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ワタシ死ねないみたいです。あと○○になる方法、探してます。  作者: マナマナ


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私達のSEVENTH HEAVEN

 ルシェルに案内された部屋はビジネスホテルに似ている。

 ベッドがあって小さな備え付けのテーブルがあって椅子があって小さなユニットバスが付いていてアメニティも充実していた。


「ほんとに地獄なの?」

 一人なのについ言葉が漏れた。カーテンを開ける。窓の先に広がっている世界は今まで想像していた地獄とは遠くかけ離れた平和そのものみたいに映る。

 テーブルの上にはパンフレットがあって試しに見てみると屋上に大浴場があることが分かった。


『今日はゆっくり休んでください。では私は失礼します。あとこれ』

 ルシェルは去り際に封筒を渡してくれた。

『あ。中にはお金が入っています。経費ですので使ったらちゃんと領収書もらってください。じゃないと経理が困りますので。あと左手にある端末は使えますので何か困ったことがあったら連絡してください。但しあまり夜中は勘弁してくださいね。お肌に悪いので』

 私は言われるがままに聞いて渡されるまま受け取って、なんとなくルシェルの後ろ姿を見送った。


「大浴場・・・気持ち良さそう」

 その前に私のお腹は進軍の準備が整ったみたい動き出す。

 渡された封筒を確認してみると『10,000』と表記のあるお札が三枚入っていた。

「これって現世でいう一万円ってことかな?」

 おまけに描かれている肖像画はどう見ても閻魔大王にしか見えない。


 私は再びパンフレットを見ると観光案内とグルメ情報が載っていた。

「・・・観光案内・・・誰がするんだろう」

 最初の時と同じでここが地獄だろうかと再び疑問が浮上してくる。

 本当は狐か狸に化かされているのでは?そんな錯覚を起こし始める。けれど今はこの空腹をなんとかしないとどうにも落ち着かない。


 今は私一人きり。修学旅行で言ったら自由時間ということになる。私は思いきって外に出てみる、ってのはアリでいいのだろうか?

 試しにドアを少しだけ開けて廊下を覗いてみる。誰もいないように見えて往来の気配を感じる。私の目に見えないだけでこの場所にはたくさんの人?でいいのかな。いるように感じる。


 私は元の世界に帰りたい。そのためならどんなことだってする。今は固く心に決めている。

 拓哉のあんな悲しそうな顔・・・そんな風にさせたのは私だと思っている。だからもう一度ちゃんと会って謝りたい。

 私はまだ死ぬわけにはいかない。まだ死ねない。どんなことがあっても。まだ繋がっていることに感謝さえしているんだ。


 外に出ると暑くもなく寒くもない。制服だけで丁度いい。見上げる月は地獄でも同じように見える。

 私が今立っている場所はあの東屋とあまり変化のない花に囲まれた場所だ。月光に照らされた花達は淡い光を反射してなんとも美しい色に変わっていた。

 観光案内を頼りに道を進んでゆくと

「うわ・・・あれって街?」

 遠くからでも分かる街灯り。今いる場所と全然違っていてとても近代的に映るのは気のせいじゃない。


「・・・結構遠そう・・・」


 ここにはバスも電車のタクシーなんてモノは見当たらない。私は自分の足で歩いてゆくしかないんだと決意して一歩踏み出そうとした時、風に乗って声が聞こえてくる。


「街まで行くのかい?」

「だ、誰?」

 声はするのに姿は見えない。でも聞かれたからには答える。

「あ、はい」

「なら乗ってくかい?」


 やはり声しか聞こえない。けれど街までの距離を歩くことを考えると答えは自然と出てくる。


「えっと、いいんですか?」

「もちろん。但し。お金は持ているかね?」


 お金・・・お金ならある。


「はい。それで街までいくら掛かるんですか?」

「そうだな。ここからなら2,000エンマでどうだ?」

 エンマ?それってこの通貨の単位のことなのだろうか。

 なら今の私は30,000エンマ持っていることになる。そこから街までの金額を引いてもまだまだ余裕がある。

「分かりました。それでお願いします」

「よし。交渉成立。乗りな」

 そう言われても、何処に、何に、乗ればいいか分からない。素直にそう言うと

「ああ。見たところあんたリンシだな」

「リンシ?・・・それってなんのこと?」

「なんだお前、初心者か?」

 その言葉の後に一瞬だけ強い風が巻き上がった、と思ったら

「いいか。リンシってのは死と生の境界を彷徨う者って意味だ。100パーセント死んでもいないし100パーセント生きているワケでもない。どっちにでも転がることが可能な魂のことを言うんだ」

