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ワタシ死ねないみたいです。あと○○になる方法、探してます。  作者: マナマナ


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天界と地獄より来たりしモノ

「これはこれは珍しいこともあるものです。何かご用ですか?」

「あんた達の強引なやり方に我々はほとほとうんざりしているのです」

「何を言うかと思えば。我々に意見ですか。地獄のただの案内人のくせに」

「そういうあんただって天界のただの使いのくせに勝手に時間を操作するなんレッドカードもいいところですよ」 

「フ・・・あなた方がちゃんと仕事をしないからワタシが尻拭いに来たのです。そんなことも分からないのですか」

「仕事ならちゃんとしてますよ。今もこうして。私は彼女のサポーターですから。むざむざやられるのを黙って見ているわけにはいかないんです」

「しかし、簡単ではありませんでした。あなた方の加護がしつこくて」

「当たり前です。カーリ様の結界です。一介の天使ごときに破れることなんてありません」

「分かっていると思いますが我々は、あなた方もそうでしょうが、直接人間に触れることができない。だから都合良くいた人間に始末してもらう。実に合理的じゃありませんか」

「あんたの所業は我々よりも残酷無比ですね。自覚してますか?堕天した方がお似合いだと思います」

「魂の扱い。今までなかった事例です。そんな前例を作ってはいけない」

「前例、ですか。確かにそうなのかもしれません。でも我々は誰かを不幸にしているわけじゃない。望まない状況を生きるくらいなら望む状況で生きてもらう。これこそが魂の成就だと。だから今回はテストと称して事例を作っているのです」

「まさに地獄にお似合いの言葉ですね。傲慢。堕天したカーリにしても傲慢だから堕とされた」

「あら?もしかして私に喧嘩売ってます?カーリ様の悪口はいただけませんね。あんたなんかよりずっと上のお方なんです。天界の主と違ってまさに『光風霽月』という言葉がお似合いなのです」

「あなたこそワタシに喧嘩売ってます?でも。お相手をしている時間はなさそうです。月が動きます。しかし、そんな言葉よく知っていますね。とても似合ってません」

「それは褒めてもらったってこと。でいいのですか?」

「お好きにどうぞ。次の新月こそ・・・あの女の(タマ)。消して差し上げましょう」

「あら?逃げるんですか?」

「言ったはず。新月だと」

「別に構いません。それともう一つ。魂を適当に扱わないでいただきたい。我々にバレていないと思っていたのでしょうか」

「仮もに天のこと。知ったからなにか?本来なら病死というしごく自然な形で人生を終わらせるはずだった」

「そういうの証拠隠滅って言うんですよ」

「一つの身体に魂が二つ入ることなんてよくあることじゃないですか」

「病死なんてプレゼントは望んではいないんです」

「いずれ死ぬ。だから死ぬ。道理が通ってます」


 下駄の音が大きく響く。それまでの会話なんてそよ風みたいだったのに。その音に相楽は微かに反応したように見えた。


 よく分からないが誰かが間に入ってくれたおかげでやっと俺の手は自分の意思で動くようになった。

「おい、おい、しっかりしろ」

 俺は口元に耳を当ててみる。静かな呼吸が聞こえた。

「おい、相楽、大丈夫か」

 意識はまだ戻ってこない。

「早く目を醒ませ。あの時と同じなんて嫌なんだよ」

 俺は相楽の頬や頭を撫でた。それでも目を覚ます気配がない。

「くそ・・・救急車だ」

 部屋を出ようと走り出したのに

「な、なんでだ」

 足は動いている。間違いなく走っているのにドアに近づくどころかどんどん遠ざかってしまう。一体何がどうなっている?


 俺は諦めて相楽の元に戻ろうと振り返る。やはりそこには相楽以外の姿はない。微かに声だけが聞こえてくる。何を話しているのだろうか。俺には内容がまったく分からない。


 はっきりと聞こえるのは下駄の音。


「誰なんだよ。あんた達は」

 俺の呼び掛けにはまったくの無視。まるで蚊帳の外。けれどそれならそれでいい。俺と相楽は解放されたんだ。新月は終わった。俺達は乗り切ることができたんだ。


「相楽・・・終わったんだ。じきに朝になる」

 俺の言葉に相楽は反応してない。気を失っているだけなんだ。朝が来ればきっと目を覚ます。

 そしたらいつものようにいつもみたいに拳を合わせてエールを送り合うんだ。

「だから絶対に目を醒ましてくれ」

 相楽のことを抱きかかえてベッドに横たえる。呼吸がしっかりしている。おかげで顔色もすっかり良くなっているように見える。


「もう帰ってくれ。新月は終わったんだ」

 俺は見えないモノ達に話し掛ける。


「あの。ご迷惑お掛けしてます」


 意外にも返答があった。

「私は彼女の担当のルシェルと申します」

「担当?ルシェル?」

「はい。そうです。しかし一番目に付けられたくない奴らに目を付けられてしまいました。こちら側がもっと考慮していれば良かったのですが」

 言っている意味がまったく理解できない。

「あの・・」

「はい」

「いくつか質問してもいいのか?」

「本当は現世の人間と交流するのは違反とまではいきませんがかなりグレーゾーンなので、あなたの質問に答える、答えないは私の自由にさせてもらいます。あくまでも空耳的な感じで受け取ってくれるというなら、一分だけ、約束できますか?」

