続いている。遥か遠くは翳んでいる。果たして自力で戻ることができるのだろうか?案内してくれた女の子がいないことが不安を煽る。けれどそんな私の心配を余所に自分が出た部屋の前までくると引き寄せられるように扉が開いて中に放り込まれた。


「遅かったな」

 閻魔大王は・・・この匂い・・・コーヒーを飲んで待っていたようだ。

「す、すみません。トイレはすぐ終わりました。いろいろいあって時間がかかっただけです」

「まあいい。続けよう。何度も言うがやはり命を粗末に扱ったのは重罪だ。だがここで安易に罰を与えても君にとっては何も変わらない。そうだろう?それで一つ考えた」

 考えたって何を?質問は・・・できないよね。なんて思っていたら急に隣りに人の気配がした。

「あ、さっきの」

 トイレで出会った男の子が立っていた。向こうも同じように私を見て同じことを言う。

「あの、これって?」

 つい不用意に言葉を発してしまう。でもやっぱりお咎めはない。ルールってなんなのだろう?


 閻魔大王は「ふふふ」と自信ありげに笑って

「実はこの世界も人が増えて、ということは我々の仕事も増えているということだ。おかげで労務費はかさむし休日だってロクに取れない。簡単にこの世界に来られても困るのでここは一つ実験してみようとなってな。今から君達には現世に帰ってもらう」

 私と男の子は顔を合わせて同時に「え?」と声が出た。


「そんなの驚くことか?別に変ではない。一瞬だけこの世界に来てすぐに現世に帰る人間もたまにいる。その事例のロングバージョンだと思えばおかしいところはない」

「・・・そんな」

 これも同時に言った。何でまた?男の子として生きるなんて。

「そこで提案する。少しだけこちらから手を加える。君達の性別を入れ替える」

 またしても同時に「え?」と言って顔を見合わせる。


「お前男なのか?だから男のトイレに入ったのか?」

「え?女の子?なんで男子トイレに?」

「そ、そりゃ俺は男だから。体は女でも男用に入るのは当然。そうだ、その後どっちに入った?」

「・・・・え、っと・・・女の子用」

「え!男なのに?そりゃまずいだろ」

「な、なに勝手言ってんのよ。私だって悩んだんだから」

 パンパンと手を叩く音がする。

「それくらいでいいかな?それよりどうだ?性別が自分の望み通りになるんだ」

 女の子になれる。そして女の子として人生を生きることが出来る。でも急にそんなことになったらみんなびっくりするんじゃないかな。

「そのことなら心配ない。ちゃんと上手くいくように少しだけ手を加えておく。基本は変わらない。ただ性別が変わるだけだ」

「けど、俺は男になったって病気が治らないなら一緒だ」

「それは特例で考慮しよう。すぐに退院できるだろう」

「ほ、ほんとか?なら俺はいいぜ」

 今度は私の方に向いて返事を待つ。

「う、うん」

「そうか。二人共引き受けてくれるか。なら交渉は成立だ。詳しくはルシェルとアヴェルに聞いてくれ。ではお疲れさん。それと人生を本当の意味で楽しむように」

 いきなり目の前が煙に包まれる。私の視界は真っ白の中に埋め尽くされてゆく。


 再び視界が晴れてゆくと、青い空があって花に溢れた場所の東屋に座っていて目の前にはルシェルがいた。

「お疲れ様でした。閻魔大王様からいろいろ仰せつかっています。では歩きながら説明しますね。さ、こっちです」

 私は後に続く。ルシェルはタブレットを見ながら歩く。真っ白なツインテールが左右に規則正しく揺れているのを見ているとさっきまでのことが頭の中に蘇ってくる。本当に女の子として生き返ることになるのだろうか。試しに体を触って確かめる。まだ何も変わっていないように感じる。ちゃんとあるべきモノはあるべきところにあった。今はまだ変わっていない。信じるしかないのかな。でもまた男の子だったらどうしよう。その時はまた文句を言いに死ねばいいのかもしれないけど、命を粗末に扱うことはもうやりたくない。はぁ〜。溜息。


「・・・ということです」

「え?」

 ルシェルは立ち止まって

「あの聞いてました?一応説明は終わったんですけど」

「・・・ごめん」

 全然聞いていなかった。っていうかいつの間にか終わっていたとは

「もう、しかたありませんね。あのですね、もう一回説明するの面倒なんで」

 ルシェルはそう言ってまた帯から

「これを。閻魔大王様からです。これがあればサポート役の私と繋がることができます。それとあっちに帰ったら今言ったことが分かるようにクリアファイルに入れておきますから。今度はちゃんと読んでくださいね」

 渡された腕時計型端末を私の手首に嵌めると今度は手首と同化するように変化して何も着けていないようになった。

「びっくりしてますよね。これはこっちの世界のモノ。現世では目立ちますので必要な時だけ現れるようにセッティングしてあります。使い方はこうです」

 ルシェルは自分の手首に唇を当てる。すると端末が姿を現す。もう一度同じことをしたら今度は消えた。

「はい、簡単ですね。ではここからは一人でお願いします。突き当たりにドアがあります。その先が現世です。もう命を粗末にしないでくださいね」

 行こうとする彼女を引き止めて

「あの、もう一人は?」

「ああ、彼女は・・・ん・違いました。彼はもう一足先に行きました。今頃は目を覚ましていることでしょう。それが何か?」

「え、えっと、その、名前も知らないし、それに向こうで会えたら会いたいし」

 ルシェルは頭をポリポリ掻いてから

「しょうがないですね。もう一回言います。いいですか、目が醒めたらここでのことは忘れてしまいます。まあ、あなたの場合ファイルを読んだ時点でそうなるようになっています。そして満月の夜にだけ思い出すのです。だから私とのやりとりもその時だけになります。ま、何かの偶然で手首にキスをしたら端末が出てくるのでそれで思い出すこともあるかもしれません。だから彼のことを教えても忘れてしまうのです。もちろん向こうも条件は同じです」

「・・・もう会えないの?」

「そんなことありません。偶然の巡り会いだってあるかもしれません。現世で会いたいんですか?」

「・・・・・」

「さっきも言いましたが満月の夜なら端末を使って話すことは可能です」

「・・そ、そっか」

「そうです。月に一度ですけどね。これで納得できますか?」

 そっか。月に一度の出会い。二度と会えないわけじゃない。

「納得できたようですね。それでは良い人生を」


 急にルシェルとの距離が遠くなる。どんどん、どんどん・・・・気が付くと長く引き伸ばされた暗闇があって視線の先には一つの点が見えてくる。それが今度はどんどん、どんどん大きくなってゆく。

 何時しか私の移動は終わっていた。目の前には扉がある。真っ白な扉。

「この先には・・・私の新しい人生がある・・・んだよね」

 半信半疑だけど把手に手を当てるとゆっくりと光をこぼしながら開いてゆく。その光の中に一歩足を踏み入れた途端、私の意識も体も溶けていった。

 温かい春の風を感じる。それに太陽の匂いも。

 

 目が醒めた・・・・・私・・・今まで何してたの?

お付き合いしていただきありがとうございます。

アップした本日はハロウィンですね。仮装してあの世に連れて行かれないようにしましょうね。

ホントにあの世ってあるのかな?

あると信じて書いてます。

次回もよろしくお願いします。

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