 現れた姿はルシェル達と同じような着物姿の男の人?だった。真っ黒なウニのようなトゲトゲ頭が目立っている。少しだけ日焼けした肌をしていた。違いと言えば下駄ではなく地下足袋を履いている。

 説明を受けて私は自分の今の状態のことを理解する。それは振り子のように微妙な存在だってこと。どっちにって何がどうなったら揺れ動くことなのだろう。

 ここでちょっと疑問。

 ルシェル達ってなんていう存在なのかな?鬼とか妖怪とか悪魔とか?ここが地獄だからってついそんな粗暴な言葉ばかりが浮かんできてしまう。


「これで俺の姿見えるよな。そしたら早速乗ってくれ」

 彼の指差す方には

「人力車?」

「と、思うだろ。でも違うんだよな。なんと電気で走る優れものさ。俺はただの安全係」

「へ〜・・・安全・・・」

 そんな言葉しか出てこない。こんなの現世にだってまだ存在していない。


 もしかしてここって地獄とは名ばかりでホントはもっと先の未来の世界なのかな。

 魂は時間さえ越えてしまうのかもしれない。いや時間さえ超越した世界なんだ。望めば過去にだって行けるのかもしれない・・・


「さあさあ乗った乗った」

「あの。私の名前は『さがらみう』って言います。あなたの名前はなんて言うの?」

「俺の名前なんて聞いてどうすんのさ」

「私は現世に戻りたいって願っている。でもすぐには無理だって。だったらこの世界をもっと知ってもいいかもって思ったの。この世界の人・・・でいいのかな。仲良くなれたらって」

「なるほど。事情は分かった。俺は『ランヴェル』。よろしくな。『みう』でいいか?それと俺達は人じゃない。天使だ」

「天使?地獄にも天使っているの?それって堕天使的な?」

「堕天使とは違う。天界の天使と同じだけど生まれた場所が違うだけ。でも天界の奴らは同じ言い方が気に食わないらしくて悪魔とか呼んでるが、別に俺達は悪行を働いているわけじゃない。だから最近じゃ天界を白天使、地獄を黒天使って分けているみたいだが俺は自分のこと天使って呼んでいる」

「・・・白天使・・黒天使・・」


「それじゃお互い自己紹介終わったところで出発進行」

 ランヴェルの掛け声と共に電動人力車は動き出す。

 それは音もなく空間を滑るように進んでゆく。なんだか自分がそよ風にでもなったような気分がする。


「ほい。到着」

「え?もう着いたの?」

「速さが自慢だぜ」

 止まった景色・・・そこには都会の繁華街を思わせる程賑やかなところだ。それに今じゃ街の喧噪を楽しんでいる『黒天使』でいいのだろうか、がたくさんいた。

「それじゃお代お願いします」

「あ、はい。ちょっと圧倒されて」

 封筒からパリっとしたお札を一枚出して渡す。

「ほい。じゃあ7000エンマのお返しっと」

 ランヴェルは帯の中を漁っている。この世界の黒天使達はみんなこうやって帯の中にモノを閉まっておく習慣でもあるみたいだ。

「あと領収書もください。あとで経理に渡さないとならないので」

「はいよ。お釣りと領収書。ちょっと待ってな」


 私は人力車を降りて入口から街中を見る。

 現世で言うと新宿に似ていると思う。夜の新宿なんて行ったことないけど大丈夫かな。

 でもここは現世じゃない。地獄なんだと思うとよく分からなくなってくる。


「お待たせ。それでみうは何するんだ?」

 お釣りと領収書を受け取って確認してから封筒に戻した。

「ご飯を食べに来たんだ。グルメガイド見てたらお腹が空いて来ちゃって」

「そっか。それでなに食うか決めたのか?」

「まだ。これから探すつもり」

「なら俺のオススメとか教えようか」

 私は持って来たガイドを見せるとランヴェルは赤ペンで丸をしてくれた。そのペンも帯から出したものだ。

「ありがとう。見てみるね。そう言えば観光案内もありました。誰が観光するのかなって」

「観光するやつっていや、いろいろだ。天界からも来るし、みうと同じようにリンシだって来る。後は行き先の決まった人間かな。行くまでには期間があるからそれまでは自由に過すんだ」