 一分。俺は何を聞くべきなのか、何を聞いたらいいのだろうか。

 こうしている間にも時間は過ぎている。ならたった一つ。俺が聞きたいこと。

「相楽は意識を取り戻すのか?」

「それは大丈夫です。簡単に命を取られることはありません。彼女の命と健康は地獄が保障します」

 その言葉に安堵した。けれども地獄が保障ってなんのことだろう。そんなの聞いたことない。


 もしかして夢を見ているのは俺の方なのか?


「ここまでです。私も失礼します。美有ちゃんのこと。頼みましたよ」

 そう言葉を残し下駄の音が遠ざかってゆく。

 ・・・まだ微かに聞こえる。

「もう一人はどこに?」

 声を大にして叫んだ。ルシェルと名乗るものに届いたかどうか分からない。が、この部屋にはもう俺と相楽の二人しかいないことだけは分かる。もう他に誰もいない。

 

 真夜中の闇が静かに降りてくる。時計を見ると動いている。

「2時40分・・・たった三分?」

 驚いて思わず声が出た。

「本当に終わったんだ。良かったな相楽・・・美有」

 安らかな寝息が聞こえる。本当は何もなかったんじゃないかって思うほど今は平和だと思った。


 カーテンの隙間から外を見ると夜が明けるにはまだ時間がある。

「安心したら・・・急に・・眠くなってきた」

 俺は廊下に出る。ドアを閉める前に今一度相楽のことを見る。やはりぐっすり眠っている。

 クッションを枕に毛布を身体に撒いて目を閉じると眠りはあっと言う間に訪れた。


☆☆☆☆☆


「・・・・ん・・・・」

 頬に軽い衝撃を受ける。

「・・・・っと・・・てよ」

 この声・・・それは今一番聞きたい声。

 瞼を開けると眩しい光と共に一番見たいと思っていた顔が目の前にあった。

「やっと起きた」

「・・・起きた?」

「そう。実によく寝ているんだもん」

「・・・そっか・・・寝てたんだ」

 無事に朝がやって来た。それに制服姿の相楽も元気そうだ。

「なにその顔。なんでそんなに嬉しそうなの?」

「そうだな。嬉しい」

「はあ?寝ぼけてるでしょ。見張っててって言ったのに。なんでそんなに熟睡できるわけ?コーヒーとカラシじゃ駄目だった?」

「・・・そうだな・・思い出した。けれど熟睡していたのは確かだがちゃんと新月が終わるまで起きていた」

「それで?なんかあった?」

「お前・・・覚えてないのか?」

「全然。ビックリするくらいよく寝てたと思う。夢も見ないくらい」

「・・・ならよかった」

 俺だってよく覚えていない。何かとてつもなく大変なことが起こっていたようにも思う。常識じゃ考えられないくらいのこと。俺達以外の何かがいたようにも思う。でも正確には何も分からない。それでも相楽に何もなかったことに心から安心していることは確かだ。

「ぜんぜん良くない」

 相楽の手にはサッカーボールがある。それは見事に割れていた。

「思い出のボールがこんなになっちゃってる。拓哉、あんたなの?」

「なんで俺なんだよ」

「だってこれを抱いて寝てたから」

 俺は受け取る。これが破裂したから・・・

「勝手に割れたんだ。新月になった瞬間」

「・・・嘘じゃなく?」

「嘘をつく意味がない」

「そうだけど・・・じゃあなんで?」

「なんでって言われてもな・・・突然としか」

 相楽は俺のことをじっと見て

「それに。なんで拓哉が持っていたの?何にもない時に部屋に入ったんでしょ。私が無防備だからって」

「いや、落ちたんだよ。その時の音にびっくりして確認のためにドアを開けた。そしたらこれがあったんだ。間違っても部屋に入っていない。お前が心配するようなことはなにもない」

「なによ。私が心配するようなことって。やっぱりなんかしたんでしょ」

「だ、だから・・あ〜面倒くせぇ。いきなり泊まれって言ってみたり、部屋に入ったかとか詰め寄られても。お前、俺のこと信用してるって言う割には信用してないよな」

 何も異常がなかった、ということでそろそろ終わりにしたかった。

 それど本当に何もなかったのだろうか?後頭部の辺りがぼんやりと何かを感じている。

 何も覚えていないのは何もなかったからじゃないのかもしれない。


 俺の記憶は操作されている・・・


 馬鹿げた考えが浮かぶ。それは誰が?何のため?


