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ワタシ死ねないみたいです。あと○○になる方法、探してます。  作者: マナマナ


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カフェタイム

 私は今井さんと一緒に駅前のカフェにいる。

 クラスメイトとお茶するなんて初めてのことだし、こんな時ってどんな話題で会話をしたらいいのだろう。はっきり言って女子トークをした記憶が私の中にはなかった。だから今は当たり障りのない世間話程度で場を繋いでいた。積極的とは程遠いテンポだよね。


 共通の話題でもあればいいんだけどな。それに本題に入るのはまだみたい。

 私は今井さんが切り出すのを待っているしかない。つい飲む水の量が増える。


 やっとここで救世主のように注文したモノが運ばれて来た時はホッとした。

 これで少しは会話の幅が広がる。

  

 今井さんの言葉通り季節のパンケーキが私の目の前にある。焼き上がりに時間が掛かったが待っていた甲斐があった。

 先ずは見た目の美しさ。持ってきた店員さんが最後の仕上げと言わんばかりにクリームの詰まったビニールを目の前で外すと生クリームが雪崩のようにパンケーキ全体を包んでゆく。思わず声が出た。

 今期最後の苺のシーズン。よってパンケーキに使われているメインのフルーツは苺だ。


 ナイフとフォークを持ってゆっくりとパンケーキに滑り込ませてゆくと力なんてほとんどいらない。ただ添えているだけで勝手にナイフは上から下まで落ちてゆく。

 だからと言って生地が柔らか過ぎることはない。フワフワなのにしっかりしている。

 

 どうやったらこんな風に焼き上げることができるのかな?もし家で作ることができたらそれはそれで楽しくなりそう。お菓子が作れるってもしかして女子力高いとか・・・

 

 フォークで持ち上げると二枚の生地の間には苺のコンポートが挟まれているのがチラチラと見える。白いクリームと赤い苺のコントラスト・・・白と赤。封筒のことが頭に過った。でも今は考えたくない。

 私は深呼吸して目の前のパンケーキに集中する。


 一口でいくには少々大きいのかも。

 でも。今の気持ちに素直に従うなら、この大きさを一口でいただきたい。


 可能な限り大きく口を開けてイッキに押し込んでゆく。

 やはり大きさが合っていない。それでも押し込むと口の周りにはクリームがたっぷりとお弁当状態になった。舌を使って全体を舐めとっておしぼりで拭う。

「・・・おい・・しい」

 口の中がなくなるのを待てないくらい早く感想が出る。これって行儀が悪いかな。ホントにそれくらい美味しいことを伝えたかった。


「よかった。気に入ってもらえて。私も食べたけど美味しいよね。パンケーキと苺ソースのバランスは完璧だよね」

 溶けるようにパンケーキは口の中から姿を消した。

「来て良かった。ありがとう今井さん」

「うんうん。私さ、甘いもの大好きで結構お店知ってるんだ。だからさ相楽さん。甘くて美味しいもの食べたくなったら言って。オススメ教えるから。なんなら一緒に行ってもいいし」

 私の感想を聞いてから今井さんは自分が注文したパフェを食べ始めた。

 今井さんのことをずっと見ているとたった一口でどんな気分なのかが伝わってくる。だってあんなに目を見開くんだもん。


「ねえ相楽さん。一口ずつ交換しない?」

 この提案にはぜひ賛同させてもらいたい。実はとても気になっていた。

「いいよ。じゃあ・・・」

 お互いフォークとスプーンで一口ずつ取って口に運んだ。


 パフェは何層にも重なって複雑かつ繊細で明確な味のコラボレーションを演出していた。

「こっちも美味しい。生クリームと苺のバランスがいい。あと下の方にあるゼリーも美味しい。何味か分かんないけど」

「でしょ。これはね・・・」

 パフェには何が入っているか分かるように説明書が付いてくる。それによればこのゼリーはシャンパン味ということになっている。そういう味のゼリーなんて初めて知った。甘味の世界の奥の深さに感動する。

 今井さんに同じことを言うと

「こういう場所に来たらゼリーじゃなくてジュレって言った方がオシャレだと思うな」

「?」

 そういうものなのかな?ゼリーって言わないんだ・・・それって子供っぽいから?

「わかった。ジュレだね・・・初めて言った」

 甘いもの食べると幸せな気持ちになる。

 そんな表情をしていたのかな。私のことを今井さんはじっと見ていた。

「えっと・・・もしかして変な顔してた?」

「ううん。相楽さんのことまた写真に撮りたいなって思ってたところ」

「また?」

「だって可愛いから」

 女の子から言われると男子とは違う感じがする。なんか耳の裏がムズムズするんだよね。でも言われることは嬉しいことに変わりない。なんで急にそんなこと思うのかな?