「そうなんだ・・・結構楽しいところなんだね」

 私が呑気な感想を言うとランヴェルは急に真剣な顔になって

「そうでもない。表通りは問題ない。けれど絶対に裏通りに入るな。現世に戻りたいならな。これは俺からの親切な忠告だ。天使だからな」

「そ、そうなんだ・・・ありがとう。あの親切ついでにもう一ついい?」

「なんだ?言ってみな」

「えっと、帰りなんだけど。またランヴェルにお願いできないかな」

「そりゃ構わないけど。みうは連絡手段とか持ってないよな?」

 連絡手段・・・私はポケットを探るとスマホが出てきた。

「これなら」

「あ〜それな。現世のモノは圏外なんだよ」

 私はスマホをタッチして画面を見ると

「ホント・・・駄目みたい」

「俺の番号教えたとしても・・・公衆電話が一台だけある。そこからなら・・・でもな」

「どうしたの?」

「いや・・・さっき言ったばかりだからな。実は裏通りにあるんだよな」

 裏通り・・・それはそんなに危険がある場所なのだろうか。


 あ!そうだ。


 私は左手首にくちびるを当てるとルシェルからもらった端末が出てくる。これはルシェルとしか通信ができないのかな。試しにランヴェルに見せると

「お。なんだ持ってんじゃん。リンシなのに珍しいな」

「そうなの?でもこれって私の担当にしか繋がらないかも」

「担当?お前って他のリンシとちょっと違うな」

「・・・そうなの・・かな」

「ちょっと見せてみ」

 私は言われるままに左手を差し出す。

 ランヴェルは何か操作している。

「これでいいぞ」

 見ると番号が表示されている。アンテナだってバリバリ立っている。

「すご・・・これなら連絡できるの?」

「ああ。それと、ほい」

 私は名刺を受け取った。そこには連絡先の番号が記されていた。

「じゃあ帰り、必要だったら呼んでくれ」

「ありがとう。絶対に呼ぶから」

「ああ。じゃあな。毎度あり」

 そう言い残してランヴェルは風のように消えてしまった。


 一歩街中に足を踏み入れると現世と何ら変わりない場所みたいに思えてきた。

 私がリンシだからって誰も気に留めることもしないし、私だって誰が天使で誰がリンシで誰が行き先の決まった人間かなんて区別がつかなかった。

 今歩いているのってメイン通りだろうな。明るくて活気があって。

 ふと気になって建物の間から見える裏通りなる場所を覗いてみる。裏通りって言うだけあって暗くてジメっている印象を受ける。こういうのって現世も地獄もあまり変わらないんだろうな。その怪しい雰囲気に引き込まれそうな感覚になる。

 これは相当気を張っていかないと。現世に帰れないなんてこと絶対に嫌だから。

 私は心に固く決心をして表通りを歩いてオススメの店を目指してみた。


 再び街の入口に戻ってからランヴェルに連絡を入れると、あっと言う間に風のように現れた。無事繋がったことに安心する。

「あの。とても美味しかったです」

「お。行ってくれたんだ。嬉しいねぇ」

「正直驚きです」

「言っただろ。オススメだって。量もあるし値段も安い」

「はい。ありがとうございます」

 私が食べたのは『地獄の豆丼』という丼ものだ。

 店構えは正直女の子一人だと入り難いことこの上なかった。それでもいい匂いに抗うことが出来ずに勇気を出して入った。店の中は街の中華屋みたいに狭く混雑していた。カウンターに座ると注文もなく料理が出てきた。どうやらこの品だけで勝負しているのかな。周りを見るとみんな同じものを食べていた。