 本当は何かがあったのかもしれない。割れたボール。これがなにかヒントにならないだろうか?お前だけが新月の真実を知っている。そんな気がするのは本当に気がするだけなのだろうか。

 割れたボールをもう一度よく見てみる。

「おい。これ?」


 ボールに何か赤い線のようなもの見えた。こんなのなかった。相楽にも見せる。

「なあにこれ?」


 それは文字だった。


 Let’s meet under the full moon


「満月に会いましょう・・・拓哉」

「ああ。まだ何も終わっていない」


 俺達が文字を読んだ直後、文字は煙のように消えてしまった。


「まただ。前の時だって何も記憶にない。でも何かあったのは確かなんだ」

 相楽の顔は真剣だった。

「ねえ拓哉。やっぱり昨夜も何かあったんだよ。ホントに何も覚えていないの?」

 言われて俺はもう一度深く思い出すことに集中してみる。少しだけど何かを思い出しそうだ。

「・・・・俺は・・・」

 前に見た夢が蘇ってくる。同時に手の感触も蘇ってくる。

「なに?」

 無意識に相楽のことを見ていた。それは顔というよりはもう少し下。

「夢を見たんだ。新月の前に。俺は・・・・」

 今ならはっきりと言える。俺は・・・

「お前の首を締めていた」

「え?・・・なにそれ」

「そして実際に締めた。新月が俺にそうさせた・・・」

「気持ち悪いこと言わないでよ。ホントに?夢じゃなく?」

「それが分からないんだ。感触だけが残っている」

「だったらよく見てよ。跡とかある?」

 相楽は襟元をずらして首を露に見せる。

「ほら、よく見て」

 じっくり見る。跡なんてどこにもない。きれいな白い肌がある。鎖骨が見えて・・

「おい。それ以上服を下げるな。胸が見えそうだ」

 相楽は服を元に戻して

「スケベ。そこは見なくていい。それで?どうだったの?」

「何もない」

「やっぱり夢でも見てたんでしょ」

 夢なのか?それにもう一つ思い出す。

「お前は下駄の音、聞かなかったか?」

「下駄?ってあの?」

「ああ。なんか耳の奥に残っているみたいな感じがする」


 あの時下駄の音がして俺は解放された?

 薄らだがそんなイメージが浮かんでくる。夢の一歩手前みたいな映像がある。


「知らない。でも・・・目を醒ました時に音を聞いたような気がする。下駄なのか分かんないけど」

「そうか・・・なあ・・相楽」

「拓哉と同じこと私も考えてるよ」


 これ以上は言葉を交わす必要は俺達になかった。ただお互いの顔を見合わせるだけで気持ちは重なってゆく。


『満月に会いましょう』


 その招待は俺も相楽も受け取る覚悟ができていた。何が起ころうと何が出てこようと新月だって乗り越えられたんだ。次だってきっと。

 

 そしてもうこんなことは終わらせるんだ。

 

 俺達はただ普通に親友として生きていきたいだけなんだ。もし今の相楽が前の女の相楽に戻ったら、戻ることがあるなら俺はその時に誓ったことをすればいい。


「そうだ拓哉。誓いって、何を誓ったの?」

 いきなり聞くな。

「その時になったならな。お前の母親が証人だ」

「なによケチ。いいもんあとでお母さんに聞くから」

 残念だがそれは断られる。二人だけの秘密の誓いだからな。

「それより腹減ったな」

「あ。そうそう。朝ごはん出来たから起こしにきたんだ。行こ」

「なあ。カラシたっぷりのサンドウィッチと煮詰めたコーヒーどっちがいい?」

「どっちも嫌」


 相楽は軽く舌を出して先に行ってしまう。

 ホント・・・普通に女してる。


「待てよ。一番の功労者をおいてくのかよ」


 階段の途中で相楽は待っていた。

「あのさ、ちょっと目を閉じてくれない?」

「なんだよ・・・まあいいけど」

 素直に目を閉じると

「お、おまえ・・・」

「お礼。これは今の私の分。あのさ、お母さんには内緒だからね」

 俺はまたくちびるを押さえている。

「・・・親友はしないんじゃないのかよ」

「・・・もう親友じゃないのかも」

 そう言い残して行ってしまう。

 まだ夢を見ているのだろうか。試しに頬を抓ってみる。

「・・・夢じゃない」

 言葉にした途端に顔が熱くなる。現実なんだ。


 相楽・・・俺は・・


「拓哉。冷めちゃうよ。あと遅刻するよ」

 相楽の声。今が普通なことにホッとしている。

「ああ。知ってる」


 俺は用意された朝食を食べてから着替えるために家に戻った。

三月も後半に入りました。

読んでいただきありがとうございます。

来週にはお花見ができるかもです。

投稿を初めてそろそろ半年経ちます。

まだまだな私の作品を読んでいただいてホント感謝です。

さて物語はどんな展開になるのか。

桜でも見て受け取っていきますか。

次回もよろしくお願いします。

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