「・・・・・・そこまでじゃないでしょ。だったら私も言うけど。今井さんも可愛いよ」

 これは正直な気持ち。どっちが可愛いなんて女の子同士なら関係ないよね。可愛いって思ったら可愛いんだ。それってどんな可愛さなのかな?

「ありがとう相楽さん。どうかな?今度モデルになって欲しいな。絶対良い写真撮れるって自信あるんだけど」

 急にそんなこと言われても素直に『いいよ』って言えない。

 たかが写真だよ。今の私のことの記録になる。気持ちでは可愛いっていう自信だって他には言えないけど、ある。でも・・・


「ちょっと考えさせて欲しいかも」

「もちろん。モデルが乗り気じゃなかったら写真にモロ出るからね」

「そうなんだ・・・そんなに写真を撮ることって楽しいの?」

 気持ちか・・・私は幼稚園の時の写真のことを思い出していた。あの表情してた私のことが知りたい。けれどどこにも手掛かりがない。確かに写真って凄いかも。気持ちまで写るんだ・・・・・・


 今度はこっちから聞いてみる。写真を撮る側と撮られる側ってどれくらい違うものなのだろう。

「撮るものの気持ちか・・・そうだ相楽さん。だったら一週間。仮入部ってことで写真部入ってみない?」

「一週間・・・仮入部・・・そっか。そういうのもあるんだ」

「そうそう。もしかしたこっち側の気分も分かれば被写体になっても良いって思えるかもしれないよ」

 確かに少しくらい経験してもいいかも。スマホとは全然違うんだろうな。そういえば私って意識が戻ってからスマホですら一枚も自分で写真を撮ったことなかった。


 一週間・・・そんなのあっという間だよね。仮ってのもいい。気楽でいいってことだよね。


「今井さん。勧誘上手だよね」

「そう?でも相楽さんが部員になってくれたら嬉しいなって前にも言ったよね」

「言った」

 楽しいじゃん。女子トーク。女同士だからかな、やっぱり。

 ふとガラス窓に映った自分達を見る。端から見たら仲良しな感じに映る。


「あのさ。ちょっと聞いてもいい?同じクラスの日下部君」

「拓哉?なんで?」

「相楽さんと日下部君って仲良いよね。付き合ってるの?」

「付き合ってるって?どういう」

「それはほら。もちろん恋人ってこと」

 急にそんな風に言われてビックリした。もしかして周りにはそんな風に映っているのだろうか。ここはちゃんと弁明しておいた方がいい。

「そんなんじゃないよ。私達は幼稚園からの幼馴染なの。強いて言うなら親友として付き合っている。お互い恋人なんて思ったことないよ」

「でもさ。これから大人になって恋人になるパターンってあると思うけど」

 親友相手に恋バナってなんか調子狂うな。もしかしてここからが本気の女子トークってこと?いやいや今井さんが聞きたいのはそういうことじゃないはず。

「違う。絶対ならない。私達は。それに今井さんが聞きたいのは私のことだよね」

「今のだって相楽さんのことだと思うけど」

「だったらもう結論は出ている。だから次にいこう。ホントはこんなこと聞きたいわけじゃないでしょ。覚えていると思うけど。前の私って言い方が合っているか分かんないけど、前の私は今の私とは全然違っていたんだよ。自分でも信じられないけど男の子みたいだった。中学からのみんなの記憶の中の私は男として存在していた」

 昔の話なんて今さらしたところで私には分からない。時間が経っても一向に思い出すことなんてない。微かな記憶の断片ならある。でもそれは私の中に眠るもう一人の私の記憶。

 でも今は私の中で眠っている彼女のことを話すつもりはない。私は私のままで生きるんだ。満月だろうと新月だろうと半月って言ってたっけ?そんなのホント関係のないこと。みんな今の私を邪魔する要素にしか思えない。 


 今井さんは一緒に頼んだハーブティーを一口飲むとカップを静かに置いて私のことをさっきとは違う視線で見つめる。

 今から本題に入ろうってことなのかな?



本日のアップにて・・・40回目。自分に拍手(パチパチ)

読んでいただきありがとうございます。

書いても書いてもなかなか着地点に到達できない。←ただ単に下手なだけ

今書いているもの全部。年度末には区切りを付けたいと思っていました。

けれどもう少し伸びそうです。

それまで読んで貰えると嬉しいです。

また次回。よろしくお願いします。

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