 私のお腹と気持ちは十分満たされたのは言うまでもない。


 帰りの人力車で私とランヴェルは豆丼の話で楽しんだ。

 そして

「毎度あり。また呼んでくれたらいつでも駆けつけるぜ」

 そしてまた風のように行ってしまった。


 部屋に戻ってベッドに横になると待っていたかのように眠りがやって来た。

 再び目を開けたらもう朝になっていた。

「おはようございます。昨夜はよく眠れましたか?」

 ルシェルから連絡が入る。

「はい。おかげさまで」

「今日はこれから閻魔大王カーリ様のところに行きます」

「そうなんですか?すぐ?」

「いえ。一時間後です。それまでに支度しておいてください。時間になったらロビーで待ち合わせしましょう。あと朝食券がありますので朝ご飯もしっかり食べておいてください」

「分かりました。一時間後、ロビーで待ち合わせで」

「ではのちほど」


 私はとりあえず制服を脱いでシャワーを浴びようと思ったが

「あ、替えの下着がない」

 慌ててパンフレットを見ると売店があった。備え付けの内線電話で連絡してみると下着が置いてあることを確認。一つ注文するとすぐにドアがノックされて、私は料金をドア越しに支払うと下着と領収書を受け取った。

「よかった・・・」

 サイズはいいが、柄がイマイチなのは仕方ないと諦めた。

 私は制服を脱いで頭から熱いシャワーを浴びて備え付けのシャンプーや石鹸を使って体中キレイにした。

 シャワーから出ると喉の渇きと空腹を覚えたので髪を乾かし新しい下着と制服を着て案内を頼りに食堂に向かった。


 朝食はビュッフェ方式なので私以外にもたくさんいてみんな好きずきに食べたいものを食べていた。私は見よう見真似でそれにならった。

 

 時間になってロビーで待っていると

「おはようございます」

 ルシェルが元気な声を掛けてくれた。

「おはようございます」

 私も同じように挨拶を交わした。

「準備は良さそうですね。では早速行きましょう」

 ルシェルは端末を使うと

「お待たせしました」

 現れたのは

「あ」

 お互い顔を見合わせて驚く。

「なんか縁がありますね」

「あら知り合いでしたか?」

「ええ。昨夜お世話になったんです。ね、ランヴェル」

「ええ、そうなんです。それで今日はどちらに?」

「カーリ様の元に」

 ルシェルが言った瞬間ランヴェルが背筋を伸ばす。

「か、カーリ様ですか。いや〜緊張するな」

「そう言うことです。頼みましたよ」


 私達が乗り込むと人力車は昨夜と同じように風となってあっという間に目的地に到着した。


 目の前に聳えている白亜の建物。むしろ城だ。

「あの。ここは?」

「カーリ様の屋敷です」

 私は言葉を失くす。ランヴェルに至っては到着してすぐさま、脱兎の如く・・・みたいにあっという間に消えてしまう。やはり閻魔大王とは恐れ敬う存在なんだ。


「では行きましょう。お待ちです」

「は、はい・・・」

 最初の謁見以上に緊張している。うわ〜本気で怖いんですけど。


 巨大な扉は私達を飲み込むように大きく口を開ける。 


 一歩中に入って最初に目に入ったもの。真っ赤な絨毯だった。一直線に奥まで続いていてその先にある扉も口を開けて私達の到着を待っている。そこにいらっしゃるのが空気に乗って伝わってくる。

 私はルシェルの後を黙って付いてゆくしかない。絨毯の赤以外は全部が水晶みたいに光を反射させている。絨毯のおかげで足音すらしない。自分の呼吸の音がいやに大きく聞こえる。


「おはようございます。カーリ様。相楽美有を連れて参りました」

 なんとなくルシェルに続いて私も小さな声で『おはようございます』と言った。

「ご苦労だったな。ルシェル。それにそっちも。今の名前で呼んだ方がいいか?それとも元の名前の方がいいか?」


 久し振りに見る閻魔大王は謁見の時と違ってかなりラフに見えた、帽子も被っていないしゆったりとした真っ白な服を纏っていた。これだと閻魔大王というより天使みたいに見える。


「えっと・・・今の名前でお願いします。今が私なんです」

「分かった。では相楽美有。美有でよいか?」

「は、はい。それと・・・あの、ありがとうございます。私を本物の女の子にしてくれて」

「そういう約束だったからな」

 カーリ様は私達に座るように指示する。同時に別の扉が開くとメイドが何人か現れて全員分のお茶とケーキを用意してくれた。

「そんなに緊張しなくてもよい。先ずはお茶でも飲んで肩の力を抜きなさい」


 そう言ってくれるのはありがたいが簡単に肩の力なんて抜けない・・・

「は、はい・・・」

 カップを持つ手が自分でも分かるくらい振るえている。一旦おいて深呼吸した。


「まあ、仕方あるまい。話している内に緊張も和らぐだろう」

 隣りを見るとルシェルはもうお茶を飲み終わってお代わりを要求していた。私の視線に気がついたのか

「もし食べれない場合は言ってください。私が責任を持って請け負います」

「い、いえ、食べます・・・あとで」

 そう答えてみてもルシェルはニヤッと笑う。どうやら本気狙っているみたいだ。こうなったら絶対に食べるんだから。


 カーリ様は落ち着いて最初の一口を飲んでから

「話はルシェルから聞いている。いろいろと面倒なことになっていると」

 いきなり核心から話が始まる。前置き・・・いらないよね。きっと今から現世に戻る方法でも教えてくれるのかもしれない。そんな期待を持って言葉の続きを待った。


「二つの魂があったとは想定外だった」

「はい・・・私も彼女と話した時びっくりしました」

「そして天界から天使がやって来た」

「らしいです。私はぜんぜん覚えていないんです」

 カーリ様は再びお茶を一口飲む。そして

「実はな。少々面倒なことになっている」

「・・・めんどう?あの、私はいつ現世に帰れるんですか?」

「結論は焦らなくても逃げはしない。先ずは聞いた上で判断してくれ」

「は、はい」

 カーリ様が手を叩くとメイドがやって来る。その手にはタブレットがあって私の目の前に置かれる。

「これ・・・現世の私?」

 それは最後にルシェルが見せてくれたベッドに横たわっている私の姿があった。

「元の彼女の魂は再び眠りに就いた。というよりこのままなら死んでしまう」

「え?だって閻魔大王様の加護があるって・・・」

「それは君の魂が入っていたからだ。今は髪の毛よりも細い線でしか繋がっていない」

「そ、そんなこと・・だったら早く私を現世に戻してください。死んだら拓哉が悲しむ」

「言ったはず。すぐには戻れない。天使の介入のおかげでバランスが崩れた。君の魂は不安定になって身体からハジかれ、そして今に至る」

 やっぱり新月のせい。私達は乗り切ることができなかった。

「だったら・・・・」

 こんなことは望んではいない。でも拓哉が悲しむことはもっと望んでいない。

「だったら私がこのプロジェクトを辞めれば・・・」

「それだと病気が進行してしまうだろう。結果は同じだ」

「そんな・・・なんのために私は・・・」


 何がなんだか分からない。何が正解で、何が間違っているのか。

 運命を無理矢理変えたこと自体間違っていた?

 私は自分の欲のためにいろいろな人を不幸にしているっていうの?


 だったら辞めればいい・・・そんな無責任なこと・・言えない・・絶対に


「あの・・・せめて彼女だけでも生かすことって出来ないんですか?」

 カーリ様は遠くを見つめて

「私の判断が間違っていたのだろう。人生を本人が望むように・・・傲慢だ・・・」


 沈黙が重い。私が辞めたら彼女は死んでしまう。しかしこのままでも死んでしまう。


「あの・・・なぜすぐに戻れないのでしょうか。その理由を聞きたいです」

 それを答えるのはカーリ様じゃなくルシェルが話始める。


「ここからは私が説明します。実は彼女の魂も今のあなたと同じようにリンシとなってこの世界に来ています」

「え?」

「それが問題になっています」

「なら彼女の魂はどこにいるの?」

「だからこの世界を彷徨っています」

「それって・・・」

「そうです。どこを彷徨っているか分からないのです」

 私は言葉が見つからない。でも・・もし彼女が今死んでしまったら・・・

「そうなったらあの身体には今のあなたのまま戻ることができます。100%あなたはあなたで生きることが出来る。だからこのままここで待機してもらう。まあ、天界の問題は残りますが」


 え?そんなこと望んでいないよ・・・私望んでない。


「そんな気分の悪いことできない。私にはできない。でも私が死んだら彼女も死ぬ。それも私の望むことじゃない」

「でもいずれ何かを選択しないと結局は望まぬ死をお互いすることになります」


 私はとんでもないことをしているんだ。

 今になって後悔している。やっぱり命を粗末にした代償を受け入れていれば良かったんだ。



 私と前の私


 どっちも私だと思いたかった。でも、本当は違う。

 違うのは私の方だった。

 

 

 今一番言いたいのは


 元の私。ごめんね。私のわがままであなたの人生を狂わせてしまったこと。

 あなたの人生に勝手に足を踏み入れてしまったこと。

 本当ならこの身体から今すぐ出て行くことが正解なんだろうね。

 でも駄目みたい。私は死ぬことができない。

 今死んだら確実にあなたも死ぬ。


 それなら・・・どうせ後戻りなんて出来ない・・・だったら・・


 狂ってしまった人生ならもっと狂ってもいい。

 もしかしたらその先に何かいい方法があるのかもしれない。

 私達二人が・・いや私が関わった人達だって誰も不幸にならない世界だって見つかるかもしれない。


 私達が幸せになれる世界。生きているなら辿り着けるかもしれない。

 不幸だなんて思わない。

 今は切なさや愛しさで気持ちが溢れている。

 もっと前を向くんだ。天国は一つじゃない。

 

 私達の天国がある。誰にも邪魔されない天国。

 私はとんでもない僥倖を与えられたんだ。これはチャンスなんだ。


 見つけるんだ・・・その方法を。


「あの。私から一言いいですか?」

 二人は黙ったまま私の言葉を待っている。

「やっぱり私は元の世界に戻りたい。それは前の私と二人で帰る世界にしたい」

「また天使がやってくる。そして今度こそ確実に仕留めにくる。それが分かっていてもか?」

「閻魔大王様・・・カーリ様。お願いです。なにか方法があるはずです。あなたがしてくれたことは傲慢なんかじゃない。私は願いが叶えられて幸せです。だからもっとこの幸せの中にいたい。そして人生を全うしたい。これが命を粗末に扱った私の罰でもある。今はそう思う。だからせめて元の私にも拓哉にも同じ幸せな気持ちになってもらいたいんです」


 私は拓哉に戻ってくるって宣言したんだ。だって一番会いたい人だから。

 あの時の気持ちは今の私なんだ。もう親友じゃない。

 拓哉のこと、元の私と同じ気持ちだと思いたい。

 なにがどうしてって言われても分かんない。はっきりさせたいよ。


「なら先ずはこの世界でもう一人の自分を探すんだ。全てはそこからになる」

「やります。私が犯した罪の償いでもあります。本当に不幸になるのは私だけでいい」


 勢いよく立ち上がる。その勢いでスカートが一瞬浮いた。

 慌てて押さえて二人を見る。もしかして見られた?

「ほんと女の子なんですね。青と白のストライプ。はっきり見させてもらいました」

 ルシェルの言葉に顔が赤くなる。カーリ様は・・・

「その決意に偽りはないな」

 とても冷静な言葉。

「・・は、はい。私やります。もう一人を探します」

「それでは今からこのミッションは『SEVENTH HEAVEN』と名付ける。もし失敗して死んでも自己責任になる」

「構いません。一度は死んだ人生です。それに彼女だって病気で死んでいた。起死回生って言葉が似合う二人です」


 

 私の人生は私自身で切り開く。現世でもこの世でも。


 私は死ねない。今は自分も含め誰もが幸せになる方法を探しています。

 いや探し始めたところだ。


 これからどんな茨の道が待っている?どんな道でも進んでみせる。

 私は地獄で見つけた夢を叶えるための自分探しが始まったことに奮えていた。


 〜只今より休憩に入ります〜   降幕           

ますますゴチャゴチャして休憩とは・・・

今まで読んでいただきありがとうございます。

まだまだ途中だし、急にファンタジー要素が強くなり・・・

まだまだな私です。

それでも付き合っていただいた皆さまには感謝しかありません。

次は『地獄編』?でしょうね。

でも今はちょっと休憩。頭を冷やせ私。

続きはもっと冷静に書きたいと思っています。

それまでは・・・休憩だなやっぱ。

本当にありがとうございました。ではまた会う日まで。

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